日々描いたマンガやスケッチ、似顔絵などを貯めていく貯金箱のようなブログ。
スケッチ貯金箱
似顔絵(菅野美穂さん・「坂の上の雲」 正岡律) (portrait MIHO KANNO)

病の床に臥す子規の許を訪れた幼馴染み・秋山真之(あきやまさねゆき)に向かって子規は、
自分の無念の心情と、俳句文学への想いを吐露する。
子規の妹で、その介護を一手に引き受けている律(りつ)は、
それを物陰から聞いている。
結核から脊椎カリエスになり、背中の傷口からは
神経が剥き出しになっているような凄まじい状態。
介護といっても、結核の薬も無い時代、
激痛に泣きわめく兄をなだめすかしつつ傷の手当てをする毎日。
苛立つ兄に「木石(ぼくせき)のような女」などと随筆に書かれたり、
介護の他の日常の用事、子規の門人たちの相手、
その目まぐるしい生活は、自分のことなどとても考えられないものだったろう。
しかしその兄は、買い物に出かけた妹をひたすら待つ俳句も読んでくれるのだった。
結局律は、兄を尊敬していたのだろう。
しかし、真之を送る道すがら、律は言うのだ。
「うちはいかん妹なんじゃ。
兄(あに)さん、もう死んでもええよ…心の中でそうつぶやくんじゃ。」
もう十分苦しんだから、短いけど十分濃い人生だったんだから、
もう楽になってもええよ。そう思う妹。
「でも兄さんは、どんなに苦しゅうても、生きようとするんじゃ。」
上の絵に描いたような表情で、律は真之に訴えかけるように言う。
「兄さんは、私の作ったごはんを、残さず食べるんじゃ。」
兄の生きたい気持ち。無念の気持ち。
それを可哀そうで辛く思う自分。その情けなさ。しかし兄を楽にしてあげたい気持ち。
その心の中のせめぎあいを、切なく溢れるその気持ちを、
菅野さんは素晴らしい演技で演じ切った。
日本人は、明治人は、美しかったと思う。
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