Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

スイスと周辺3国を巡る旅【3-2】ラッパーズヴィル夕暮れドライブ

2016年02月22日 | ■旅と鉄道

 ところでチューリッヒではトラムが充実していましたが、ザンクトガレンでは軌道が見当たりません。その代わりスイスの街としては珍しく、大通りの上には電線が張り巡らされています。その正体とは…?


 トロリーバスです。蓄電池ではなく、架線から集電を行う昔ながらの方式の電気バスで、日本では立山黒部アルペンルートの2路線でしか見られません。
 ザンクトガレンでは2両連接、長いものだと3両連接のバスもあり、トラムに負けない輸送力と存在感を発揮しています。


 パスの適用範囲だったので、3バス停先まで試し乗りしてみました。長い連接車での運行を可能にしているのが、やはり信用乗車方式。3つの扉から乗り降りできる分停車時間は短く、日本のように運転士が運賃を受け取っていたら、ノロノロになるだろうなと思われます。
 乗り心地自体はバスそのものだけど、響いてくるモーター音は電車のそれ。立山と同じで、なんとも不思議な感覚です。


 一部にはバス専用道もあり、ディーゼルエンジンの黄色いポストバス(郵政事業部運行のバス)も共用していました。




 3時の列車で、ラッパーズヴィルへと戻ります。


 帰路の列車はリニューアル車で、やさしい色使いの車内に好感が持てます。2等車のクロスシートながら、すわり心地もなかなかです。
 大学の下校時間に重なったらしく、途中駅からは大勢の若者が乗ってきて賑やかに。やはり観光列車というより、日常の足の雰囲気が強いです。


 しかし車窓はスイス。波静かなオーバー湖の湖畔で憩う人々を、うらやましく思います。


 ラッパーズヴィルまで戻り、エリー&マヌやん宅まではバスで戻ることに。ラッパーズヴィルはバス停にもバス車内にも券売機はなく、乗車時に運転士に申し出てチケットを買うというやり方です。


 チケットの発行がある分、現金を放り込めば済む日本の先払い方式より、ずいぶん時間がかかります。ただ回数券やパスを持っている乗客がほとんどなので、さほど支障はないのでしょう。
 街によってやり方がだいぶ違うので、パスを持たない旅行者にはなかなかハードルが高いです。


 夕方は買い物に行くついでに、マヌやんに近所をぐるぐるとドライブしてもらいました。
 立派な高速道路には料金所がありませんが、フリーウェイというわけではなく、年間の定額制です。証明のステッカーがなければ罰金というから、これも信用乗車の一種かな? 料金は1年で数千円と安く、それでも渋滞しないのは公共交通が充実しているから…という理由もあるだろうけど、絶対的な人口の少なさも寄与していそうです。


 料金所がない以外、高速道路は日本と同じような雰囲気でしたが、一般道はだいぶ違います。最大の違いは、交差点のほとんどがロータリーで処理されていること。ぐるぐる回る車列に入るのは「集団縄跳びに飛び込むようなもの」で、慣れないと怖そうですが、地元人はスイスイと出入りしていきます。これなら信号待ちより早そう。 
 背後のガソリンスタンドはビルの1階に併設されており、これもよく見かける光景です。スーパーに併設されているところも多く、安売り商品の一つのようなノリなのでしょうか!?


 湖面へ続く道!


 チューリッヒ湖対岸・フライエンバッハの大型ショッピングセンター、シーダム・センターへ。スイスの2大流通大手、COOPとMIGROという2つのスーパーが呉越同舟しているのは、日本人の感覚から見ると新鮮です。九州で例えるならば、イオンとゆめタウンが入居しているようなもの!?
 リンゴの祭りがあるらしく、館内はリンゴのオブジェがあちこちに飾られていました。


 さすがスイス、乳製品の品揃えがすごい。チーズだけで、もう何十種類も揃っています。何でも高いスイスにあって、比較的割安でもあります。チョコレートの種類も、かなりのものでした。
 ドイツと同様、レジの人は座って対応です。


 オーバー湖とチューリッヒ湖の間を島伝いに渡って、ラッパーズヴィルへ戻ります。広いオーバー湖・チューリッヒ湖で、対岸に渡るルートはこれだけなのに2車線しかなく、夕方とあって渋滞ぎみ。
 日本だったら4車線、韓国だったら6車線くらいにしそうな道路ですが、平行するルートの電車は頻発運行で、時間が読めます。


 今夜のご飯は、買い出して来た材料でチーズフォンデュを振舞ってもらいました。日本のものより、お酒をぐっと効かせた感じ。また具も、野菜や肉は使わずパンオンリーというのが正統派なんだそうです。
 お酒通のマヌやんのお父さんも太鼓判を押す、スイス産の白ワインも合わせて、いい気分に。時差ボケも次第に修正されつつあり、寝落ちすることなく3日目の夜を満喫できました。

スイスと周辺3国を巡る旅【3-1】ザンクトガレン日帰りトリップ

2016年02月22日 | ■旅と鉄道
 昨日からお邪魔している街、ラッパーズヴィル。正確にはラッパーズヴィル・ヨーナと称します。80年代にラッパーズヴィルとヨナが合併して成立した市で、ネーミングの図式は山陽小野田市と同じですね。
 エリー&マヌやんの新居は旧ヨーナにあるのですが、飛び地状になっていて、地元の人には「そこってラッパーズヴィルとでしょ?」と認識されている場所だとか。とういわけで本稿でも、ラッパーズヴィルで通します。


 そのラッパーズヴィルにあるエリー&マヌやんの新居は、ケンプラーテン駅近くの賃貸住宅。1階がガレージで、傾斜地を生かし、2階の共用玄関からも直接出入りできるようになっています。


 車窓から見るスイスの集合住宅は、どこも広々としたテラスを持っています。テーブルや観葉植物を置いて、もう一つのリビングとして使っている家も多く、ゆとりがうらやましい限り。
 エリー&マヌやんの家は地上レベル(正確には地下駐車場の上)なので、テラスも中庭に面してます。中庭に面した3軒のテラスはお互いが丸見えの状態で、まさに向こう3軒両隣。共用の中庭で一緒にバーベキューでもするの?と聞いてみたら、そんなノリではないとのこと。つかず、離れずの距離感のようです。


 寒いスイスの冬ですがエアコンはなく、床暖房の熱で暖を取っています。その床とて韓国のオンドルのように熱くはなく、ほんのり暖かいといった程度。
 窓はペアガラス、その外側にはシャッターが付いていて、これが高い断熱性を担保しているようです。外側を見ただけでは分からないけど、壁も断熱材をしっかり入れてあるのでしょう。冬の間は床暖房を付け放しにしているそうだけど、エネルギー消費は思いのほか、少ないのでは?


 お隣のアパートとの仕切りには、金網のかごに自然石を詰めた「布団かご」を立てているのがユニーク。河川の護岸材ですが、こんな使い方もあるんですね。ツタを這わせているので、夏場には緑の壁になるのだとか。
 街中の住宅街でも何箇所かで見たので、スイスではメジャーな使われ方なのかも。


 ラッパーズヴィルの中心部までは歩いて20分ほどの距離があり、天気もよいのでぶらぶらお散歩。タイ料理やさんのクロイツ通りは、街中までストレートに通じていますが、それにしては通行量が少なめです。
 住宅街を貫くこの道路、沿道の住民の車と、路線バス以外は通行禁止なのだとか。住宅街の安全性が増すのはもちろん、バスは渋滞に巻き込まれないし、近隣の人が沿道を訪ねる際には、バスが一番便利な交通手段ということになります。


 中学校。街区との垣根がなく、公園の中にでもあるかのようです。以前、日本も「開かれた学校」を志向していた時期がありましたが、実際目にしてみるまで、なかなかイメージができていませんでした。


 路地を抜け、チューリッヒ湖畔へ。その名の通りチューリッヒまで続く湖で、鉄道と共通のチケットで乗れる航路もあるのだとか。
 夏は湖水浴を楽しむ人で賑わうんだそうです。雪景色もきれいだけど、夏場にも来てみたいな。


 湖畔を歩いて、ラッパーズヴィル駅の近くまで出てきました。湖を渡る橋は、鉄道・道路が平行。山々を背景に、湖の上を電車が渡っていきます。


 湖畔にはホテルが集まり、ちょっとした観光地風。日本のガイドブックには載っていない街ですが、ドイツあたりからだと観光に訪れる人も多いそうです。
 あくせくせず、湖の風景を眺めたり、旧市街をぶらぶらしたりしながら、ゆったりバカンスする姿が目に浮かびます。


 玄関口となるラッパーズヴィル駅も、お城のようなたたずまいです。
 今日の目的地、州都のザンクトガレンへのチケット(40フラン=4,770円)を購入。単純往復でも安くなるということで、勧められるままにフリーきっぷを買いました。実際どれくらいトクになっているのかは、人任せなのでよく分かりません(笑)。


 ラッパーズヴィルは、4方向からの線路が集う交通の要衝。各方面からの列車が、ひっきりなしに行き交います。


 ザンクトガレンへは、民鉄のフォアアルペン急行が結びます。テーブルには沿線の名所が描かれ、一応観光列車という位置付けらしいですが、クロスシートが並ぶだけの車内は庶民的です。
 クロスシートに向き合っていると、ローカル列車の旅気分も高まってきます。




 ザンクトガレンは州都ということもあり、外国人がラッパーズヴィルに住むとなれば出向かねばならない場所。しかし峠越えのある道路では時間がかかり、トンネルで貫く列車の方が便利で早いのだそうです。
 そう書くと車窓の楽しみがなさそうですが、そこはスイス。オーバー湖から牧草地帯、雪を頂いた山々と、それはもう絵に描いたようなスイスの風景が広がります。


 渓谷を渡る橋はアーチ橋のようだけど、当の列車からよく見えないのは残念。影でその形を追いました。


 1時間あまりで、ザンクトガレン駅に到着。チューリッヒ方面からはSBB(スイス国鉄)の列車が頻繁に走り、長距離特急(インターシティ)から近郊列車まで、車両のバラエティも豊かです。


 駅の外には別棟の駅舎があり、短編成の赤い電車が発着していました。スイスには狭い国土に60社もの私鉄があり、フォアアルペン急行のような幹線級の列車もありますが、日本のローカル私鉄のようなたたずまいにも惹かれます。



 旧市街をお散歩。こんな道なら、歩いているだけでも楽しいです。


 ザンクトガレンの見所といえばここ、ザンクトガレン修道院。修道院と付属図書館は、世界遺産にも指定されています。


 中でも付属図書館は、中世の貴重な文献を数多く抱える歴史的な図書館(入場料12フラン=1,430円)。図書館の内部そのものも、つややかで、細やかな装飾に圧倒されます。一つ一つの装飾を観察していたら、それこそ1日あっても足りない「日暮の図書館」です。
 内部はやはり撮影禁止だったので、玄関の扉を1枚だけ。


 同じく世界遺産の修道院は、厳かというよりも華やかな雰囲気を感じます。
 こんな歴史的な建物なのに、現役の学校が入っているのが、なんとも面白い光景。図書館も修道院も、窓の外にはバスケに勤しむ学生たちが映ります。


 修道院の廊下は、観葉植物で飾られていました。


 お昼もだいぶ過ぎたので、街へと戻りましょう。
 イースターを控え、ドイツでもスイスでもいたるところにシンボルのうさぎが飾られています。特にスーパーのお菓子コーナーやお菓子屋さんの店先には、色も大きさもとりどりのウサギたち。日本に入ってきた西洋の風習は多いけど、これは見慣れません。そのうち流行ったりして。


 物価の高いスイスでも、特に外食費は割高。それは現地人にとっても同じことで、わざわざ店に入ってご飯を食べるというのは一種、贅沢なことのようです。
 というわけで、街角のお店でテイクアウトして立ち食い。この構図の写真を撮っていたら、現地のマダムから微笑まれてしまいました。
 つづく。