
本日、広島県広島市の安田女子中学高等学校の安田リヨウ記念講堂に「第8回復興支援チャリティーコンサート」を聴きに行きました。
「威風堂々クラシック in Hiroshimaコンサート」の木村紗綾さんと「一楽章f未完成 FLUTE VIOLIN CONCERT」の長谷川朱里さんがゲストで出演されるので興味を持ちました。
このコンサートは2011年3月の東日本大震災の復興に向けて始め、今年から演奏会の名前が「復興支援(広く災害からの復興を支援するという意味)」に変更になりました。
東日本大震災以降、〇〇震災や〇〇豪雨など多くの災害が起き、この7月には広島でも西日本豪雨という大きな災害がありました。
それらの災害からの復興を支援するチャリティーコンサートはとても良い試みだと思います

写真とともに演奏プログラム順にご紹介していきます

-------------------- 安田女子中学高等学校 第8回復興支援チャリティーコンサート --------------------
第1部
中学高等学校管弦楽部
1.トルコ行進曲 ベートーヴェン作曲
2.スラヴ舞曲 作品46-2 ドヴォルザーク作曲
3.交響曲第1番 変ロ長調 作品38「春」より 第4楽章 シューマン作曲
指揮:西原知加子

中学高等学校の管弦楽部にも演奏前の音鳴らし(楽器の音色を確かめるためのもの)がありました。
写真の方が音鳴らしの指揮を執っていて、コンサートミストレス(オーケストラの中心的存在)の役割を担っている方なのだと思います。
この若さで大役をよくやっていると思います



1.トルコ行進曲 ベートーヴェン作曲
とても明るい始まりで、最後までワクワクするメロディでした

そして中学校や高校の管弦楽部の本格的なクラシックの演奏を聴くのはこれが初めてでした。
想像以上によくまとまりの取れた演奏になっていて驚きました。
日々しっかり演奏の練習をしているのだと思います。

2.スラヴ舞曲 作品46-2 ドヴォルザーク作曲
どこかもの悲しい雰囲気の演奏で始まりました。
そこから速いスピードの演奏になり力強くもなります。
後半はワクワクするメロディが続いて行きました。
そしてまだ中学生高校生なのを考えると音色を力強くするための力の入れ方などが上手いと思いました。

3.交響曲第1番 変ロ長調 作品38「春」より 第4楽章 シューマン作曲
華やかな始まりで、晩餐会のような明るい雰囲気でした。
途中でフルートの完全な独奏がありこれはよくやったと思います

やがて演奏が派手で力強くなります。
最後が圧巻で、特にヴァイオリンの迫力が凄かったです


ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスをはじめ、フルート、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーンなどもあり本格的な管弦楽団を形成していました。

全演奏終了時。
ちなみに指揮の西原知加子さんは「エリザベト音楽大学同窓会 佐伯区支部」の皆さんによる「第9回 ハートフルコンサート」でヴァイオリンとヴィオラを演奏されていました。
さらに「エリザベト音楽大学 第77回定期演奏会」でもヴィオラを演奏されていて、リンク先の記事の一番下にある「エリザベト音楽大学交響楽団 オーケストラメンバー」のヴィオラの欄を見ると西原知加子さんの名前があります。
安田女子中学高等学校の教員のみならず他でも大活躍されていて凄い人だと思います


次の準備をしている間、高校の生徒会長の方の挨拶がありました。
「一人一人の力は小さく弱いものでも、みんなの力を合わせれば大きな力になる」と言っていたのが印象的で良い言葉だと思いました


さらに、チャリティーコンサートで演奏をする「中学高等学校管弦楽部(写真左から二人目)」「高校音楽部(右から二人目)」「中学合唱部(一番右)」の各部長へのインタビューもありました。
管弦楽部は3月24日に定期演奏会があり、高校音楽部は3月23日にスプリングコンサートがあり、中学合唱部は日にちは忘れましたが2月に3年生が引退となる定期演奏会があるとのことです。
高校音楽部
4・5.女声合唱とピアノのための組曲「桜の花びらのように」から
2.十月 4.桜の花びらのように みなづきみのり作詞 田中達也作曲
6.女声合唱組曲「今日もひとつ」から
5.今日もひとつ 星野富弘作詞 なかにしあかね作曲
ピアノ:尾上絢音(5年) 指揮:岡村要

4・5.女声合唱とピアノのための組曲「桜の花びらのように」から
2.十月 4.桜の花びらのように みなづきみのり作詞 田中達也作曲

最初に一人の生徒が曲の紹介を兼ねて挨拶をしていました。

2.十月
もの悲しいメロディのピアノで始まり、すぐに合唱も始まりました。
その歌声がかなり上手いと思いました。
パートごとに分かれてハーモニーしていて良い響きでした。
最後の消えゆくようにどんどん小さくなっていく終わり方がとても良かったです


4.桜の花びらのように
この歌は歌詞を聴いていて旅立ちの歌なのがよく分かりました。
悲しい雰囲気になるのかと思いきや力強くなる場面もありました。
そして一人の生徒がソロで歌う場面があり、これもよく大役を果たしたと思います



6.女声合唱組曲「今日もひとつ」から
5.今日もひとつ 星野富弘作詞 なかにしあかね作曲
合唱前に一人の生徒が挨拶で「普段どおりの生活ができるのが、どれだけありがたいか」といったことを言っていました。
今年は広島でも豪雨災害があり、その言葉の重みを感じました。
「今日もまた一つ悲しいことがあった」「今日もまた一つ嬉しいことがあった」
この歌詞が印象的で、窓辺で遠くの景色を見ながら自身の過ぎていく日々に思いを馳せているような歌でした。
どんどん過ぎていく何気ない日常に、時に思いを馳せるのは良いことだと思います

中学合唱部
7.花は咲く 岩井俊二作詞 菅野よう子作曲
8.wave 漆戸啓作詞・作編曲
9.前へ 佐藤賢太郎作詞・作曲
10.天使と羊飼い コダーイ作曲
ピアノ:恩田絵美 指揮:吉野谷直子

7.花は咲く 岩井俊二作詞 菅野よう子作曲
この曲は東日本大震災からの復興支援で生まれたチャリティーソングです。
「はなーは はーなは はなはさくー」のところで一気に大きな声になり、その迫力のある歌声がドラマチックさも併せ持っていてとても良かったです


8.wave 漆戸啓作詞・作編曲
一つのパートが歌うとそれに応えるように別のパートが歌うというように、パートごとに呼応した歌い方が良かったです。
さらにハーモニーしている場面もあり、ソプラノの高い音にかなり引かれました。
「夢を歌うのさ」という歌詞にも引かれ、夢という言葉への憧れめいた気持ちが呼び起こされました。

9.前へ 佐藤賢太郎作詞・作曲
この曲も迫力のある場面がかなり良く、合唱の凄さを感じました。
またこの頃になると向かって左側がソプラノ勢、右側がアルト勢という布陣になっているのも分かりました。

10.天使と羊飼い コダーイ作曲
クリスマスが間近ということで最後にこの曲を歌いました。
イエス・キリストの生誕について歌った曲で、4曲聴いた中で一番凄味を感じました。
ピアノなしのアカペラで謳っていて、ソプラノとアルトの呼応が良かったです。
迫力も凄く、アルト勢が「ラー」の歌声で支えてソプラノ勢が力一杯歌っている場面は特に引かれました

第2部
ヴァイオリン独奏
1.美しきロスマリン クライスラー作曲
2.シチリアーノ パラディス作曲
3.ハンガリー舞曲 第17番 ブラームス作曲
4.気まぐれ女 作品17 エルガー作曲
5.ポエム フィビフ作曲
6.ツィゴイネルワイゼン サラサーテ作曲
ヴァイオリン:木村紗綾 ピアノ:長谷川朱里

写真左がピアノ伴奏の長谷川朱里さん、右がヴァイオリンの木村紗綾さん。
二人ともかつて安田女子中学高等学校で学んでいて、今回ゲストで登場しました。
長谷川朱里さんは高校卒業後にエリザベト音楽大学に進学し、木村紗綾さんは中学校卒業後にチェコのプラハ音楽院に進学しました。

ヴァイオリンが音鳴らしをしているところです。

1.美しきロスマリン クライスラー作曲
明るく優雅な曲で、「ターラーラーラーッララー」という流れるようなメロディが印象的でした。
聴いていて気持ちも穏やかに明るくなりました


演奏後のトークで木村紗綾さんは幼稚園から安田学園で過ごしたと言っていました。
またここでも「平和に過ごせているのは幸せなこと」といった言葉があり、日常を過ごせているのが当然のものではないことが意識されました。

長谷川朱里さんもトークしていて、二人ともトークも上手いなと思いました。

2.シチリアーノ パラディス作曲
ゆったりとした高い音のメロディでした。
そして少しもの悲しさも感じる音色になる場面もあり、心が洗われるような気持ちになりました。

3.ハンガリー舞曲 第17番 ブラームス作曲
もの悲しさの中に気高さも感じる始まりでした。
高音をかなり速いスピードで弾いた時の迫力が良かったです。
途中でややゆったり目の演奏になった後、「タッタッタ

刻む音の中に躍動も感じました。

4.気まぐれ女 作品17 エルガー作曲
短くゆったり目の演奏をした後にスパパパパとみじん切りをするかのような細かく刻む音になる場面が何度もありました。
凄く高い音から低い音に速めに演奏しながら音がどんどん下がっていく場面が2回あったのも印象的でした。
最後がピッチカート(指だけでポロンポロンと弦を鳴らすこと)だったのも印象的で、チャーミングな終わり方だと思いました。

5.ポエム フィビフ作曲
演奏前のトークでこの曲はチェコの曲で哀愁高い音楽で、そういった曲はチェコに多いと言っていました。
「ポエム」は2分の曲でヴァイオリンの4本ある弦のうち2本の弦でずっと綺麗なメロディになっているのが特徴とのことです。
聴いてみるとゆったりとした始まりで、音がかなり高くなり、そしてずっとゆったりとしていてまさに綺麗なメロディでした


6.ツィゴイネルワイゼン サラサーテ作曲
演奏前のトークで「派手な曲」と言っていたとおり、凄く派手な始まりでした。
音を震えさせながら出し、さらにその音が速く、そこにピッチカートで区切りをつけるという演奏がかなり興味深かったです。
ピアノの伴奏のないヴァイオリンの独奏もあり、弓を弦にほんの少し当てるくらいの演奏が印象的でした。
凄く高い音をゆったりと伸びのある演奏をし、その中に悲しさも感じた場面も印象的でした。
一気に踊るような演奏になり、凄い速さでした。
「タンタンタン」と勢いと力強さのある連続ピッチカートや物凄い速さでの刻み音などがありました。
最後の盛り上がりが凄く、力強さ、スピード、情感が揃った演奏が神がかっていて強烈に引きつけられました

一音たりとも聴き逃したくないと思うような演奏でした。

ツィゴイネルワイゼンの演奏後、花束をもらう二人。

高校音楽部の指揮をした岡村要さんが登場し、「みなさん、もう一曲聴きたくないですか?」と言いアンコールの音頭を取ってくれました

ぜひもう一曲聴きたかったのでかなり嬉しかったです


そして最後に、

アンコール曲「チャルダッシュ モンティ作曲」の演奏に突入しました。
ゆったりとした演奏で始まりました。
この曲も凄く高い音があり、やがて物凄く速い刻み音での演奏になります。
その物凄い速さで刻みながらも流れるように弾いているのが凄いと思いました。
演奏がややゆったりとし、ヴァイオリンの物凄く高い音にピアノが水の中をたゆたうような演奏で合わせていたのも印象的でした。
演奏がまた速くなり、物凄い速さでの刻みになります。
この曲も最後の盛り上がりが凄く、聴いていて「すげえ」と声が洩れました。
「広島プロミシングコンサート2018」でも「すげえ」と声が洩れたことがあり、素晴らしい演奏を聴くと感嘆の声が洩れることがあるのを最近感じています。
第8回復興支援チャリティーコンサート、良いコンサートでした。
安田女子中学高等学校から木村紗綾さんと長谷川朱里さんが輩出されているので、今日演奏した在校生の中から二人のような人が現れるかも知れないとも思いました。
復興支援チャリティーコンサートを毎年続けているのも素晴らしいです。
学生さん達の芸術センスの高さにも驚き、ぜひどんどん活躍していってほしいと思いました

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演奏者プロフィール
木村紗綾
3歳よりヴァイオリンを始める。
2010年安田女子中学校を卒業後、プラハ音楽院に首席入学。
第50回コツィアン国際ヴァイオリンコンクール第1位、第35回チェココンセルヴァトワール・ギムナジウム国際コンクール最高位、第38回第1位受賞など国内外のコンクールで入賞。
2011年ヒロシマ平和創造基金より2年間奨学金を授与される。
チェコフィルハーモニー管弦楽団オーケストラアカデミーに在学中は、プラハの春音楽祭、スメタナ音楽祭等に出演。
2016年からは大植英次氏と威風堂々クラシック in Hiroshima などで多数共演。
現在チェコフィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団などの客演奏者としても活躍している。
これまでに村上直子氏、石川静氏、中村英安昭氏に師事、現在プラハ音楽院にてイージー・フィッシャー氏に師事。
長谷川朱里
安田女子中学高等学校を卒業後、エリザベト音楽大学に進学。
同大学大学院をセシリア賞を受賞し首席で修了。
卒業演奏会や新人演奏会等国内外の演奏会に多数出演。
これまでに多田愉可、天野圭子、柴田美穂、横山幸雄各氏に師事。
現在エリザベト音楽大学付属音楽園講師、りずみっく講師を務める傍ら、演奏活動を行っている。
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木村紗綾さん出演のコンサート、演奏会
威風堂々クラシック in Hiroshima 2018
威風堂々クラシック in Hiroshima 2019
一楽章f未完成 Violin & Cello Duo Concert
木村紗綾さん ヴァイオリン・サマーコンサート
ひろしま美術館 ミュージアムコンサート(出演:木村紗綾)
CHRISTMAS IN PEACE CONCERT 2019
「新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ 第54回広島」
木村紗綾さんオンラインヴァイオリンリサイタル ~クラシックで満ち満ちて~
第52回福山音楽祭府中エリア特別演奏会 木村紗綾ヴァイオリンリサイタル
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