Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

スイスと周辺3国を巡る旅【6-2】ベルニナ急行4時間の旅路

2016年02月25日 | ■旅と鉄道

 ティラーノの街を、旧市街方面へ歩いてみます。歩道が広く取られた、ゆったりとした街並みです。
 広い歩道にはレストランが張り出してきていて、どういう許可が下りているんだろうと不思議な気分に。オープンカフェに屋根と壁が付いた様な整理になってるのかな。


 川を渡れば、旧市街です。




 縦横がはっきりしない、迷路のような狭い路地が入り組む旧市街。方向感覚が狂いそうになるけれど、教会の塔を目印にすることで自分の位置を掴めます。
 人通りが少なくて少し怖くはあったけど、中世の世界に迷い込んだような気分の赴くままに、歩いてみたくなりました。


 路地が少し広がり、石畳を積もったばかりの落ち葉が飾るちょっとした広場。その前に立つ歴史がかった建物は、美術館なんだそうです。
 残念ながら冬季休館で、見学はかないませんでした。


 もっとも、たったの2時間しかないイタリア滞在。一番のお目当ては、イタリアンのランチを食べることです。
 旧市街にはあまり人がおらず、開いている店は駅前が多かったので、戻ろうかと思った矢先。路地の突き当たりに、雰囲気のよいレストランを発見しました。


 陽気なウエイターさんにランチのアラカルトと伝えると、中庭のオープン席に案内してくれました。


 イタリアに来たからにはと、マルゲリータピザに地産素材のタリオリーニパスタ、そして地ワインを頼みました。ピザは5ユーロ(655円)とお手ごろで、さすがは本場。スイスの高い物価に慣らされた身には、特に際立つ安さでした。
 タリオリーニパスタは10.5ユーロ(1,380円)と少し張り込んだけど、それ以上のおいしさ。パスタというより、生蕎麦に近い食感がクセになりそうでした。これだけ食べに、また訪れたいと思うほどです。


 大満足のランチを食べ終えれば、イタリア滞在はもう残りわずか。長い汽車旅に備えて水でも買おうとスーパーに行ってみたら、なんと昼休業中! 閉店時間も早く、「買える時に買え」はイタリアでも鉄則のようです。
 他に開いている店もなく、自販機もなくて困った困った。どこかで水は手に入らないかと駅員さんに聞いてみれば、ボトルを持ってますか? 駅を出て左に行くと「マシン」があります、と。自販機なんてなかったはずと思って出てみれば…


 オートメーションの給水所がありました!しかも出てくる水は、強が付く勢いの炭酸水です。どこで買った炭酸水よりも、口に合うものでした。
 イタリアなら、どこにでもあるものなのかな? ともかく駅員さん、感謝!


 短いティラーノ滞在を終え、4時間かけてまずはクールまで戻ります。スイスの3大観光列車に名を連ねる、ベルニナ急行の指定席(10フラン=1,190円)を抑えておきました。


 ベルニナ急行も、1、2等車ともにパノラマカー。天井までアーチを描いた窓には窓桟がなく、氷河急行よりも大きなパノラマを楽しめます。ブラインドが付いていて、手元で操作できる電動式。これは氷河急行にもほしかった…
 1等車は革張りのゆったりしたシートで、贅沢な雰囲気です。


 食堂車はありませんが、全区間に渡って車内販売が乗務。イタリアワインを飲んだばかりだけど、オリジナルのベルニナ急行ワインを1本入れてみました。周りの乗客もワインを傾けていて、優雅な雰囲気です。




 再び峠道に入ります。


 レンガ造りの駅舎のアルプグリュム駅では小休止。乗客も降りてきて、雪深い駅でのひとときを楽しみます。


 駅舎には展望台が張り出していて、山々を一望です。


 車掌も気さくにシャッターに応じて、旅の思い出作りに一役買ってくれます。
 なぜか僕には雪玉を思い切り投げつけてきましたが(笑)。


 往路は雲ばかりだった空も青の範囲が広がりつつあり、また違った車窓を見せてくれます。ゆったり座って天まで広がる車窓を楽しめるパノラマ車も、空気に触れられる普通列車もそれぞれの良さがあり、ぜひ往復で車両を変えて楽しみたいところです。


 サンモリッツとの三角線の分岐駅・ポントレジーナでは観光客が大挙下車。「箱根号」と別れ、ベルニナ急行には専用の機関車が連結されました。ところが今度はサメーダン駅でサンモリッツからの列車と連結し、機関車はわずか1駅でさようなら。
 きめ細かいながらも、ずいぶん手間のかかる運用ではあります。


 ガラガラになった列車は、一路クールへと向かいます。再び空は曇り始め、横殴りの雪が舞い始めました。
 山の天気は変わりやすいけど、そんな中を事も無げに定時運行する列車の陰にある努力にも、思いを馳せました。


 コース終盤では車内の明かりが落とされ、いい雰囲気に。星空が眺められるようにとの配慮だったのか、真意は不明です。クールを前に明りが灯され、車掌さんが「おはよう」と声をかけて回っていました。
 ベルニナ急行4時間の車窓は、往路で一度見たものとはいえ、氷河急行より短時間ながら変化に富んだものでした。人気があるのも、頷けます。


 10分少々遅れたため、クールでは大急ぎでチューリッヒ方面の列車へ乗り換え。お馴染みの2階建て列車に、ひさびさの対面です。


 快速タイプのレギオで、1等車はガラガラでした。山岳鉄道とは違う、幹線級の列車のゆったりシートに身をゆだねます。




 ツィーゲルブリュケでラッパーズヴィル行きのレギオに乗り換え。短編成のディーゼルカーで、1等車は運転席後ろの十席程度です。
 ラッパーズヴィルからはバスに乗り換え、無事にエリー&マヌやんの家へと戻ってきました。

 ここまで3日間使ったスイストラベルパス、お値段は1等用で336フラン(40,090円)でした。高いか安いかはそれぞれの価値観だとは思いますが、お値段以上の楽しみ方はできたのではないかと思います。
 ちなみに2等用であれば、210フラン(25,050円)。ひとり旅なら2等でも充分だっただろうけど、一生に一度の新婚旅行としては、1等にしておいて良かったです。


 お家では、マヌやんのお父様がキッチンで腕をふるってくれていました。すりつぶしたジャガイモを焼いた素朴な家庭料理、ロスティです。
 3日間の旅の成功を、スイスワインで祝ったのでした。

スイスと周辺3国を巡る旅【6-1】ベルニナ線の白い旅路

2016年02月25日 | ■旅と鉄道
 長い新婚旅行もようやく後半、6日目を迎えました。


 スイスのテレビでユニークなのが、ラジオの画面つき放送。画面には、DJの顔と道路情報が流れていています。「ながら視聴」になりがちな朝の忙しい時間には、普通のテレビより便利なのでは?


 朝食は「本館」のホテルゾンネのレストランだったので、身支度を整えて行きました。昨日の朝ほど豪華ではないけど、味はおいしいかったです。


 旧市街方面へと向かいます。凍結したサンモリッツ湖は公園的に使われていて、氷上に散策路やベンチ、ゴミ箱まで設置されているのは面白いです。
 もちろん足元はしっかりしていて、湖上にいるなんて微塵も感じませんでした。


 湖畔の幹線道路。横断歩道の真ん中には必ず「安全地帯」が設けられていて、一気に道路を渡れない高齢者でも安心です。
 歩行者優先の考え方は徹底していて、待っていれば必ず車が止まってくれます。


 さてサンモリッツにも、3,000m級の展望台があります。中でもピッツネイル展望台へは、旧市街からケーブルカーとロープウェイを乗り継いで行けるという手軽さ。
 ところが今日は山の上の天気が悪く、登ったところで視界はきかないようです。そもそも時間に余裕もないので、ケーブルカーの終点であるコルヴィリアまで登ってみることにしました。


 コルヴィリアまで往復の運賃は49.2フラン(5,870円)。スイストラベルパスの割引もありません。
 車内はスキーヤーばかりで、普通の旅姿の僕らは、他の列車以上に場違いな感じが。でも眼下に遠ざかっていくサンモリッツの街の風景は、やはり登ってよかったと思えるものです。


 チャンタレッラで別のケーブルカーに乗り継ぎ。2本のケーブルカーで1路線を構成していることを現地で初めて知り、一瞬理解ができずに焦りました。
 日本だと、近鉄の生駒ケーブルくらいしか例がないと思います。


 さらに高度を稼いでいくケーブルカー。チャンタレッラでも充分高かったのですが、さらなる高みを目指していきます。ただ景色には、だんだんともやがかかったようになり…


 コルヴィリア着。スキー場の玄関口で、レンタルショップやスキースクールなどが入り大賑わいです。


 そして外は、吹雪の様相。仮にロープウェイで3,000mまで登っても、これでは何も見えなかったことと思います。
 スキーウェアを着ているわけでもない我々は、外に出たら凍え死んでしまいそう。行き場もないということで、早々に次のケーブルカーで下山しました。


 ほぼスキー場専用のケーブルカー、下りに人が乗っているわけがありません。貸し切り状態で下山していきます。
 すれちがった登り便は、もちろんウェアに身を包んだスキーヤーでぎっしり満員でした。


 終盤コースはトンネルに入り、地下鉄のような雰囲気で麓の駅に到着。お値段も高度もちょっとお高めの、朝の散歩でした。


 ケーブルカー乗り場前のロータリーに立つ、歴史ありげな建築物。ネットには旧学校(現在は図書館)と書かれていたので遠慮なく扉を開けたら、現役バリバリの学校です。
 側にいた子どもが、流暢な英語で教えてくれたので分かりました。それにしても小学校の高学年(もしかしらた中学年?)で、英語を操れるとは…


 旧市街のドルフは、夜とはまた違った表情を見せてくれます。
 サンモリッツの駆け足滞在は、これにて終了!あまり観光もできなかったし、展望台にも登れなかったので、また行きたい場所が増えました。いい思い出ができたらできたで、また行きたくなるんですけどね。




 11時発のレギオ(普通列車)で、イタリア領のイタリアのティラーノを目指します。
 列車はわずか3両編成で、珍しく電車です。姉妹鉄道の縁で「箱根」の愛称つき。へえ、機関車牽引の客車ばかりじゃないんだなあと感心していましたが、実は見た目を裏切る実力者だったことを後から知ります。


 わずか3両の電車なのに、半室の1等車がついてます。ゆったりしたクロスシートで快適。結局、ティラーノまで1室貸切という贅沢さでした。


 サンモリッツの街を抜け、ポントレジーナでクール方面の線路と合流します。ここで後部にベルニナ急行の客車を連結。機関車はなく、つまり僕らの乗っている3両編成の電車が、機関車代わりに客車をひっぱるのです。
 普通の電車と見せかけて、実は自身よりも長い客車を従えて急勾配を登り降りできる、パワフルな車両でした。


 標高1,822mのサンモリッツでも充分標高は高いのに、さらに高みを目指すのがベルニナ線です。湖も凍りつく寒さだったサンモリッツから上がるのですから、雪もどんどん深くなっていきます。
 そしてここでも、列車はスキーヤーの足。接続列車は、リフトです。


 ベルニナ急行を従えた長い編成は、急カーブにかかると全容を見渡すことができます。僕らのローカル車両だと、窓が開くのも嬉しいところ。1等には他に乗客もいないので、遠慮なく窓を開けて零下の空気を吸い込みました。
 パノラマ窓のベルニナ急行もよさそうだけれど、普通車もイイネ!


 車窓左手には、ビアンコ湖が広がっています。ビアンコはイタリア語で白…なんて意味を知っているのは、彼らのお陰(笑)。
 湖に流れ込む岩盤の成分で白く見えるのが名前の由来らしいですけど、冬場は雪で真っ白です。どこからどこまでが湖なんだか、分かりません。


 湖畔のオスピツィオ・ベルニナ駅は、ビアンコ湖畔の駅。ラックレールを使わない一般的な鉄道(特殊な鉄道と比較して、粘着式鉄道ともいいます)としてはヨーロッパ最高峰の駅になります。
 しんと静まり返った、白の世界です。


 均整の取れた合理的な姿が美しい石橋も、列車に乗りながら見ることができます。
 カーブが続き、見上げれば今通ってきた駅が、見下ろせばこれから進む線路が見える車窓はめまぐるしいです。昨日の氷河急行よりも、短時間で車窓が変化していきます。


 ポスキアーヴォの谷を下ると、麓の街が見えてきました。


 麓に降りれば、あれだけあった雪もすっかり消えてしまい、どことなく春が近い雰囲気も。イタリア語圏に入り、街の雰囲気も変わります。


 麓には小まめに駅が設けられていて、地域の足としても活躍します。


 道路と平行して走っていた線路は、やがて境界が曖昧になり、とうとう路面電車の状態になってしまいました。地元の人は慣れっこなのか、真横を過ぎ去っていく登山電車に驚くこともありません。


 道路と離れた列車は湖畔へと飛び出し、水際をトレースするように走っていきます。山岳区間に負けず劣らず、次々に車窓が展開していきます。
 線路と湖の間には、ところどころにベンチが置かれた散策路もあり、歩く人は気持ち良さそう。


 そしてベルニナ線のハイライトであり、世界遺産のポイントの一つでもあるブルージオのオープンループ橋に差し掛かりました。
 鉄道のループ線はたいていトンネルを組み合わせいることが多く、弧を描いた線路を眺められる場所は、世界的にも珍しいと思います。




 ループ線の役割は、円を描いて距離を稼ぐことで勾配をゆるやかにすること。そして石橋のも、力学に基づいた合理的なものです。
 でもこの美しいループは、作り手の美意識がなければ生まれないものではないのかとも思います。百年前の技術者に、問うてみたいです。


 そして、いつの間にか国境を越えてイタリア領へ。再び路面区間を走れば午後1時、終点のティラーノ到着です。ベルニナ急行併結の列車とはいえ、気分はローカル線鈍行列車の旅でした。


 パスポートのチェックも、管理官の巡回もなかったけれど、ここはもうイタリア。レーティッシュ鉄道の駅舎と隣り合って、イタリア国鉄のティラーノ駅が建っています。発着する列車も、見慣れぬイタリアのものです。
 2時間のイタリア・ティラーノ探検に出発!つづく。