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「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番」(ピアニスト:石井楓子)

2019-09-09 20:13:37 | 音楽・映画


今回ご紹介するのは「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番」(ピアニスト:石井楓子)です。

-----曲調&感想-----
ロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフの曲は、日本の私のような一般層ではフィギュアスケートの浅田真央さんがバンクーバーオリンピックで「前奏曲 鐘」、ソチオリンピックで「ピアノ協奏曲第2番」で演技をしたことが有名です。
第4番まであるラフマニノフのピアノ協奏曲の中で、第2番と第3番はコンサートで演奏されることも多く、名曲の評価を得ています。
そして第3番は世界にある全ピアノ協奏曲の中で最も演奏難易度が高いことでも知られています。
私は石井楓子さんというピアニストによる演奏が好きなので、その演奏動画を元にご紹介します。
動画は音が小さめなので、聴かれる方はボリュームを上げて聴くことをお勧めします


(ピアノを演奏する石井楓子さん。写真はネットより)


曲全体の印象

この曲は真っ白い雪の世界が透き通るような水色や青で照らされているかのような雰囲気があります
そしてピアノの音色が非常に華やかで綺麗でドラマチックであり、私はその音色に凄く引かれます。
聴いていると新たに良いと思う箇所が次々と出てきて何度でも聴いていたくなる曲です



第一楽章(~18:01)

冒頭のピアノの演奏はややひっそりとしていてもの悲しく、そしてその中に気高さを感じます。
このメロディはクラシック音楽で「主題」と呼ばれるメロディで、しばらくするとまた登場する、その楽章の中心となるメロディです。
主題の終わり際、「溜め」を作った演奏をしてから最後にもの悲しさが溢れ出して流れて行くような演奏が私は特に好きです

主題の後、ピアノは一気にスピードを上げ、いよいよ本格的に曲の世界観を表現するぞという雰囲気になります。
オーケストラはのびやかで雄大さを感じる演奏でピアノを盛り立てていて、その雰囲気が良いです。
曲のスケールの大きさが予感されます。

ピアノの音色を聴いていると、「硬さとともに軽やかな弾みをも感じる音色」になることがあります。
硬い音を出すのはそれほど難しくないと思いますが、そこに軽やかさを入れるのは全く違う性質なので難易度も上がり、そういった演奏に表現力の高さを感じます。

やがて冒頭に登場した主題がもう一度登場します。
やはりひっそりとしたもの悲しさ、気高さを感じ、そして引き寄せられる音色です。
ピアノの主題演奏が始まる直前に演奏される、弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)による静かに繰り返し唸るような演奏も印象的で、「これは冒頭に登場したあの音色だ」と分かります。

主題の後、ピアノの演奏がどんどん力強くなっていき、かなり激しくなり、最高潮を迎えると緊迫した鬼気迫る演奏になります。
オーケストラも緊迫した演奏で寄り添い、第一楽章きっての見せ場だと思います。

しばらくゆったりとした演奏をしてからピアノの独奏場面に入り、その演奏が次第に力強さを増し、やがて非常に力強くなります。
硬い音での演奏ですがその響きには情熱も感じ、ドラマチックさがあります。
先に登場した第一楽章きっての見せ場の魅力が「緊迫感」なのに対し、こちらは「情熱」が魅力な気がします。
このピアノ独奏場面も第一楽章きっての見せ場だと思います。

ピアノが独奏を続けていく中で、一音一音を猛スピードで演奏する場面があります。
そして猛スピード(速さ以外の表現をするのが難しくなる)なのに柔らかさ、滑らかさがとてもよく表されているのは凄いことだと思います。

3回目となる冒頭の主題の演奏になります。
1回目の時に「溜め」を作った演奏をしてから最後にもの悲しさが溢れ出して流れて行くような演奏が好きと書きましたが、その場面は高音から低音に向かって「ドシラソファミ」のように一音ずつ下げていく演奏をしています。

主題の後のトランペットの「パーッパカ パッパッパッパー」という演奏が格好良く、気高さ、誇り高さを感じます
ピアノがキラキラキラーッという星が煌めくかのような演奏をしているのも雰囲気が良いです。



第二楽章(18:24~28:50)

もの悲しさを感じる音色で始まります。
オーボエ(縦笛に似た見た目の管楽器)の硬質感のある甲高い音色が目立ち、やがてヴァイオリンなどの弦楽器も悲しい音色で続きます。
ピアノが入る直前に演奏される、非常に伸びを効かせた悲しさと雄大さを感じる演奏が印象的です。

第二楽章主題の凄く印象的なピアノメロディが登場します。
低音から高音に向かって「ドレミファソラシド」のように、ゆっくりと音を上げて行く場面があります。
優しく甘い音色で、神秘的な雰囲気もあり、とても引かれます
ピアノを支えるオーケストラは風がフワーッと沸き起こるかのように、ピアノの神秘さが際立つ演奏をしていてそれも良いです。
この場面はあまり間を置かずにもう一度登場します。
今度はピアノは音を高めにし、オーケストラは1回目が風がフワーッと沸き起こるようだったのに対し、今回は風が勢い良く吹き抜けて行くような演奏になっています。
全体として1回目よりも胸に迫ってくる聴こえ方になります。

ピアニストは左右の手で全く違うリズムの演奏をすることがよくあるのが凄いと思います。
片方の手はポロロロロと軽やかに演奏し、もう片方の手は力強く演奏をする場面があります。
力強い方の演奏が比較的ゆったりと弾いていることもあり、それぞれの手が全く違うリズムの演奏をしているのが強く意識されます。

同じメロディを繰り返し情熱的に演奏しながらどんどん力強くなって行く場面があります。
最高潮になると、そこから派手さや華やかさと共に安らぎも感じるメロディになります
作品世界に光が差すような明るさに、また幸せが辺り一帯に広がっていくような雰囲気に笑みがこぼれる音色で、これも見せ場だと思います

第二楽章主題の凄く印象的なピアノメロディが3回目の登場をします。
直前に笑みがこぼれる音色で気持ちが華やいでいたところにこの演奏が来て、今度は落ち着いて透き通った気持ちになります

ピアノがスピーディーで軽やかな演奏をしてから、一気に階段を上って行くような演奏になります。
「タンタカタンタンタカタン」というような響きの演奏を繰り返し、音を次第に大きくしているのでこちらに向かって押し寄せてくるような勢いも感じ、その雰囲気に引き込まれます

冒頭の第二楽章主題の凄く印象的なピアノメロディが登場する直前に演奏された、非常に伸びを効かせた悲しさと雄大さを感じる演奏が再び登場し、そこで第二楽章が終わります。



第三楽章(28:50~43:34)

突如としてそれまでとは曲調が変わり、第二楽章から間を置かずにそのまま第三楽章になります。
速いスピードで助走を付けるような演奏をしてから一気に全体が激しい演奏になり、緊迫感も漂います。
その中で途中からピアノが特に目立ち、冒頭のこの場面最大の見せ場になり、階段をどんどん上って天まで駆け上るかのような演奏になります
第三楽章の主題でもあり、終盤に形を変えてもう一度登場します。

天まで駆け上ると、今度はオーケストラがトランペットを中心に威厳を感じる演奏をします。
その中でピアノが物凄い速さでキラキラと光の粒が弾けるような演奏をしているのが良いと思います
さらに、その次の寄せては返す波のような演奏も好きで、魅力的な音色が次々と現れます。
その後は派手さ、煌びやかさの余韻に浸るような穏やかな演奏が続きます。
ただしずっと穏やかではなく、激しさが顔を覗かせたり、軽やかになったり、ひっそりしたりと、変化に富んでいます。

やがて曲調が変わり、また盛り上がる予感がします。
満を持して冒頭に演奏された主題が再登場し、また階段をどんどん上って天まで駆け上るかのような演奏になります。
今度は少しゆったり目で、そして力強い演奏です。
寄り添うオーケストラもどんどん演奏の迫力を上げて盛り上げて行き、音色にドラマチックさも漂わせていて、いよいよ協奏曲がクライマックスに向かうことが予感されます。

再び寄せては返す波のようなピアノ演奏になった後、駆け上った天上界で楽しく舞踏しているような演奏になります
「タンタカ タンタカタンタンタン」というピアノのリズミカルな演奏が特に良いです
楽しく舞踏しているような演奏の最後、盛り上がっている場面なのに音色に少し寂しさを感じるのも印象的で、楽しさが終わらないでほしいなという気持ちになります
第三楽章きっての、音色にドラマチックさ、美しさを感じる場面です。

やがていよいよ終わりが近いと分かる曲調になります。
トランペット・ティンパニ(太鼓が複数あるような楽器)とピアノがお互いを呼びかけ合う演奏を繰り返した後、今度はヴァイオリンなどとピアノがお互いに響き合う演奏をします。
ピアノと響き合うヴァイオリンなどは凄く伸びやかで力のある演奏をし、さらに非常に力強くなります。
ラフマニノフの曲は「巨人的」と評されることがありますが(音の響きのスケールが大きいということだと思います)、それがよく分かる場面です。

最後は凄くドラマチックで、音が唸りを上げます
そこからピアノが物凄いスピードで演奏しながら音階を下げて行き、最後の「タン!タン!タン! タンタカタン!」の「ラフマニノフ終止」という演奏で曲が終わります。



私はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を2018年12月12日の「広島プロミシングコンサート」で初めて聴きました。
井伏晏佳(はるか)さんというピアニストが演奏し、クラシック音楽を聴くようになって日の浅い私でも神秘的な魅力を持つとても素敵な曲なのが感じられました。
長い曲で、今回ご紹介した動画の演奏時間は約43分ありますが、魅力的な音色がたくさん登場し長さを感じさせないです。
聴けば聴くほど魅力を感じる名曲なのでこれからもたくさん聴いていきたいと思います



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