今回ご紹介するのは「チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」(ソリスト:川本冴夏)です。
-----曲調&感想-----

(2018年10月14日、「一楽章f未完成 FLUTE VIOLIN CONCERT」にて談笑する川本冴夏さん)
記事冒頭の動画は2018年3月31日、広島県東広島市の西条にある「東広島芸術文化ホール くらら」で行われた「市民交流コンサート2018」の時のものです。
「ヴァイオリンソリスト(ソロ演奏者):川本冴夏さん、オーケストラ:ALL東広島」でピョートル・チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」を演奏しています。
「一楽章f未完成 FLUTE VIOLIN CONCERT」で演奏を聴いたのがきっかけでネットを見てみたらこの動画があり、聴いてみて良い演奏と良い曲だと思いました。
この動画の演奏を元に、「ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」のご紹介をしたいと思います。
冒頭はオーケストラによるゆったりとした安らぐメロディで演奏が始まります。
00:22~00:25くらいの車のエンジンがかかるようなメロディで何かが始まる予感がしてワクワクします

00:54からヴァイオリンソリストがソロで演奏を始めます。
それまでのオーケストラの演奏を引き受けるような形でとても自然に始まっているのが印象的です。
01:14からオーケストラも再び演奏を始めます。
ソリストを中心にゆったりとしたメロディでの演奏です。
01:55から02:15にかけてソリストが一際高い音で演奏し、この音が凄く綺麗で聴き入りました

02:52からかなり盛り上がり、どんどん音が上がって行きます。
音が喜びに満ちていてとても嬉しそうなのが良いです。
そして綺麗な音色で、私はこういった音色が好きです

オーケストラとソリストが呼応して同じ音色を音階を上げながら6回繰り返しているのも印象的です。
同じ音色を何度か繰り返す手法はこの曲で何度も登場します。
凄く高い音まで上がって行き、03:05で一気に喜びが爆発したように弾けこの場面がとても好きです

弾けた後はソリストが高い音からどんどん音階を下げて低い音まで行きます。
低い音まで下がったところでゆったりとした演奏になり、この部分が03:05で弾けた場面からの「音の底」の部分なのかなと思います。
盛り上がりきった後を受け持つ大事な場面のような気がします。
ヴァイオリンの弾き方にも注目で、高い音と低い音で弓の当て方が違います。
高い音の時は縦に弓を当てているのに対し、低い音の時は横に当てています。
ゆったりとした演奏を2回繰り返します。
2回目の繰り返しの時の03:58から04:11頃の物凄く高い音での演奏がかなり良いと思います。
どんどん音が高くなり力強さも上がっていき、綺麗な音色の中にもの悲しさも感じ、こういった音色にも心を引かれます。
04:27~04:32頃にかけてのメロディは胸に迫る音色で涙腺が緩みそうになります。
私はこういった音色が心の琴線に触れるのだと思います。
どんどん音が高くなり、力強い演奏にもなります。
04:39頃~05:00頃にかけての物凄く高い音での演奏の部分は心の叫びのようにも聴こえ、気高さやドラマチックさも感じます。
05:10から音階が下がっていき、05:15で一番下がったところから一気に高音に行き、そこからソリストとオーケストラの呼応が始まり6回繰り返されます。
この回数は02:52~と同じです。
また05:10~05:15はヴァイオリンの演奏を見ていると弾き方がどんどん縦方向から横方向に変わっていっているのが印象的です。
ソリストとオーケストラの6回の呼応が終わった直後、05:28からフルートが演奏を始めます。
05:38までヴァイオリンの弾き方と相まってとてもドラマチックな雰囲気になっているのが良いです

05:45からソリストが物凄い小刻みでの演奏を始めます。
さらに05:57から小刻みでの演奏がギアの上がった音色になり聴いていて気持ちも盛り上がります

スピードもかなり速く、この部分を演奏するのは特に大変なのではと思います。
06:07で小刻み音を引き取るように伸びやかな演奏になります。
短い時間小刻み音で演奏し、伸びやかな演奏で引き取るのを音階をどんどん上げながら5回繰り返します。
音階が上がり切って物凄く高い音になったところで、太鼓がドンっ!と鳴りソリストの演奏が鬼気迫るものになります。
オーケストラとの全体での演奏に迫力とともに不穏な雰囲気も感じ、この部分はとても引き込まれます。
この鬼気迫る演奏は4回繰り返されます。
そこから06:29~06:33にかけて導火線に火が灯っているような演奏になります。
そして一気にソリストの音が高く力強くなり、その最高潮で一旦演奏を止め、06:39からオーケストラ総動員での演奏になり、特徴的な盛り上がるメロディを2回繰り返します。
この時の盛り上がりが凄く、ソリストが離れているためそれを埋めるためにオーケストラが総動員になっているのだと思いました。
そしてこの曲を見るとソリストがかなり疲れるのが予想され、時折休むタイミングが必要だと思います。
8:08からソリストが演奏を始めます。
9:00頃から9:28頃にかけて同じメロディの演奏が6回繰り返され、何かを決断するかどうかで足踏みしているような雰囲気を感じました。
9:29から一気に曲調が変わってドラマチックな雰囲気と鬼気迫る雰囲気を併せ持った演奏になり、小刻み音を使っていてスピードも速く、それが4回繰り返されます。
4回目の最後に一気に高い音での力強い演奏に変わり最高潮を迎えて演奏を止め、同時に9:36から再びオーケストラが総動員での演奏を始めます。
06:39~と同じ特徴的な盛り上がるメロディですが今度は少しゆったり目の演奏になっています。
10:20でオーケストラの演奏がクライマックスを迎え、10:25にかけてとても迫力のある演奏をします。
そしてその演奏に呼応して10:25からソリストが演奏を始めます。
「タン、タン、タン、ターン!」というどんどん音階を上げながらのソリストの演奏の後、オーケストラが迫力のある演奏で呼応するのが2回繰り返されます。
10:34からの3回目でソリストの演奏の仕方が変わり、そのまま独奏に入ります。
10:52に「ポロロン」とピッチカート(指だけでポロンポロンと弦を鳴らすこと)をしているのがそれまでの迫力のある演奏との対比になっていて印象的です。
11:16~11:22頃にかけてヴァイオリンの音が水が湧き出て流れるように出ているのが印象的で、弾き方が上手いなと思います。
11:54~12:00頃にかけて怪しい屋敷を探検しているような特徴的な音を出していて、ヴァイオリンはこんな演奏の仕方もあるのかと思いました。
12:19頃から12:40頃にかけて同じメロディでの演奏が8回繰り返され、8回目の最後、演奏が激しいものに変わります。
12:57頃で演奏の激しさが峠を越えて少しゆったり目の演奏になります。
13:20にオーケストラが再び演奏を始め、とても穏やかで優しい雰囲気です。
13:32までソリストがソロ演奏の一番最後の時の「音を震わせる弾き方」を続けているのが印象的で、その震える音とオーケストラの穏やかで優しい音色がとてもよく合っています

オーケストラが寄り添っているように聴こえます。
13:56からソリストが2:00頃からの演奏と同じメロディで演奏し、今回はより華やかさを感じる音です。
14:54~14:56のとても高い音での唸るような音はその後の演奏に向けて「さあ行くぞ!」と言っているように聴こえます。
そして14:56から15:06にかけてオーケストラとソリストが同じ音色を音階を上げながら6回繰り返すのがもう一度演奏され、15:07で再び喜びが爆発したように一気に弾け、今回のほうがさらに弾けている感じがします。
弾けた後、凄く高い音からどんどん音階を下げていき15:26で一番下がります。
ゆったりした演奏を2解繰り返した後、16:00から16:45にかけての物凄く高い音での演奏が凄く良いです

弾き方にもかなり情感がこもっています。
やはり綺麗な音色の中にどこか悲しさも感じ、そして私はこういった派手な音色と相性が良いのが分かりました。
聴いていてとても引き込まれます

ソリストとオーケストラの呼応が6回繰り返され、17:20からソリストが小刻み音での演奏を始めます。
05:45~と同じメロディでの演奏ですが今回の小刻み音は一気にギアを上げるよりもじっくり上げるのを重視しているように聴こえました。
17:42~17:55にかけて短い時間小刻み音で演奏し、伸びやかな演奏で引き取るのを音階を上げながら5回繰り返した後、17:56から18:05までの盛り上がりが凄いです

ソリストもオーケストラも物凄く力を込めています。
18:06~18:10の導火線に火が灯っているかのような演奏の後、18:05で序盤での同じメロディの時と演奏の仕方が変わります。
18:16頃から18:22頃までどんどん音が上がっていきます。
18:37~18:52の音色には物凄くドラマチックなものを感じ、明るさと気高さを併せ持っているように聴こえました。
そして圧倒的なラストを迎え、音色と演奏の迫力、凄さに強烈に引き込まれました

今回初めて、普段小説の感想記事を書く時と同じ形でクラシック音楽の感想記事を書いてみました。
最初に書いたのがこの曲で良かったと思います。
聴けば聴くほど魅力的な曲で、音色の華麗さ、美しさにとても引き込まれます。
気持ちを明るくしてくれる素晴らしい曲で、ぜひこれから先も弾き継がれ、聴き継がれていってほしい名曲です
