Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

スイスと周辺3国を巡る旅【2-2】チューリッヒからラッパーズ・ヴィルへ

2016年02月21日 | ■旅と鉄道

 大時計の前で待ち合わせたのが、近郊のラッパーズ・ヴィル在住のエリー(日本人)とマヌやん(スイス人)。我ら夫婦の共通の友人であるエリーの嫁ぎ先を訪ねるのも、今回の旅の大きな目的の一つでした。
 再会(といっても先月福岡で会ったばかりですが)を喜びつつ、まずは地下のロッカー(6フラン=716円×2)に荷物を預け、街歩きに出発です。


 近郊で有効の1日乗車券(26フラン=3,100円)を手に、まずは近郊電車のSバーンに乗車。1日乗車券はずいぶん高い気もしますが、もともとスイスの交通費は高めなので、すぐに元は取れてしまうのだとか。
 1駅のハートブリュッケで下車し、青空と予想以上の暖かさに驚きつつ歩くこと10分。チューリッヒデザイン美術館にやって来ました。


 スイスと世界のデザイン変遷史が分かる博物館で、特徴的なのは触ることができること。特に工業製品は、さわって分かる良さというのもあるので楽しめました。
 館内は撮影禁止だったので、ホールを1枚。変哲もない蛍光灯も、リズム良く並べればデザインになることも分かりました(笑)。


 トラムに乗って市内へ。市営のトラムで、市内には13系統の路線が張り巡らされているそうです。
 すべてが低床の新型車というわけではなく、「青胴」の旧型車も走っていて味があります。街中を貫通する鉄道橋の橋脚も石積みで、歴史ある街並みにマッチしていました。




 旧市街で下車。細い石畳の路地が網の目のように伸び、テレビの中で見る世界のようです。
 開いている店が少ないのは、日曜日だからだとか。稼ぎ時に休むなんてと思いますが、日本も昔ながらの商店街だとそうですよね。休むべき時はしっかり休むのが、スイス流のようです。


 グロスミュンスターの大聖堂。11~13世紀ころの建築物で、塔は18世紀に再建されたものだとか。再建ですら18世紀なのだから、歴史の重みが感じられます。内部の撮影は禁止でしたが、ステンドグラスがきれいでした。




 聖堂の前から見下ろした、リマト川沿いの風景です。川沿いに立ち並んだ古い建築物を背景に、時間の流れを楽しむ人々。ゆるやかに走り去る、丸みを帯びたトラムがよく似合います。


 7系統が集うトラムの中心駅、ベルビュー。いろんな方向から、ひっきりなしに電車がやって来ます。これは日本最大の路面電車の街、広島でも見たことがない風景です。
 70年代には地下鉄の計画もあったというチューリッヒですが、住民投票でトラムの存続へと舵を切ったという経緯があります。それだけにトラムの存在感と信頼は、大きなものがありそうです。


 電停を抜けると、セクセロイテン広場に出てきました。いかにも街の中心といった広場で、地べたに座っておしゃべりしている人々の姿が印象的です。芝生なら不自然ではないのでしょうが、硬い石畳の上というのが面白いところ。
 屋内と屋外という違いはありますが、台湾・台北駅の大ホールに座り込む旅行者の姿を思い出しました。


 広場最寄りの、Sバーンのシュタデルホーフェン駅。駅舎は19世紀の歴史あるものですが、ホームはコンクリートと鉄骨でデザインされた現代的なもので、それが不思議とマッチします。
 チューリッヒ駅までは、Sバーンで1駅。ここまですべてマヌやんの先導で電車に乗ってきましたが、適宜Sバーンとトラムを使い分けていて、効率的ながらも楽しいコースでした。


 チューリッヒ駅のロッカーから荷物を出して、再び地下のSバーンのホームへ。二人の住む街、ラッパーズ・ヴィルへはS5、S7の2系統の電車がありますが、最寄り駅のケンプラーテン駅を経由するのはS7系統のみです。
 Sバーンは2階建て車両ばかりで、電車タイプのものと、機関車につながれた客車タイプの2種類があります。今度のSバーンは、後者でした。


 S7系統はチューリッヒ湖の湖岸を走り、夕暮れの時間とあって、きれいな風景を眺めることができました。30分毎の電車ですが、ラッパーズ・ヴィルまで行く場合でもこの系統がオススメとのこと。


 混み合っていた車内も、郊外に向かうにつれて空いてきました。駅前にはバスが待機していて、列車に接続してすぐさま発車していきます。
 Sバーンも改札フリーの信用乗車方式なので、駅と街区を隔てるものがありません。バスと電車の乗り継ぎは、数歩で済んでしまうというケースもありそうです。運賃はなかなか高めですが、利便性の高さには目を見張るものがあります。


 車内のモニタでも、バスの接続状況は一目で分かるようになっていました。


 ケンプラーテン駅で下車。片面ホームがあるだけの、住宅街の中の無人駅です。


 駅からお宅までは、歩いて5分といったところ。引っ越して間もない新居です。広々としたリビングにアイランドキッチン、いいなあ。
 さっそくスイスの郷土料理・ラクレットで、もてなしてもらいました。ジャガイモに溶かしたチーズを絡めて食べる、いかにもスイス料理といったメニューでおいしかったです。ただ、まだ時差ボケの解消には至っておらず、食事中にもうつらうつらする有様。まだまだ長い旅、早寝の失礼をお許し下さい!

スイスと周辺3国を巡る旅【2-1】国際特急でスイス・チューリッヒへ

2016年02月21日 | ■旅と鉄道
 新婚旅行の2日目は、ドイツ・フランクフルトから高速列車ICEでスイス・チューリッヒへと抜け、ラッパーズウィルの友人宅へお邪魔するというプラン。憧れのヨーロッパの長距離列車と、遠き地に嫁いだ友人の様子が楽しみです。
 昨夜は時差の影響もあって10時前には床に就いたので、5時には目が覚めてしまいました。せっかくの異国での貴重な時間。少し明るくなってきた7時を待って、フランクフルト中央駅まで朝の散歩に出かけてみました。


 さすがヨーロッパの大都市で、Sバーン、Uバーンと共存して、網の目のように路面電車が張り巡らされています。しかも長い編成の電車が、頻繁にすべるように走っていく姿は都市景観として美しいです。日本で同じような風景は、広島でしか見られません。
 メッセ周辺はコンベンション地区だけあって、緑地も歩道もきれいに整備された気持ちのいい散歩道。しかしそこを抜けた駅までの道は、開いている店もないし、人通りも少なくて深夜のよう。落書きだらけの廃ビルもあって、ちょっと殺伐とした雰囲気に怯えました。


 フランクフルト中央駅へ。昨日は足早に通り過ぎるだけだった駅のホームを、つぶさに眺めてみました。ICE3に赤いレギオ。鉄道雑誌の中でしか知ることがなかったドイツの鉄道の世界が、今目の前に広がっています。
 日本では主に私鉄の主要ターミナルで見られる行き止まり式ホームですが、ヨーロッパでは長距離路線の途中駅でも取り入れられています。折り返しに時間がかかる、進行方向が変わるなど運転上のデメリットはあるものの、駅の出入り口からフラットで乗り降りできるのは便利です。


 特に信用改札のヨーロッパでは、駅のホームが街区と一体になっていることもあって、切符さえもっていれば街角から飛び乗れる感覚があります。
 そしてホームに入れば、発車を待つ列車をズラリと横から眺めることができます。なんとも旅情を感じさせる光景です。




 中2階から俯瞰した様子も、「旅立ちの舞台」に相応しい雰囲気。同じアジア系の観光客も、カメラを向けていました。


 ただ駅前に出てみると、ここもなんだか雰囲気が悪い。人通りは少ないし、荒れている酔っ払いの集団もいて、朝というよりは昨夜の続きといった感じです。街中まで散策する腹積もりでしたが、まだまだ慣れぬ異国の地、早々に切り上げることにしました。
 フランクフルトはまた最終日の昼に来る予定なので、その時の楽しみにとっておきましょう。


 ホテルまでの帰り道はUバーンではなく、トラムに「体験乗車」してみることに。券売機にはメッセまでの口座があったので、迷うことなく買えました。
 運賃は、市内均一運賃より少し安い1.8ユーロ(236円)。短距離区間の特割的なものかなと思いましたが、真相やいかに。


 熊本市電の低床電車にも似た、5車体連接の電車に乗ってメッセへ。日本でも低床電車が一般的になってきましたが、熊本、広島の初期の電車はヨーロッパからの輸入車だったこともあって、「乗り慣れた」乗り心地感でした。
 十数年前、熊本の低床電車に初めて乗った時は、あまりの乗り心地の違いに「これが路面電車先進国の電車か!」と驚いたものですが、ようやく本場の電車に乗ることができました。


 ホテルで再度荷造りに勤しみ、チェックアウトしてUバーンのメッセ駅へ。中央駅に戻ります。地上に置かれた券売機で切符を買って、エレベーターで直接ホームへ下れる便利さも、信用改札ならではです。
 ところがホームに下りても、人の気配なし。電光掲示板もなにやらドイツ語のインフォメーションが流れるだけで、発車案内がありません。理由は分からないけど、電車は来ないんじゃないかというヨメさんの直感に従い、地上のトラムに転進しました。


 合理的な信用乗車も、いざという時に聞ける駅員がいないのは困ったものだと思いつつ、無事に中央駅へ。スイス・クールまで直通のICEは、すでにホームに入っていました。切符はネット予約で発券済みなので、そのまま乗れてしまうのは気楽なところです。運賃も定価114ユーロのところが、早割で69ユーロ(9,040円、座席指定料が別途4.5ユーロ)と割安になりました。


 今回乗車したドイツの高速列車ICEは、もっとも初期のICE1と呼ばれるタイプでした。1998年には脱線事故で100人を超す死者を出した車両でもありますが、事故の原因となった車輪はその後交換されているので、一応は安心して乗れる列車です。
 僕らは2等席。デッキと客室はガラス戸で仕切られ、開放感がありますが、室内は荷物置き場などで適宜空間が仕切られていて、落ち着きにも配慮されています。


 僕らは通常の座席を予約しましたが、ヨーロッパの伝統的なコンパートメントタイプの客室も、各車両に健在。ここは座席も3列なので、ゆったり過ごすことができそうです。
 九州の787系(昔のつばめ)や、リニューアル前の883系(ソニック)との共通項も見出すことができる設計思想。車両デザイナーの水戸岡鋭治さん、ヨーロッパの列車とその「あり方」には大きな影響を受けたんだろうなと、遠き地で感じました。




 ドイツ版新幹線とも呼ばれるICEですが、全線が高速専用線というわけではなく、一部は在来線に乗り入れています。スイス国境までのバーゼルまでも、高速区間はざっと半分といったところです。
 もっとも在来線区間のスピードも日本のそれよりだいぶ早く、乗客の待つホームを高速で通過していきます。瀟洒な住宅街の中も同じレベルの高さでかけ抜け、車窓を見ていて飽きません。全線が高速新線になればもっと早くなるのだろうけど、旅で乗る分には面白いです。


 郊外に出れば、北海道を思わせる大規模な穀倉地帯が広がります。工業国のイメージがあるドイツも、食料自給率は9割以上。大規模な国土が、狭い島国に住む身にはうらやましくなります。


 ICEの魅力は、なんといっても本格的な食堂車をつないでいること。鉄道ファンとして、これを体験しないわけにはいきません。お昼時を避けて11時に行ったおかげで、席は空いていました。
 きちんとしたテーブルと椅子はレストランの雰囲気。高い天井には天窓も付いていて、明るく開放感がある車内です。メニューを見ながらあれやこれや悩むのも、また楽しい時間です。


 午前中なので、お手頃なブレックファースト系のメニューもありましたが、やはりドイツに来たからには本場のビール(300mlで3.3ユーロ=432円)に、ソーセージ盛り合わせ(7.8ユーロ=1,020円)でしょう!流れる車窓を眺めながらの生ビールは、最高の一言。夢でした、夢かないました!
 ビールの2杯目も300mlを頼んだつもりだたのに、500ml(3.9ユーロ=511円)が来てしまったのは天の助言でしょうか(笑)。それにしてもビールの安さは、際立ちます。


 厨房を挟んで反対側は、カフェスペースになっています。こちらも、席を離れてくつろぐには良さそうなスペースですね。
 ただレストラン区画も、飲み物だけの利用お断りというわけではないようで、コーヒー1杯で席を立っていく人の姿も見られました。


 ドイツ鉄道と、スイス国鉄の2つのバーゼル駅を通過すれば、スイス入国。とはいえ、入国審査はおろか、パスポートのチェックすら行われません。スイス警察の人が巡回したのが目立ったくらいで、県境をまたぐくらい、本当にあっけない国境通過でした。



 ドイツの車窓ものびやかでしたが、スイスに入るといっそう のどかになってきました。山や畑の中など、一体どこから歩いて来たの?と思いたくなる場所でも、散歩する人の姿が目立つのは大きな変化です。歩きたくもなる風景ですよね。
 意外だったのは、あちこちの建物や壁面、時には列車の車体にまで「アートされた」落書き。ドイツでもその多さに驚いたけど、スイスに入ってもその数は減りません。イメージしていた牧歌的な風景の中に、イメージしていなかったポップなペイントが踊ります。


 4時間の旅もあっという間に終え、チューリッヒ駅に到着。永世中立国でEUにも加盟していないスイスですが、駅のスタイルはドイツと同様です。近郊電車と長距離列車が入り乱れた発車案内が、旅情を誘います。
 後編に続く。