12月19日、広島県広島市の広島サンプラザホールで行われた「第九ひろしま2021 Freude(フロイデ)コンサート」を聴きました。
ベートーヴェンの交響曲第9番(合唱付き)が演奏されるということで興味を持ちました。
フロイデとは「歓喜」という意味で、交響曲第9番第4楽章で歌われる「歓喜の歌」から来ているようです。
日本の年末と言えばベートーヴェンの交響曲第9番がよく演奏される印象があり、広島でもやっていると知って嬉しくなりました
演奏プログラムは次のとおりです。
第1部「実力派ソリスト達による至高の響演」
■モーツァルト:歌劇「後宮からの逃走」K.384『序曲』『さあ戦いだ!』
■モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K.492『序曲』『もう飛ぶまいぞ、この蝶々』『恋とはどんなものかしら』『とうとう嬉しい時が来た』
「合唱団員必見!?マエストロ・下野や指導者たちによる第九ひろしま ここだけトークショー」
第2部「ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調Op.125『合唱』」
(第九ひろしまの開演前。開演後の第九合唱時は、正面奥に数十人布陣するエリザベト音楽大学の学生による合唱団が活躍しました。)
会場内にはテレビカメラも入っていて、後日テレビやラジオの番組でも放送される大きなコンサートでした。
中国放送(TBS系列)の横山雄二さんと河村綾奈さんの両アナウンサーがコンサートの司会をされていました。
第1部はコンサートに出演する4人のソリスト(ソロ歌唱者)を中心とした演奏が行われました。
モーツァルトの歌劇にスポットを当て、全部で6曲演奏されました。
「後宮からの逃走」の『序曲』はオーケストラのみの演奏、『さあ戦いだ!』はテノール升島唯博さんが歌唱しました。
「フィガロの結婚」の『序曲』はオーケストラのみの演奏、『もう飛ぶまいぞ、この蝶々』は久保和範さん、『恋とはどんなものかしら』は彌勒忠史さん、『とうとう嬉しい時が来た』は種谷典子さんが歌唱されました。
トークショーでは「交響曲第9番」や「第九ひろしま」の興味深いことを話していました。
指揮の下野竜也さんが初めて第九を聴いたのは1985年の鹿児島県の「県民第九」とのことで、第九を指揮したくて指揮者になったとも言っていました。
また「日本三大第九」の一つが広島の「第九ひろしま」とのことで、非常に興味深かったです。
第九は「今年の歩み」を投影して聴くと良いかも知れないとのことで、各楽章についての簡単な説明もありました。
第1楽章は神秘的に始まり、戦っているような闘争の音色があったり、癒しもあったりします。
第2楽章も第1楽章と同じ傾向にあり、第3楽章は祈りの音色とのことでした。
第4楽章は「また来年に向かって行く」とのことで、短い言葉で分かりやすく各楽章の特徴を言っていて流石だと思いました
第2部「ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調Op.125『合唱』」が始まると、気持ちがどんどん研ぎ澄まされて行きました。
会場の広島サンプラザホールは今回初めて訪れ、第1部の時にホールの特徴としてクラシックコンサートには不利な印象がありましたが、交響曲第9番を前にするとそんな印象は消えて行きました。
身が清められる演奏でした。
第4楽章の非常に有名な、多くの人が学校の音楽の授業で習うと思われる「ミミファソソファミレドドレミミレレ」の音色は楽器のみでの演奏の時も、ソリストが目立つ演奏の時も、オーケストラソリスト合唱団全体での大迫力の演奏の時も、常に魅了されました。
全体での大迫力の演奏の後、合唱団のソプラノ中心の神聖な雰囲気の歌唱は聴いていて鳥肌が立ちました。
天から神聖な光が差し込むような音色で、そのまま天国に連れて行かれるかのような境地になりました。
アンコールとして「蛍の光」が合唱されました。
これも鳥肌が立ち、途中で泣きそうになりました。
魂を揺らすものがありました。
ベートーヴェンの交響曲第9番(合唱付き)の生演奏は今回初めて聴きました。
聴きに行って良かったと思いました。
今回はエリザベト音楽大学の1・2年生が合唱団を作ってくれていましたが、新型コロナウイルスの問題さえなければ、希望する一般の人が大規模な「合唱団」となり、第4楽章の合唱を行っていたことも知りました。
ぜひ今度は一般の人も参加する「第九ひろしま」を聴いてみたくなり、来年こそ実現出来ることを心から祈ります
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演奏者プロフィール
指揮 下野竜也
広島交響楽団音楽総監督(2017年4月就任)。
1969年鹿児島生まれ。2000年東京国際音楽コンクール<指揮>優勝と齋藤秀雄賞受賞、2001年ブザンソン国際指揮者コンクールの優勝で一躍脚光を浴びる。
国内では、定期的にNHK交響楽団定期公演に招かれる他、国内主要オーケストラに客演し、コンサート、放送などに登場している。
また、国外ではコンクール優勝後、ローマサンタチェチーリア管、ミラノ・ヴェルディ響、チェコフィル、プラハフィル、シュツットガルト放送響、南西ドイツ交響楽団、オーストリア室内管、ボルドー・アテキーヌ管、ロワール管、コートダジュール・カンヌ管、ストラスブール管、クラコフフィル、シンフォニア・ヴァルソビア、バルセロナ響などを指揮。
これまでに、読売日本交響楽団の初代正指揮者(2006年11月~2013年3月)、同団首席客演指揮者(2013年4月~2017年3月)、京都市交響楽団常任客演指揮者(2014年4月~2017年3月)、同団常任首席客演指揮者(2017年4月~2020年3月)を歴任。
2011年1月、広島ウインドオーケストラの音楽監督に就任し現在に至る。
2002年出光音楽賞、渡邉曉雄音楽基金音楽賞、2006年第17回新日鉄音楽賞・フレッシュアーティスト賞、2007年第6回齋藤秀雄メモリアル基金賞、平成24年度(第63回)芸術選奨文部科学大臣賞、2014年度第44回東燃ゼネラル音楽賞奨励賞、2016年南日本文化賞・特別賞などを受賞。
鹿児島市ふるさと大使。おじゃんせ霧島大使。
京都市立芸術大学音楽学部指揮専攻教授。
NHK‒FM「吹奏楽のひびき」パーソナリティ。
ソプラノ 種谷典子
広島県出身。
国立音楽大学卒業。
同大学院修士課程オペラ専攻を共に首席で修了。修了時に声楽専攻最優秀賞受賞。
宮内庁主催桃華楽堂新人演奏会にて御前演奏を行う。
新国立劇場オペラ研修所第16期修了。
第24回リッカルド・ザンドナイ国際コンクールにて特別賞受賞。
第16回東京音楽コンクール声楽部門第2位受賞。
文化庁新進芸術家海外研修制度研修員としてイタリア及びスイスにて研鑽を積む。
オペラでは、『フィガロの結婚』スザンナ、『ドン・パスクワーレ』ノリーナ、『なりゆき泥棒』ベレニーチェ等を演じるほか、コンサートでは東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団等と共演。
ヴィヴァルディ『グローリア』、チルコット『レクイエム』等、ソリストとしても常に高い評価を得ている。
21年二期会『魔笛』パパゲーナで出演。22年『影の無い女』鷹の声に出演予定。
二期会会員
カウンターテナー(アルト) 彌勒忠史
千葉大学卒業、同大学院修了。
東京藝術大学卒業。
イタリア政府奨学生として渡伊。
イタリア国内外劇場でオペラ、演奏会に出演。
平成24年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
演出や執筆など多彩な活動を展開しており、15~18年市川海老蔵特別公演《源氏物語》においては歌唱及び音楽アドバイザーを務める。
16年佐渡裕指揮『夏の夜の夢』オベロン、18年A.バッティストーニ指揮「カルミナ・ブラーナ」出演。
NHKラジオ・イタリア語講座講師。
CD「No early music, No life?」(朝日新聞推薦盤)など多数。
著作『イタリア貴族養成講座』(集英社)、『歌うギリシャ神話』(アルテス・パブリッシング)など。
在日本フェッラーラ・ルネサンス文化大使。
二期会会員
テノール 升島唯博
島県出身。
エリザベト音楽大学卒業。
デトモルト音楽大学、リューベック音楽大学、同大学院修了。
オランダ・オイレギオ国際声楽コンクール優勝。
08年ブレーメン歌劇場とソロ契約を結び『魔笛』モノスタトス、『サロメ』ユダヤ人、ロッシーニ『マホメット2世』セリモに出演する他、ハンブルク州立劇場『アトランティスの皇帝』ハルレキン、ハイデルベルク・オペラ劇場『天国と地獄』マーキュリー、ミュンスター州立劇場『ユリッセの帰還』ピザンドロ、『盗賊』フラゴレット、『夢食い小人』タイトルロール、オイティーン夏季オペラフェスティバル『道化師』ペッペ、『イル・トロヴァトーレ』使者、『ピノキオ』タイトルロールを演じる。
国内では日生劇場をはじめ数々の舞台で活躍。
近年では東京二期会『ばらの騎士』ヴァルツァッキ、『蝶々夫人』ゴロー、新国立劇場『ばらの騎士』元帥夫人の執事、『魔笛』モノスタトスに出演。
二期会会員
バリトン 久保和範
東京藝術大学、及び同大学院修了。
文化庁オペラ研修所修了。
文化庁在外研修員としてニューヨークに留学。
第1回ヴォーチェブリランテコンクール第1位。
兵庫県知事賞受賞。
第6回奏楽堂日本歌曲コンクール第1位併せて木下保賞受賞。
新国立劇場では、開場記念『健・TAKERU』稲置をはじめ、『天守物語』『俊寛』『ドン・ジョヴァンニ』『ピーター・グライムズ』『夕鶴』等出演。
また、東京二期会『フィガロの結婚』フィガロ、『蝶々夫人』シャープレス、兵庫県立芸術文化センター『こうもり』ファルケ、『セビリアの理髪師』バルトロ等のほか、蜷川幸雄演出「仮名手本忠臣蔵」等、ミュージカルにも数多く出演している。
京都市立芸術大学教授。
二期会会員
管弦楽 広島交響楽団
合唱団 エリザベト音楽大学全学科1・2年生
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