(曲の合間のトークで談笑する木村紗綾さん)
一昨年の9月14日、広島県広島市のひろしま美術館で行われた「ミュージアムコンサート」を聴きに行きました。
何度か演奏を聴き非常に上手い人だと思ったヴァイオリニストの木村紗綾さんが出演されるということで興味を持ちました。
ピアノ伴奏のない「無伴奏ヴァイオリン」という形でのコンサートで、ヴァイオリンだけ、それもソロでの演奏は高難度なのではと思いました。
どんなコンサートになるのかとても興味深く聴かせて頂きました
ひろしま美術館にやって来ました
美術館で開催されるコンサートに行くのはこの日が初めてでした。
会場となる「別館地下第8展示室」に到着しました。
さすが美術館で、壁にはいくつもの絵画が展示されています。
写真中央前方が演奏場所で、用意された席はほぼ全て埋まっていたので私は後方で立ち見をすることにしました。
1. J.S.バッハ(1685-1750)
無伴奏パルティータ第3番 BWV1006より ガボット
とても明るくてスキップするような音色が印象的でした。
約3分くらいと短めの曲で、挨拶代わりの1曲にピッタリだと思います
演奏の合間にはトークがあり、木村紗綾さんはチェコで活動していて、当時7月後半から日本に滞在してこの日が滞在期間最後のコンサートとのことでした。
2. F.クライスラー(1875-1962)
レチタティーヴォとスケルツォ Op.6
トークで「クライスラーらしいウィーンの気品高い感じのする曲」と言っていました。
右手に持つ弓でややミステリアスな音色を弾いている時、同時に左手でポン、ポンと三味線をバチで弾く時のような音を単発で出していたのが印象的でした。
当時はクラシックのコンサートを聴くようになって1年弱で、そんな演奏が出来ること自体とても新鮮でした
3曲目の作曲者パガニーニについて、「悪魔に魂を売ったと言われるくらいヴァイオリンが上手い人だった」と紹介がありました。
3. N.パガニーニ(1782-1840)
24の奇想曲 Op.1より 第5番、第24番
第5番は小刻みな高速演奏が続き、圧倒されているうちに終わりました。
左手の位置に注目で、パガニーニの曲は第5番も第24番も、他の曲のヴァイオリン演奏よりも弓に近い位置になる場面が目立ったように見えました。
第24番のメロディはフィギュアスケートで聴いたことがあるなと思いました。
物凄く上手い演奏だと思いました
低音と高音の繰り返しが、音域が違っても非常にスムーズだと思いました。
「ポンポンポンポン」と、フライパンで豪快に炒め物をしているような音のはじける演奏が印象的でした。
4曲目について、「最近新たな楽譜が発見されて全7曲のソナタになった」と紹介がありました。
また4曲目が今日のメインとのことでした。
9月はまだ暑く、ヴァイオリンは暑い時期を苦手としているので4曲目の前にチューニング(音合わせ)をする場面がありました。
4. E.イザイ(1858-1931)
無伴奏ヴァイオリンソナタ第4番 Op.27 ホ短調
一楽章
高音で伸びのある良い演奏がありました。
音色にどこか「昔」を思わせる風情も感じました。
二楽章
最初と最後がピッチカート(弦を指でポロンポロンと弾く演奏)だったのが印象的でした。
穏やかな演奏からの最後のピッチカートは淡い雰囲気で、まるで水の中に居るようだと思いました。
三楽章
軽快でドラマチックな音色でした。
伸びやかな演奏になった時の手首のスナップの良さも印象的でした。
5曲目はオーケストラ用の曲で、それをヴァイオリン一挺(いっちょう)で弾くとどうなるか見てほしいと言っていました。
5. H.W.エルンスト(1814-1865)
シューベルトの「魔王」による大奇想曲 Op.26
やや不気味で小刻みに、迫ってくるように始まりました。
その音色が何度も登場していて、緊迫した音色はまさに魔王的だと思いました。
またこの曲でも右手で演奏しながら同時に左手で単発の音を入れる場面がありました。
5曲目が終わり、アンコールの前に広島テレビの方によるインタビューがありました。
チェコは東ヨーロッパなのでそれほど都会的ではないとのことで、どこか広島的な雰囲気もあって良いと言っていました。
明後日チェコに戻る予定で、チェコの料理ではチーズを揚げたものが好きとのことでした。
一人っ子なので一人でぼーっとしている時間も好きとのことでした。
ヴァイオリンは1日4~6時間演奏の稽古をしているとのことで、その他にも事務的なこともしないといけないはずなので大変なのではと思いました。
11月30日と12月1日には「威風堂々クラシック in Hiroshima」があり、木村紗綾さんは今年4回目の参加で3回目のコンサートミストレス(オーケストラのまとめ役)をするとのことでした。
アンコール
エルンスト:夏の名残のバラ
途中からまさに夏の名残のような、ゆったりとした安らぐ音色になりました。
この曲も右手で演奏しながら同時に左手で別の音を入れていました。
特に右手で伸びやかな演奏をしながら、左手で高い音域で「ドレミファソファミレド」と一音ずつ上下するような、安らぐ音色を演奏した時がかなり良かったです
プログラムの「演奏者コメント」欄には次のようにありました。
「一挺のヴァイオリンから聴こえてくる音は、どんな色に見えるでしょうか。「あえかなる音(きゃしゃな音)」も人々の心に届くと、鮮やかな風景になります。そんな音を奏でたいと思います。」
まさにこのコメントのとおり、私の場合は色で言えば4曲目の「無伴奏ヴァイオリンソナタ第4番」を聴いた時に水色が、風景で言えば3曲目の「24の奇想曲 第24番」を聴いた時にフライパンで炒め物をしている風景、アンコールの「夏の名残のバラ」を聴いた時に9月後半頃の、暑くても空が澄んで高い爽やかな風景が思い浮かびました。
無伴奏ヴァイオリンの、ソロのコンサートでこんなに多彩な音が出せるのかと驚かされ、これからもぜひ様々なコンサートで木村紗綾さんの演奏を聴いてみたいと思いました
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演奏者プロフィール 2019年9月時点
ヴァイオリン 木村紗綾
3歳よりヴァイオリンを始める。
2010年安田女子中学校を卒業後、15歳で渡欧。
プラハ音楽院に首席入学。
第15回日本クラシック音楽コンクール小学校の部全国大会第4位、第59回第60回全日本学生音楽コンクール大阪大会入選、いしかわミュージックアカデミーIMA奨励賞、第50回コツィアン国際ヴァイオリンコンクール第1位、第35回チェココンセルヴァトワール・ギムナジウム国際コンクール最高位、第38回第1位を受賞するなど国内外のコンクールで入賞。
2010年ドヴォルジャーク音楽祭にて指揮者、ヤロスラフ・クルチェク氏とバッハのヴァイオリン協奏曲を共演。
2011年ヒロシマ平和創造基金より2年間奨学金を授与される。
2016年より大植英次氏と威風堂々クラシック in Hiroshima、チャリティーコンサート等で多数共演。
またチェコフィルハーモニー管弦楽団オーケストラアカデミー在籍中はプラハの春音楽祭、スメタナ音楽祭等に出演。
2017年イタリアで開催されたインターハーモニー音楽祭ではコンサートミストレスを務める。
これまでに村上直子氏、石川静氏、中村英昭氏に師事、現在プラハ音楽院にてイージー・フィッシャー氏に師事する傍ら、チェコフィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団などの客演奏者としても国内外で活躍中。
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木村紗綾さん出演のコンサート、演奏会
威風堂々クラシック in Hiroshima 2018
威風堂々クラシック in Hiroshima 2019
安田女子中学高等学校 第8回復興支援チャリティーコンサート
一楽章f未完成 Violin & Cello Duo Concert
木村紗綾さん ヴァイオリン・サマーコンサート
CHRISTMAS IN PEACE CONCERT 2019
「新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ 第54回広島」
木村紗綾さんオンラインヴァイオリンリサイタル ~クラシックで満ち満ちて~
第52回福山音楽祭府中エリア特別演奏会 木村紗綾ヴァイオリンリサイタル
広島プレミアムコンサート~海外から凱旋した広島のアーティスト達
アンサンブル・プリエール 第1回演奏会 ~広島ゆかりの若手演奏家が紡ぐアンサンブルの調べ~
音のマリアージュ Vol.1 ~あなたが決める名曲コンサート~
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