Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

スイスと周辺3国を巡る旅【5-2】ビールを飲みながら世界遺産

2016年02月24日 | ■旅と鉄道

 標高1,130mのディゼンティスでは、30分間の大休止。この先は会社がマッターホルン・ゴッタルド鉄道からレーティッシュ鉄道へと変わり、機関車も交換が行われます。
 乗客にとっては、二度目の貴重なリフレッシュタイムです。駅のお土産屋さんも書き入れ時。お土産品が、どんどん売れていきました。


 ホームには、姉妹鉄道の箱根登山鉄道から贈られた、日本語の駅名版も。スイスほどのスケール感ではないけれど、箱根の登山電車も、急カーブやスイッチバックが続く本格的な登山鉄道です。
 サンモリッツやベルニナなんて地名を以前から知っていたのも、姉妹鉄道が縁で箱根の電車に愛称がつけられていたからでした。


 高度を下げた列車は、渓谷沿いをクールへと向かいます。森林限界を超え平原だった雪山とは、うって変わった風景です。


 沿線最大の都市、クール着。チューリッヒまで1時間15分の距離にあり、ほとんどの乗客は降りていってガランとしてしまいました。反面、列車には普通車が大挙増結され、停車駅も増えて、サンモリッツまでは普通列車の役割も担っていきます。
 停車時間は20分あまりあったので、少し降りてみました。ホームを覆う、大きなドーム屋根が印象的です。


 エスカレーターを上がればもうそこは駅の外で、黄色いポストバスが大集結していました。駅前広場(駅上広場?)が路線バスのターミナルを兼ねていて、乗り継ぎの便の良さには感心します。


 ガラガラになった列車は、進行方向を反対にして出発、第3部の旅が始まります。サンモリッツまでのアルブラ線は、有名な世界遺産の区間です。
 クールの街を抜けた列車は、まずは川沿いを進路に取ります。渓谷とも違った、やさしい表情の川です。


 カーブが増え始めれば、今日2度目の山登りにかかります。景色もよくなってきたので、編成なかほどのバー車両へと足を向けてみました。
 食事サービスの厨房を兼ねた車両は、半分がスタンディングのバーコーナー。山々の風景を肴に、瓶ビール(5.1フラン=608円)を空けました。


 右へ左へとカーブし、停車した駅が眼下に、それも右へ左へと移っていく車窓は見ていて飽きません。ツェルマット発車から6時間を過ぎましたが、退屈知らずの道中です。
 世界遺産の構成要素のひとつでもある、ランドヴァッサー橋を通過。目もくらむような高さです。


 途中駅では、食堂車を連結した列車とすれ違いました。外観も内装もレトロな調度の車両で、今風の氷河急行とは好対照です。帰路の列車に連結されていたらいいな。


 標高も再び1,000mを超え、今日3度目の雪景色になってきました。


 ブレダ駅前では、老朽化した現トンネルに代わる新トンネルを建設中。大規模なヤードが組まれた建設現場の前には、広報コーナーが設けられていました。ドイツだと何か公共事業を起すときは、1割程度が広報費に充てられると聞いたことがありますが、スイスも同じような考え方なのでしょうか。
 列車をリフト代わりに山を登り、ソリ遊びに興じる人々が、現場を横目に降りていきました。


 トンネル工事の知識まで仕入れられたのは、音声ガイドサービスのおかげ。ポーンとチャイムが鳴り、表示板にヘッドホンの絵が出れば、オーディで沿線案内が流れる仕組みです。僕が分かるくらいだから、もちろん日本語も対応してます。
 アルプスの伝統音楽を流し続けるチャンネルもあり、風景とそれはよくマッチしていました。


 サメーダンでティラーノ方面の線路と分岐し、ラストスパート。コテージ風の建物が増えてくると、山岳リゾート地・サンモリッツは間もなくです。


 午後5時、8時間に渡る長旅を終えてサンモリッツ着。変化に富んだ、楽しい旅路でした。
 手元のガイドブックには、「ますはシャンパン気候とも呼ばれる爽やかな空気で深呼吸してみよう」とあったので、ホームで深呼吸。うむ、爽やかだ。


 今日の泊まり先であるバート地区はサンモリッツ湖の対岸です。歩いても大した距離ではないので、湖畔を散策してみました。
 湖とはいえ、氷点下の世界では凍結中。車も乗れるほどの強さで、「駐車禁止」の看板があったのは面白かったです。


 旧市街・ドルフ方面へのエスカレーターへは、カンチレバー(片持ち梁)好きにはたまらない階段か湖に飛び出しています。


 そのカンチレバーの上には、望遠鏡のようなものが。覗いてみると…


 夏場のサンモリッツ湖が見える仕掛けになっていました。夏場には、冬の景色を映すんでしょうか?


 ドルフ方面にはエスカレーターと斜行エレベーターが通じていて、エスカレーターはギャラリーコーナーになっています。エスカレーターに乗りながら絵画鑑賞ができて、こちらがオススメ。
 今はサンモリッツのユニークイラストがテーマになっていて、シュールなギャグからちょっとした下ネタまで、クスリと笑える作品が楽しませてくれました。


 泊まりはカーサフランコなるホテルですが、「チェックイン手続きはホテルゾンネへ」と書いてあったのを、今日は見落としませんでした。
 昨日みたいに、実は同じ棟でした!なんてオチいいんだけどなと思ってチェックインしましたが、外に出て左へ、さらに左へ、もう1回左へ…と案内されました。


 というわけで、徒歩3分のカーサフランコへ。ツェルマットでは山小屋風のホテルが目立ちましたが、サンモリッツではここに限らず、こざっぱりしたキューブ状のデザインの建物が多勢です。


 部屋は、う、狭い。そしてちょっと古めかしい…実は昨日のホテルよりも宿泊費は高かったので、少し期待をして来たのですが、さすがは超が付く高級リゾート地。宿泊費の相場そのものが、かなり高めのようです。


 テラスも申し分程度。これで2万ウン千円かあ…ただあくまで昨日との比較であって、寝る分には充分快適なホテルではありました。


 夜の帳が降りると、サンモリッツ湖には対岸の旧市街が輝き始めます。少し寂しいバート側に泊まったからこそ見られる景色です。


 旧市街方面へは、路線バスで向かいました。スイストラベルパスがあれば、バスも無料で乗れます。信用乗車方式なので都度チケットを出す必要もなく、ヒョイと飛び乗れる感覚も気軽です。
 昼間は、きれいな10分間隔で運行されていて便利。ただ19時を過ぎると、急激に本数が減ってくるので注意です。深夜は3時まで走っていて、夜が早いのか遅いのか分からなくなります。


 サンモリッツの旧市街、ドルフ。サンモリッツのシンボル、太陽のイルミネーションがおしゃれです。ロータリーを、連接バスがぐるりと折り返していきます。


 ただ開いているのは飲食店くらいで、スーパーのCOOPでさえ19時には閉まったようです。もとよりコンビニという便利なものはなく、自販機もないので、何も手に入りません。
 これという飲食店も見つからず、バスでバートの中心部へと戻りました。


 こちらにもレストランは何軒もあるのですが、コンビニ的な役割の「Kキオスク」は店じまい後。自販機があったのでどうにか水は手に入ったけど、「お昼ご飯でお腹一杯だから、買い食いで済ませよう」という魂胆は崩れました。
 日本は便利、スイスは不便と断じるのは簡単。ただ日本と比べて短い労働時間が、過度な便利さを追い求めないことで実現できているのだとすれば、見習うべき部分なのかもしれません。


 ひとまず「食料は手に入れられるときに手に入れよ」という教訓を得て、夕ご飯はホテルゾンネのイタリアンレストランで済ませました。お値段はもちろんスイス価格でしたが、おいしかったです。
 明日は、ホンモノのイタリアまで足を伸ばします。

スイスと周辺3国を巡る旅【5-1】氷河急行、8時間の旅路

2016年02月24日 | ■旅と鉄道
 スイス鉄道周遊編の2日目は、ツェルマットからスイス東部の山岳リゾート地・サンモリッツまで、氷河急行に乗って駆け抜けます。


 窓を開ければ、昨夜からさらに雪が降り積もっていました。日の出前だけど、天候は回復に向かっているみたい。よし、マッターホルンを見に行くぞと、身支度を整えてホテルを出てみれば…


 ホテルの敷地内から望めました!人を寄せ付けないながらも親しまれてきた、荒々しい雄姿です。イモトすごいな…という、別次元の感想もじんわり湧き上がりました。
 もっとよく見える場所に行ってみようとウロウロしていたら、いつしかその姿は雲の中へ。山の雲は、気まぐれです。


 ホテルに戻れば、朝ご飯の時間。昨日は入れなかったレストラン、こちらもいい雰囲気です。


 ビュッフェ形式のモーニングもどれもおいしく、ついつい食べ過ぎてしまいます。コーヒーもたっぷりポットで持ってきてくれて、朝から贅沢な気分です。
 駅や目抜き通りからは少し遠いホテルではあったけど、大変というほどではありません。2人合わせて1泊2食4万円未満で、とても満足な時間を過ごすことができました。


 駅まで向かう道すがら、ゴルナーグラート鉄道の鉄橋の下へ。朝一番で見たほどくっきりではないけど、霧の中にうっすらとマッターホルンが姿を現しました。また今度は夏にでも、雄姿を拝みに来たいものです。


 今日は朝9時前に出発する氷河急行に乗って、東部の山岳リゾート、サンモリッツ駅へと抜けていきます。平均時速は40km/h以下、世界一遅い急行との異名を持つ列車は、アルプスの絶景を思う存分楽しみながら移動できる観光列車です。
 幼い頃は海外の鉄道にあまり関心がありませんでしたが、「世界の車窓から」で見た氷河急行は別格。憧れだった列車でもあります。




 アルプスの山々を眺められるよう、全車両が天井まで窓になったパノラマ車両です。あまり指定席を取る習慣のないスイスでも、氷河急行は例外。今日もほとんどの席が予約済みです。氷河急行は日本からでもネットで予約ができるので、慣れぬ英語と格闘しながら抑えておきました。座席指定料金だけで13フラン(1,550円)かかります。
 とはいえ全区間を乗る人ばかりではなく、僕らの車両は日本人の一人旅の青年が乗ってきただけ。ガラガラのまま、ツェルマットを出発しました。


 さっそく乗務員が「コーヒーorティー?」と聞きに回ってきたので、コーヒーをオーダー。ウェルカムドリンクと思っていましたが、下車する前にきちんと5.8フラン(692円)請求されますのでそのつもりで(笑)。
 続いて車内改札があり、ヨメさんのパスを見た車掌さん、「オー、ハッピーバースデー!」と祝ってくれました。こういうの嬉しいねと話していたら、戻ってきた車掌さんの手には氷河急行名物の傾いたワイングラスが。なんとも嬉しい、バースデープレゼントなのでした。


 2等車もパノラマ車両で、4人用のボックス席。景色を眺める分には1等車と変わりません。今回は新婚旅行なので、ゆったりした1等の2人席で過ごしましたが、気ままな一人旅なら、ふれあいのある2等車も楽しそうです。


 先頭車の窓ガラスの向こう側では、いかつい電気機関車が、下りの急勾配で つっかえ棒役になっていました。


 昨日来た道をフィスプ駅まで戻ると、すっかり雪は消えて平地の風情。続くフィーシュ駅で本線からの乗り継ぎ客を受け、車内は満員近くになりました。
 平地では、さきほどまでの山岳鉄道の顔はどこへやら。軽いリズムを奏でながら、急行列車らしいスピードで走っていきます。


 油断?していたのもつかの間、いつしか線路は再び隘路の様相を呈してきます。

 
 氷河急行には食堂車はありませんが、座席には立派なテーブルが備わり、厨房で調理した食事を席まで運んでくれるサービスがあります。雰囲気だけ見れば、全席が食堂車と言ってもいいかもしれません。
 比較的お手ごろなワンプレートランチもありますが、今回は張り込んで、3コースランチ(43フラン=5,130円)にしました。これもネットで予約できます。


 さっそく11時頃にはテーブルクロスが敷かれ、頼んだワインも早々に運ばれてきました。山々に乾杯して、ランチコースの登場を待ちます。


 上げ膳据え膳でくつろいでいる間にも、列車は山越えに挑み始めています。ラックレールが表れ、車体もぐっと傾いてきました。さきほどもらった傾いたグラスも、この勾配に対応したもの…というのはちょっと誇張したもので、今は写真の通り、普通のワイングラスです。
 どちらかというと、揺れや振動でナイフやフォークが滑っていくことにハラハラします。肥薩おれんじ鉄道・おれんじ食堂の「滑り止め機能つきランチョンマット」を輸出してあげたいところです。


 目もくらむような高さの、つり橋の人道橋。九重の観光用とは違って日常の通行路のようで、歩く人の姿が見られました。こわい…




 標高が上がるにつれ、また雪深くなってきました。空は快晴、直射日光と雪に反射した太陽光がまぶしくて、目がクラクラします。澄んだ空気の日光は思いのほか強烈で、下手すると目を傷めてしまいそう。サングラスは必携でした。
 車内でロゴ入りサングラスを、比較的お手ごろな10フラン(1,190円)で売っているのを知ったのは、もっと後の話です。


 窓に日よけはありません。パノラマを楽しむ列車ですから、陽を避けたければ各自で準備を、といったところでしょう。


 標高1,435mのアンデルマットでは、5分の小休止。昼も12時前、始発から乗っていれば3時間を越えていて、外の空気を吸いたくなるタイミングです。
 乗客が三々五々降りてきて、爽やかな空気や、雪の感触を確かめていました。


 1時間近くの「おあずけ」の末、ようやく3ランチコースの1皿目が運ばれてきました。スープは、冷えた体に嬉しい暖かさです。




 ぬくぬくと食事を楽しんでいる間にも、列車はサミットのオーバーアルプ峠に向けて、より厳しい勾配へと踏み出していきます。
 ついさっきまで降り立っていたアンデルマットの街と駅が、あっという間にはるか眼下へと遠ざかって行きました。


 同じ路線には全席指定の氷河急行だけではなく、普通列車も走っています。リフト代わりに電車が使われているのは、この路線も同じ。スキーだけではなく、クロスカントリーのコースも整備されていて、雪道を競歩する人の姿も少なくありません。
 スイスのウインタースポーツの世界、奥が深そうです。


 景色を楽しんでいる間に、ランチの2皿目が登場。今日のメインディッシュは、ポークのソテーです。とびきりのご馳走ではないけど、大パノラマを見ながらの暖かい食事は、どんなレストランにも負けない味でした。
 のちほど、付け合せのお代わりがやってきたので喜んでお願いしたら、2分後にはなんとお肉のお代わりが回ってきました。平らげたはずの2皿目、完全復活(笑)。


 乗客がメインディッシュを楽しんでいる間に、列車は最高地点となる標高2,033mのオーバーアルプ峠を制覇。氷河急行の名の由来ともなった氷河は、長大トンネルの完成で見られなくなりましたが、それでも充分ドラマチックな山越えです。
 高度が下がれば、再び雪は少なくなってきました。カーブを繰り返し、時にはアーチ橋そのものもカーブを描いて、苦労して登った峠道を下ります。


 コースは3皿目のデザートへ。チーズの盛り合わせかケーキを選べて、手持ちのチーズがあった僕らは二人ともケーキをリクエスト。コーヒーも頼んで、満ち足りたひとときが過ぎていきました。