Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

スイスと周辺3国を巡る旅【4-2】標高3,000mは白の世界

2016年02月23日 | ■旅と鉄道

 宿で荷物を整理し、身軽になって再びツェルマットの街へ。相変わらずマッターホルンは雲の中だけど、少しでも近づいてみたいと、ゴルナーグラート鉄道のツェルマット駅へやって来ました。標高1,604mのツェルマットからさらに倍近い、3,089mのゴルナークラートを結ぶ鉄道です。
 通常は往復90フラン(10,740円)というかなりの運賃ですが、ウィンターハイキングチケットなる時期限定?の割引きっぷがあり76フラン(9,070円)に、さらにスイストラベルパスの半額割引で38フラン(4,530円)にまで下がりました。それでも、なかなかの運賃です。


 バーコード式の自動改札をくぐり、電車に乗ります。信用乗車が基本のスイスでも、登山電車となれば改札を行うんですね。運賃が運賃だけに、取るとすればとんでもない額の罰金になりそうです。
 ガイドブックなどで見るゴルナーグラート鉄道の写真は、どこかレトロな旧型電車のものが多いけど、僕らは往復とも新型の電車でした。窓が大きく、2両が大きなホロでつながれた車内は、どことなくトラムを思わせます。


 テーブルにプリントされた沿線案内は、スイスの観光列車のスタンダードです。




 発車すると間もなく、電車はぐいぐいと急こう配にアタックを始めます。トラムのような「すました」雰囲気の電車ながら、向かうは1,000m以上も上の、天空の世界です。
 1駅目のフィンデルバッハ駅で、早くも下車する人の姿が。橋の上に設けられた狭いホームは床が金網で、足場のようです。これなら除雪の手間は省けるかも。


 屋根という屋根が真っ白に化粧したツェルマットの街が、ぐんぐん遠ざかっていきます。床下からは、唸るようなモーター音が響いてきます。


 すれ違う電車には、湘南顔の旧型電車がまだまだ健在。見た目は古くとも、標高3,000mを目指す健脚は変わりません。
 100年以上も前の1898年から、このような場所に鉄道を敷設し、勾配をクリアしてきた先人の努力には頭が下がります。


 線路は、目で見ても分かるほどの傾斜です。歯車をかみ合わせ登っていくアプト式とはいえ、ケーブルカー顔負けの勾配。そのパワーはもちろん、安全に運行する技術も大したものです。
 もちろん雪深い場所だけに除雪の苦労も多いはずで、安易に運賃を「高い」なんて言ってはいけませんね。


 日本では見られないのが、電車をリフト代わりに使うスキーヤーたち。大きなスキー板やスノボを持ち込めるよう、出入り口まわりは広々しており、改札を抜ければそこはゲレンデです。
 酸素も薄く、吹雪のような風雪の中を、子連れのファミリーがスイスイと滑っていくのだから舌を巻きます。


 リフトに乗り継げる駅も。ウインタースポーツ好きの人にはたまらない環境なんだろうなと、職場の先輩や友人の顔がいくつか思い浮かびました。


 スキーヤーの数も半端ではなく、富士山に迫る高度だとは信じられません。より深くなる雪の中、電車はラストスパートをかけます。


 標高3,089mの、ゴルナーグラート駅着。午後4時をまわり、ゲレンデ閉鎖の時間が迫っているようで、スキーヤーたちは改札直結のゲレンデへと飛び出して行きました。


 この駅から望むマッターホルンと氷河の姿は、それは大迫力なのだそうです。運が味方してくれないかと一縷の望みをかけて登った標高3,000mでしたが、周囲は白の世界でした。
 駅に駅員の姿はなく、周囲の人影もまばら。電車が下っていくと、僕ら2人が取り残されたような気分になりました。


 マスコットキャラだけが、スキーをやるわけでもない場違いな観光客2人を歓迎してくれました。


 レストランやホテルも併設した駅だけど、冬の日帰り観光客の受け入れは3時頃までらしく、カフェもお土産屋も店じまいした後。暖を取るすべもないまま、さらに高い場所にある展望台まで足を伸ばしました。高山病の恐れもある高度、息が切れないよう、ゆっくりゆっくり登ります。
 展望台の絵に、雪空の向こう側の風景を想像しました。景色が見られなかったのは残念だけど、異世界に来られたことは満足です。


 5時過ぎの電車で、山を下ります。


 「逆かぶり付き」席に座れば、線路の間に敷かれたラックレールの様子がよく分かります。


 ホーム1面だけの無人駅。急こう配上にあり、ケーブルカーでもないのにホームは階段状になっています。
 切符は途中下車自由とのことで、気ままに降りてみたい衝動にかられますが、取り残されたらと思うと、ちょっとゾッとしました。


 観光地で従事する人の足でもあり、フィンデルバッハ駅では、駅から線路沿いを渡り、細い雪道を家路につく女性の姿が見えました。すごい通勤、すごい日常です。


 ツェルマットの街に戻ってきました。こことて登山電車を登りつめた、標高1,600mの高地なのに、人の営みがある風景になんだかホッとしました。
 夕暮れを迎えて、ところどころで灯るイルミネーションに温もりを感じます。


 中心街にある、マッターホルン博物館へとやってきました。何でも閉まるのが早いツェルマットにあって、19時まで開いている貴重な観光スポットです。
 スイストラベルパスを持っていれば、入場無料という特典もあります。


 博物館のテーマは、マッターホルンに挑んだ人々の足跡と、ツェルマットの観光開発の歴史。展示室は、昔のツェルマットを模したものになっています。
 観光開発も先人達の努力のたまもの。別府にこんな博物館があってもいいんじゃないかなぁと、油屋熊八さんの顔を思い浮かべました。


 地下の博物館を出れば、すっかり夜になっていました。


 駅前のCOOPで明日の買い出しをして、ホテルに戻ってきました。ホテルも、テラスに飾られた電飾がいいムードです。


 今日はヨメさんの誕生日。ちょっと贅沢して、夕食はホテルのコースディナー(65フラン=7,750円)を食べることにしました。
 レストランをのぞいてみると、紳士淑女ですっかり満席。断られるかなと覚悟しかけたら、ロビーの席を案内してくれました。シックなバーに隣り合い、キーボードの生演奏もあって雰囲気は上々です。


 料理も、いい素材を使っているのが分かります。乳製品を使ったソースもさすがにおいしくて、大満足。バースデーディナーとして申し分なしです。


 部屋に戻り外を見れば、雪が強まってきました。明日の出発は朝早いのですが、マッターホルンは姿を見せてくれるでしょうか。
 音をすべて吸い込むような山間の夜は、静かに過ぎていきました。

スイスと周辺3国を巡る旅【4-1】2階建て食堂車でツェルマットへ

2016年02月23日 | ■旅と鉄道

 旅は、4日目の火曜日。「いつもの」朝ご飯をいただきます!乳製品はもちろん、マーガリンも口当たりが柔らかくておいしいです。朝から食が進みます。




 今日から3日間は、スイストラベルパスを使ったスイス観光列車の旅。頼りになるエリー&マヌやんを離れての3日間、さてどんな道中になることやら。大きな荷物は家に置かせてもらえたので、バックパックに3日分の荷物だけを背負って、身軽になって出発です。
 スイス国内のほとんどの鉄道、バスが載り放題になるスイストラベルパスは、チューリッヒに到着した時に駅で購入しておきました。日本国内の代理店でも扱っていますが、手数料がかからない分、到着してから買うのがお得です。


 ケンプラーテン駅から、まずはSバーンに乗ってチューリッヒへ。パスは1等車用にしたので、昨日までは指をくわえて眺めるだけだった1等に、大手を振って乗ることができます。
 ゆったりした席はもちろん、空いているので、途中駅からでも座れる安心感があります。


 チューリッヒでは例によって地下から地上に大移動して、インターシティのブリーク行きに乗り換え。外観はSバーンと共通の塗装、2階建てなのも同じなのであまり車内にも期待していなかったのですが…


 さすがはインターシティの1等車、3列の座席は、一段とゆったりしています。リクライニングはありませんが、乗り心地は快適そのものです。
 スイス・ドイツの列車は、有料で席を指定することもできますが、指定を取らずに乗るのが一般的。指定として売られた席には席番に赤い印が入っているので、それ以外の席に座ればいいというシステムです。常磐線の「ひたち」「ときわ」に近いやり方ですね。


 1等、2等とも車内にはこんなソファのスペースも備えています。席番は割り振られているので、混雑時には座席、空いている時はくつろぎの場として使えそうです。
 「かもめ」のデッキ周りにあるコモンスペースも同じ発想で、ここでも“水戸岡デザイン“のプロトタイプを発見したような気分になりました。


 模型のような列車群を眺めながら、大都市・チューリッヒを離れていきます。途中ベルンまでは、2日目にICEで来た道を戻る格好です。


 1等はゆとりがありましたが、2等はソファスペースまで埋まる混雑。とはいえ、向かい合わせ席の相席をえり好みしなければ座れるレベルで、「スイスでは基本的に指定不要」という考えは間違ってないと思います。
 同じく混みあっていた食堂車も、飲み物だけで座席代わりに使っていた人がベルンでどさっと降りたのでがらがらになったので、早めのランチにしてみました。ベルンの人口は約13万人とはいえ、スイスでは4番目の都市。主要駅なのですね。




 ドイツと同様、食堂車の文化を大事にしているスイス。2階建て食堂車だったのは、嬉しい想定外です。十数年前に消えた100系新幹線以来で、なんだか懐かしくなりました。
 僕はボロネーゼパスタ(17.9フラン=2,140円)、ヨメさんはフェタチーズパスタ(16.9フラン=2,020円)をオーダー。高めに感じますが、スイスの一般的な外食の費用と比べれば「ちょっと高め」のレベルだと思います。


 「パスタ」と言って、「スパゲティ」が来ないのはさすがにヨーロッパですね(笑)。2階からの景色を眺めながらのブランチにアフターコーヒー(4.6フラン=549円)、最高の味でした。


 同じ車両の1階にはビストロコーナーもあります。食堂車より、もう少し気軽に立ち寄れる雰囲気です。


 内陸に入り標高が上がるにつれて、雪を頂いた山との距離も近くなっていきます。静かな湖、のどかな田舎町の風景、すべて目の前に広がる現実です。


 フィスプ駅で、ツェルマット行のレギオ(普通列車)に乗り換え。


 普通列車とはいっても、一等車にはパノラマ型も連結されていて嬉しくなります。


 パノラマ車の「こだわり」が見えるのは、車端部にあるクロークコーナー。窓際にかけられた服が、車窓を邪魔しないための配慮ですね。荷物は座席間の隙間や、座席の下に入れることができます。
 外の空気を吸いたくなったら、二等車の自転車コーナーに行けば遠慮なく窓を開けられるのもいいところです。


 ツエルマットまでの道のりは、1時間少々。この間になんと、標高670mから1604mまで、一気に上がっていきます。
 急こう配に対応すべく、レールの間にギザギザの3本目のレールを敷き、車両の歯車とかみ合わせて上るアプト式を採用。日本国内だと、大井川鐡道井川線でしか見られない方式です。


 スイス入国以来、予想外の暖かさに拍子抜けでしたが、道中も半ばからは雪景色になってきました。標高の差を、如実に語る車窓です。


 ツェルマットの1駅手前、ティッシュは大きな駅。街の規模は小さいのですが、ツェルマットは排気ガスを出す乗り物が禁止されているので、マイカーで来た人はここでパーク&ライドするのです。1駅間にはシャトル電車が頻発しているので、レギオに乗ってくる人はいません。
 コース終盤の上り勾配を超えると、三角屋根に雪を頂いた家々が見えてきました。


 スイスでも有数の山岳リゾート地、ツェルマット着。赤い電気機関車、お疲れ様でした。


 ホテルのチェックインの時間まで間があったので、まずはツェルマットの街を散策。目抜き通りには店やレストランが並び、歩く人も多く、あれだけの険しい道を超えてきた街だとはにわかに思えません。
 後方から音もなく近づいてくる電気自動車だけが、ちょっと違う街であることを知らせてくれます。


 名峰・マッターホルンがよく見え、日本人がよく訪れることから「日本人橋」とも呼ばれる橋へ。残念ながらマッターホルンは、雪雲の中です。まだ始まったばかりの1泊の滞在、あきらめません。


 本日の宿・バジェットルームへ。チェックイン手続きはベストウエスタン・アルペンリゾートホテルへと案内されていたので、まずはそちらを目指しました。実は予約表をよく読んでおらず、バジェットルームが見つからないと焦っていたのはここだけの話…。
 アルペンリゾートホテルそのものは、山小屋風で山岳リゾートにふさわしい雰囲気です。


 フロント、ロビーもクラシック調で、フロントの女性も笑顔が素敵です。高いんだろうけど、できればここに泊まりたかったなあと思っていたら、部屋は同じ建物の2階とのこと。
 それはそれはと思いながら、部屋に入ってみたところ…


 あれまあ、なんともいい雰囲気のお部屋。広々したベッドに、リビングスペースもゆったり。2人じゃもったいないほどです。


 謎のシングルベッドルームまで(笑)。


 「眺望なし」の条件通り、マッターホルンこそ見える方角ではなかったものの、テラスも広々としています。ホテル、ペンションが並ぶ雪景色も、悪くありません。これで「眺望なし」とは、さすが名だたる景勝地です。
 これで1部屋180フラン=21,480円。場所を考えればお値打ちでしょう。つづく。

スイスと周辺3国を巡る旅【3-2】ラッパーズヴィル夕暮れドライブ

2016年02月22日 | ■旅と鉄道

 ところでチューリッヒではトラムが充実していましたが、ザンクトガレンでは軌道が見当たりません。その代わりスイスの街としては珍しく、大通りの上には電線が張り巡らされています。その正体とは…?


 トロリーバスです。蓄電池ではなく、架線から集電を行う昔ながらの方式の電気バスで、日本では立山黒部アルペンルートの2路線でしか見られません。
 ザンクトガレンでは2両連接、長いものだと3両連接のバスもあり、トラムに負けない輸送力と存在感を発揮しています。


 パスの適用範囲だったので、3バス停先まで試し乗りしてみました。長い連接車での運行を可能にしているのが、やはり信用乗車方式。3つの扉から乗り降りできる分停車時間は短く、日本のように運転士が運賃を受け取っていたら、ノロノロになるだろうなと思われます。
 乗り心地自体はバスそのものだけど、響いてくるモーター音は電車のそれ。立山と同じで、なんとも不思議な感覚です。


 一部にはバス専用道もあり、ディーゼルエンジンの黄色いポストバス(郵政事業部運行のバス)も共用していました。




 3時の列車で、ラッパーズヴィルへと戻ります。


 帰路の列車はリニューアル車で、やさしい色使いの車内に好感が持てます。2等車のクロスシートながら、すわり心地もなかなかです。
 大学の下校時間に重なったらしく、途中駅からは大勢の若者が乗ってきて賑やかに。やはり観光列車というより、日常の足の雰囲気が強いです。


 しかし車窓はスイス。波静かなオーバー湖の湖畔で憩う人々を、うらやましく思います。


 ラッパーズヴィルまで戻り、エリー&マヌやん宅まではバスで戻ることに。ラッパーズヴィルはバス停にもバス車内にも券売機はなく、乗車時に運転士に申し出てチケットを買うというやり方です。


 チケットの発行がある分、現金を放り込めば済む日本の先払い方式より、ずいぶん時間がかかります。ただ回数券やパスを持っている乗客がほとんどなので、さほど支障はないのでしょう。
 街によってやり方がだいぶ違うので、パスを持たない旅行者にはなかなかハードルが高いです。


 夕方は買い物に行くついでに、マヌやんに近所をぐるぐるとドライブしてもらいました。
 立派な高速道路には料金所がありませんが、フリーウェイというわけではなく、年間の定額制です。証明のステッカーがなければ罰金というから、これも信用乗車の一種かな? 料金は1年で数千円と安く、それでも渋滞しないのは公共交通が充実しているから…という理由もあるだろうけど、絶対的な人口の少なさも寄与していそうです。


 料金所がない以外、高速道路は日本と同じような雰囲気でしたが、一般道はだいぶ違います。最大の違いは、交差点のほとんどがロータリーで処理されていること。ぐるぐる回る車列に入るのは「集団縄跳びに飛び込むようなもの」で、慣れないと怖そうですが、地元人はスイスイと出入りしていきます。これなら信号待ちより早そう。 
 背後のガソリンスタンドはビルの1階に併設されており、これもよく見かける光景です。スーパーに併設されているところも多く、安売り商品の一つのようなノリなのでしょうか!?


 湖面へ続く道!


 チューリッヒ湖対岸・フライエンバッハの大型ショッピングセンター、シーダム・センターへ。スイスの2大流通大手、COOPとMIGROという2つのスーパーが呉越同舟しているのは、日本人の感覚から見ると新鮮です。九州で例えるならば、イオンとゆめタウンが入居しているようなもの!?
 リンゴの祭りがあるらしく、館内はリンゴのオブジェがあちこちに飾られていました。


 さすがスイス、乳製品の品揃えがすごい。チーズだけで、もう何十種類も揃っています。何でも高いスイスにあって、比較的割安でもあります。チョコレートの種類も、かなりのものでした。
 ドイツと同様、レジの人は座って対応です。


 オーバー湖とチューリッヒ湖の間を島伝いに渡って、ラッパーズヴィルへ戻ります。広いオーバー湖・チューリッヒ湖で、対岸に渡るルートはこれだけなのに2車線しかなく、夕方とあって渋滞ぎみ。
 日本だったら4車線、韓国だったら6車線くらいにしそうな道路ですが、平行するルートの電車は頻発運行で、時間が読めます。


 今夜のご飯は、買い出して来た材料でチーズフォンデュを振舞ってもらいました。日本のものより、お酒をぐっと効かせた感じ。また具も、野菜や肉は使わずパンオンリーというのが正統派なんだそうです。
 お酒通のマヌやんのお父さんも太鼓判を押す、スイス産の白ワインも合わせて、いい気分に。時差ボケも次第に修正されつつあり、寝落ちすることなく3日目の夜を満喫できました。

スイスと周辺3国を巡る旅【3-1】ザンクトガレン日帰りトリップ

2016年02月22日 | ■旅と鉄道
 昨日からお邪魔している街、ラッパーズヴィル。正確にはラッパーズヴィル・ヨーナと称します。80年代にラッパーズヴィルとヨナが合併して成立した市で、ネーミングの図式は山陽小野田市と同じですね。
 エリー&マヌやんの新居は旧ヨーナにあるのですが、飛び地状になっていて、地元の人には「そこってラッパーズヴィルとでしょ?」と認識されている場所だとか。とういわけで本稿でも、ラッパーズヴィルで通します。


 そのラッパーズヴィルにあるエリー&マヌやんの新居は、ケンプラーテン駅近くの賃貸住宅。1階がガレージで、傾斜地を生かし、2階の共用玄関からも直接出入りできるようになっています。


 車窓から見るスイスの集合住宅は、どこも広々としたテラスを持っています。テーブルや観葉植物を置いて、もう一つのリビングとして使っている家も多く、ゆとりがうらやましい限り。
 エリー&マヌやんの家は地上レベル(正確には地下駐車場の上)なので、テラスも中庭に面してます。中庭に面した3軒のテラスはお互いが丸見えの状態で、まさに向こう3軒両隣。共用の中庭で一緒にバーベキューでもするの?と聞いてみたら、そんなノリではないとのこと。つかず、離れずの距離感のようです。


 寒いスイスの冬ですがエアコンはなく、床暖房の熱で暖を取っています。その床とて韓国のオンドルのように熱くはなく、ほんのり暖かいといった程度。
 窓はペアガラス、その外側にはシャッターが付いていて、これが高い断熱性を担保しているようです。外側を見ただけでは分からないけど、壁も断熱材をしっかり入れてあるのでしょう。冬の間は床暖房を付け放しにしているそうだけど、エネルギー消費は思いのほか、少ないのでは?


 お隣のアパートとの仕切りには、金網のかごに自然石を詰めた「布団かご」を立てているのがユニーク。河川の護岸材ですが、こんな使い方もあるんですね。ツタを這わせているので、夏場には緑の壁になるのだとか。
 街中の住宅街でも何箇所かで見たので、スイスではメジャーな使われ方なのかも。


 ラッパーズヴィルの中心部までは歩いて20分ほどの距離があり、天気もよいのでぶらぶらお散歩。タイ料理やさんのクロイツ通りは、街中までストレートに通じていますが、それにしては通行量が少なめです。
 住宅街を貫くこの道路、沿道の住民の車と、路線バス以外は通行禁止なのだとか。住宅街の安全性が増すのはもちろん、バスは渋滞に巻き込まれないし、近隣の人が沿道を訪ねる際には、バスが一番便利な交通手段ということになります。


 中学校。街区との垣根がなく、公園の中にでもあるかのようです。以前、日本も「開かれた学校」を志向していた時期がありましたが、実際目にしてみるまで、なかなかイメージができていませんでした。


 路地を抜け、チューリッヒ湖畔へ。その名の通りチューリッヒまで続く湖で、鉄道と共通のチケットで乗れる航路もあるのだとか。
 夏は湖水浴を楽しむ人で賑わうんだそうです。雪景色もきれいだけど、夏場にも来てみたいな。


 湖畔を歩いて、ラッパーズヴィル駅の近くまで出てきました。湖を渡る橋は、鉄道・道路が平行。山々を背景に、湖の上を電車が渡っていきます。


 湖畔にはホテルが集まり、ちょっとした観光地風。日本のガイドブックには載っていない街ですが、ドイツあたりからだと観光に訪れる人も多いそうです。
 あくせくせず、湖の風景を眺めたり、旧市街をぶらぶらしたりしながら、ゆったりバカンスする姿が目に浮かびます。


 玄関口となるラッパーズヴィル駅も、お城のようなたたずまいです。
 今日の目的地、州都のザンクトガレンへのチケット(40フラン=4,770円)を購入。単純往復でも安くなるということで、勧められるままにフリーきっぷを買いました。実際どれくらいトクになっているのかは、人任せなのでよく分かりません(笑)。


 ラッパーズヴィルは、4方向からの線路が集う交通の要衝。各方面からの列車が、ひっきりなしに行き交います。


 ザンクトガレンへは、民鉄のフォアアルペン急行が結びます。テーブルには沿線の名所が描かれ、一応観光列車という位置付けらしいですが、クロスシートが並ぶだけの車内は庶民的です。
 クロスシートに向き合っていると、ローカル列車の旅気分も高まってきます。




 ザンクトガレンは州都ということもあり、外国人がラッパーズヴィルに住むとなれば出向かねばならない場所。しかし峠越えのある道路では時間がかかり、トンネルで貫く列車の方が便利で早いのだそうです。
 そう書くと車窓の楽しみがなさそうですが、そこはスイス。オーバー湖から牧草地帯、雪を頂いた山々と、それはもう絵に描いたようなスイスの風景が広がります。


 渓谷を渡る橋はアーチ橋のようだけど、当の列車からよく見えないのは残念。影でその形を追いました。


 1時間あまりで、ザンクトガレン駅に到着。チューリッヒ方面からはSBB(スイス国鉄)の列車が頻繁に走り、長距離特急(インターシティ)から近郊列車まで、車両のバラエティも豊かです。


 駅の外には別棟の駅舎があり、短編成の赤い電車が発着していました。スイスには狭い国土に60社もの私鉄があり、フォアアルペン急行のような幹線級の列車もありますが、日本のローカル私鉄のようなたたずまいにも惹かれます。



 旧市街をお散歩。こんな道なら、歩いているだけでも楽しいです。


 ザンクトガレンの見所といえばここ、ザンクトガレン修道院。修道院と付属図書館は、世界遺産にも指定されています。


 中でも付属図書館は、中世の貴重な文献を数多く抱える歴史的な図書館(入場料12フラン=1,430円)。図書館の内部そのものも、つややかで、細やかな装飾に圧倒されます。一つ一つの装飾を観察していたら、それこそ1日あっても足りない「日暮の図書館」です。
 内部はやはり撮影禁止だったので、玄関の扉を1枚だけ。


 同じく世界遺産の修道院は、厳かというよりも華やかな雰囲気を感じます。
 こんな歴史的な建物なのに、現役の学校が入っているのが、なんとも面白い光景。図書館も修道院も、窓の外にはバスケに勤しむ学生たちが映ります。


 修道院の廊下は、観葉植物で飾られていました。


 お昼もだいぶ過ぎたので、街へと戻りましょう。
 イースターを控え、ドイツでもスイスでもいたるところにシンボルのうさぎが飾られています。特にスーパーのお菓子コーナーやお菓子屋さんの店先には、色も大きさもとりどりのウサギたち。日本に入ってきた西洋の風習は多いけど、これは見慣れません。そのうち流行ったりして。


 物価の高いスイスでも、特に外食費は割高。それは現地人にとっても同じことで、わざわざ店に入ってご飯を食べるというのは一種、贅沢なことのようです。
 というわけで、街角のお店でテイクアウトして立ち食い。この構図の写真を撮っていたら、現地のマダムから微笑まれてしまいました。
 つづく。

スイスと周辺3国を巡る旅【2-2】チューリッヒからラッパーズ・ヴィルへ

2016年02月21日 | ■旅と鉄道

 大時計の前で待ち合わせたのが、近郊のラッパーズ・ヴィル在住のエリー(日本人)とマヌやん(スイス人)。我ら夫婦の共通の友人であるエリーの嫁ぎ先を訪ねるのも、今回の旅の大きな目的の一つでした。
 再会(といっても先月福岡で会ったばかりですが)を喜びつつ、まずは地下のロッカー(6フラン=716円×2)に荷物を預け、街歩きに出発です。


 近郊で有効の1日乗車券(26フラン=3,100円)を手に、まずは近郊電車のSバーンに乗車。1日乗車券はずいぶん高い気もしますが、もともとスイスの交通費は高めなので、すぐに元は取れてしまうのだとか。
 1駅のハートブリュッケで下車し、青空と予想以上の暖かさに驚きつつ歩くこと10分。チューリッヒデザイン美術館にやって来ました。


 スイスと世界のデザイン変遷史が分かる博物館で、特徴的なのは触ることができること。特に工業製品は、さわって分かる良さというのもあるので楽しめました。
 館内は撮影禁止だったので、ホールを1枚。変哲もない蛍光灯も、リズム良く並べればデザインになることも分かりました(笑)。


 トラムに乗って市内へ。市営のトラムで、市内には13系統の路線が張り巡らされているそうです。
 すべてが低床の新型車というわけではなく、「青胴」の旧型車も走っていて味があります。街中を貫通する鉄道橋の橋脚も石積みで、歴史ある街並みにマッチしていました。




 旧市街で下車。細い石畳の路地が網の目のように伸び、テレビの中で見る世界のようです。
 開いている店が少ないのは、日曜日だからだとか。稼ぎ時に休むなんてと思いますが、日本も昔ながらの商店街だとそうですよね。休むべき時はしっかり休むのが、スイス流のようです。


 グロスミュンスターの大聖堂。11~13世紀ころの建築物で、塔は18世紀に再建されたものだとか。再建ですら18世紀なのだから、歴史の重みが感じられます。内部の撮影は禁止でしたが、ステンドグラスがきれいでした。




 聖堂の前から見下ろした、リマト川沿いの風景です。川沿いに立ち並んだ古い建築物を背景に、時間の流れを楽しむ人々。ゆるやかに走り去る、丸みを帯びたトラムがよく似合います。


 7系統が集うトラムの中心駅、ベルビュー。いろんな方向から、ひっきりなしに電車がやって来ます。これは日本最大の路面電車の街、広島でも見たことがない風景です。
 70年代には地下鉄の計画もあったというチューリッヒですが、住民投票でトラムの存続へと舵を切ったという経緯があります。それだけにトラムの存在感と信頼は、大きなものがありそうです。


 電停を抜けると、セクセロイテン広場に出てきました。いかにも街の中心といった広場で、地べたに座っておしゃべりしている人々の姿が印象的です。芝生なら不自然ではないのでしょうが、硬い石畳の上というのが面白いところ。
 屋内と屋外という違いはありますが、台湾・台北駅の大ホールに座り込む旅行者の姿を思い出しました。


 広場最寄りの、Sバーンのシュタデルホーフェン駅。駅舎は19世紀の歴史あるものですが、ホームはコンクリートと鉄骨でデザインされた現代的なもので、それが不思議とマッチします。
 チューリッヒ駅までは、Sバーンで1駅。ここまですべてマヌやんの先導で電車に乗ってきましたが、適宜Sバーンとトラムを使い分けていて、効率的ながらも楽しいコースでした。


 チューリッヒ駅のロッカーから荷物を出して、再び地下のSバーンのホームへ。二人の住む街、ラッパーズ・ヴィルへはS5、S7の2系統の電車がありますが、最寄り駅のケンプラーテン駅を経由するのはS7系統のみです。
 Sバーンは2階建て車両ばかりで、電車タイプのものと、機関車につながれた客車タイプの2種類があります。今度のSバーンは、後者でした。


 S7系統はチューリッヒ湖の湖岸を走り、夕暮れの時間とあって、きれいな風景を眺めることができました。30分毎の電車ですが、ラッパーズ・ヴィルまで行く場合でもこの系統がオススメとのこと。


 混み合っていた車内も、郊外に向かうにつれて空いてきました。駅前にはバスが待機していて、列車に接続してすぐさま発車していきます。
 Sバーンも改札フリーの信用乗車方式なので、駅と街区を隔てるものがありません。バスと電車の乗り継ぎは、数歩で済んでしまうというケースもありそうです。運賃はなかなか高めですが、利便性の高さには目を見張るものがあります。


 車内のモニタでも、バスの接続状況は一目で分かるようになっていました。


 ケンプラーテン駅で下車。片面ホームがあるだけの、住宅街の中の無人駅です。


 駅からお宅までは、歩いて5分といったところ。引っ越して間もない新居です。広々としたリビングにアイランドキッチン、いいなあ。
 さっそくスイスの郷土料理・ラクレットで、もてなしてもらいました。ジャガイモに溶かしたチーズを絡めて食べる、いかにもスイス料理といったメニューでおいしかったです。ただ、まだ時差ボケの解消には至っておらず、食事中にもうつらうつらする有様。まだまだ長い旅、早寝の失礼をお許し下さい!

スイスと周辺3国を巡る旅【2-1】国際特急でスイス・チューリッヒへ

2016年02月21日 | ■旅と鉄道
 新婚旅行の2日目は、ドイツ・フランクフルトから高速列車ICEでスイス・チューリッヒへと抜け、ラッパーズウィルの友人宅へお邪魔するというプラン。憧れのヨーロッパの長距離列車と、遠き地に嫁いだ友人の様子が楽しみです。
 昨夜は時差の影響もあって10時前には床に就いたので、5時には目が覚めてしまいました。せっかくの異国での貴重な時間。少し明るくなってきた7時を待って、フランクフルト中央駅まで朝の散歩に出かけてみました。


 さすがヨーロッパの大都市で、Sバーン、Uバーンと共存して、網の目のように路面電車が張り巡らされています。しかも長い編成の電車が、頻繁にすべるように走っていく姿は都市景観として美しいです。日本で同じような風景は、広島でしか見られません。
 メッセ周辺はコンベンション地区だけあって、緑地も歩道もきれいに整備された気持ちのいい散歩道。しかしそこを抜けた駅までの道は、開いている店もないし、人通りも少なくて深夜のよう。落書きだらけの廃ビルもあって、ちょっと殺伐とした雰囲気に怯えました。


 フランクフルト中央駅へ。昨日は足早に通り過ぎるだけだった駅のホームを、つぶさに眺めてみました。ICE3に赤いレギオ。鉄道雑誌の中でしか知ることがなかったドイツの鉄道の世界が、今目の前に広がっています。
 日本では主に私鉄の主要ターミナルで見られる行き止まり式ホームですが、ヨーロッパでは長距離路線の途中駅でも取り入れられています。折り返しに時間がかかる、進行方向が変わるなど運転上のデメリットはあるものの、駅の出入り口からフラットで乗り降りできるのは便利です。


 特に信用改札のヨーロッパでは、駅のホームが街区と一体になっていることもあって、切符さえもっていれば街角から飛び乗れる感覚があります。
 そしてホームに入れば、発車を待つ列車をズラリと横から眺めることができます。なんとも旅情を感じさせる光景です。




 中2階から俯瞰した様子も、「旅立ちの舞台」に相応しい雰囲気。同じアジア系の観光客も、カメラを向けていました。


 ただ駅前に出てみると、ここもなんだか雰囲気が悪い。人通りは少ないし、荒れている酔っ払いの集団もいて、朝というよりは昨夜の続きといった感じです。街中まで散策する腹積もりでしたが、まだまだ慣れぬ異国の地、早々に切り上げることにしました。
 フランクフルトはまた最終日の昼に来る予定なので、その時の楽しみにとっておきましょう。


 ホテルまでの帰り道はUバーンではなく、トラムに「体験乗車」してみることに。券売機にはメッセまでの口座があったので、迷うことなく買えました。
 運賃は、市内均一運賃より少し安い1.8ユーロ(236円)。短距離区間の特割的なものかなと思いましたが、真相やいかに。


 熊本市電の低床電車にも似た、5車体連接の電車に乗ってメッセへ。日本でも低床電車が一般的になってきましたが、熊本、広島の初期の電車はヨーロッパからの輸入車だったこともあって、「乗り慣れた」乗り心地感でした。
 十数年前、熊本の低床電車に初めて乗った時は、あまりの乗り心地の違いに「これが路面電車先進国の電車か!」と驚いたものですが、ようやく本場の電車に乗ることができました。


 ホテルで再度荷造りに勤しみ、チェックアウトしてUバーンのメッセ駅へ。中央駅に戻ります。地上に置かれた券売機で切符を買って、エレベーターで直接ホームへ下れる便利さも、信用改札ならではです。
 ところがホームに下りても、人の気配なし。電光掲示板もなにやらドイツ語のインフォメーションが流れるだけで、発車案内がありません。理由は分からないけど、電車は来ないんじゃないかというヨメさんの直感に従い、地上のトラムに転進しました。


 合理的な信用乗車も、いざという時に聞ける駅員がいないのは困ったものだと思いつつ、無事に中央駅へ。スイス・クールまで直通のICEは、すでにホームに入っていました。切符はネット予約で発券済みなので、そのまま乗れてしまうのは気楽なところです。運賃も定価114ユーロのところが、早割で69ユーロ(9,040円、座席指定料が別途4.5ユーロ)と割安になりました。


 今回乗車したドイツの高速列車ICEは、もっとも初期のICE1と呼ばれるタイプでした。1998年には脱線事故で100人を超す死者を出した車両でもありますが、事故の原因となった車輪はその後交換されているので、一応は安心して乗れる列車です。
 僕らは2等席。デッキと客室はガラス戸で仕切られ、開放感がありますが、室内は荷物置き場などで適宜空間が仕切られていて、落ち着きにも配慮されています。


 僕らは通常の座席を予約しましたが、ヨーロッパの伝統的なコンパートメントタイプの客室も、各車両に健在。ここは座席も3列なので、ゆったり過ごすことができそうです。
 九州の787系(昔のつばめ)や、リニューアル前の883系(ソニック)との共通項も見出すことができる設計思想。車両デザイナーの水戸岡鋭治さん、ヨーロッパの列車とその「あり方」には大きな影響を受けたんだろうなと、遠き地で感じました。




 ドイツ版新幹線とも呼ばれるICEですが、全線が高速専用線というわけではなく、一部は在来線に乗り入れています。スイス国境までのバーゼルまでも、高速区間はざっと半分といったところです。
 もっとも在来線区間のスピードも日本のそれよりだいぶ早く、乗客の待つホームを高速で通過していきます。瀟洒な住宅街の中も同じレベルの高さでかけ抜け、車窓を見ていて飽きません。全線が高速新線になればもっと早くなるのだろうけど、旅で乗る分には面白いです。


 郊外に出れば、北海道を思わせる大規模な穀倉地帯が広がります。工業国のイメージがあるドイツも、食料自給率は9割以上。大規模な国土が、狭い島国に住む身にはうらやましくなります。


 ICEの魅力は、なんといっても本格的な食堂車をつないでいること。鉄道ファンとして、これを体験しないわけにはいきません。お昼時を避けて11時に行ったおかげで、席は空いていました。
 きちんとしたテーブルと椅子はレストランの雰囲気。高い天井には天窓も付いていて、明るく開放感がある車内です。メニューを見ながらあれやこれや悩むのも、また楽しい時間です。


 午前中なので、お手頃なブレックファースト系のメニューもありましたが、やはりドイツに来たからには本場のビール(300mlで3.3ユーロ=432円)に、ソーセージ盛り合わせ(7.8ユーロ=1,020円)でしょう!流れる車窓を眺めながらの生ビールは、最高の一言。夢でした、夢かないました!
 ビールの2杯目も300mlを頼んだつもりだたのに、500ml(3.9ユーロ=511円)が来てしまったのは天の助言でしょうか(笑)。それにしてもビールの安さは、際立ちます。


 厨房を挟んで反対側は、カフェスペースになっています。こちらも、席を離れてくつろぐには良さそうなスペースですね。
 ただレストラン区画も、飲み物だけの利用お断りというわけではないようで、コーヒー1杯で席を立っていく人の姿も見られました。


 ドイツ鉄道と、スイス国鉄の2つのバーゼル駅を通過すれば、スイス入国。とはいえ、入国審査はおろか、パスポートのチェックすら行われません。スイス警察の人が巡回したのが目立ったくらいで、県境をまたぐくらい、本当にあっけない国境通過でした。



 ドイツの車窓ものびやかでしたが、スイスに入るといっそう のどかになってきました。山や畑の中など、一体どこから歩いて来たの?と思いたくなる場所でも、散歩する人の姿が目立つのは大きな変化です。歩きたくもなる風景ですよね。
 意外だったのは、あちこちの建物や壁面、時には列車の車体にまで「アートされた」落書き。ドイツでもその多さに驚いたけど、スイスに入ってもその数は減りません。イメージしていた牧歌的な風景の中に、イメージしていなかったポップなペイントが踊ります。


 4時間の旅もあっという間に終え、チューリッヒ駅に到着。永世中立国でEUにも加盟していないスイスですが、駅のスタイルはドイツと同様です。近郊電車と長距離列車が入り乱れた発車案内が、旅情を誘います。
 後編に続く。

スイスと周辺3国を巡る旅【1】フランクフルトへの長い1日

2016年02月20日 | ■旅と鉄道
 昨年7月に入籍、10月に式を挙げたものの、諸般の事情で新婚旅行が延び延びになっていた我々夫婦。
 年も明けてからJALのホームページを見たところ、2月中まではディスカウントマイルが適用になり、ヨメさん手持ちのマイルでフランクフルトまで往復できることが分かりました。これを逃せば、いつ行けるか分からない!

 決まれば早い旅の準備。さっそく仕事の調整から下調べ、予約へと動き、スイスと周辺のドイツ、イタリア、フランスを巡る旅が完成しました。
 僕もヨメさんも初めてのヨーロッパ、不安もいっぱいだけど、どうにかなるさ!旅好き夫婦の人生最大、最長期間、最長距離の旅の幕は、2月20日に切って落とされました。


 前日金曜日の飲み会の後遺症を引きずりつつも、出発当日は5時半起き。福岡から羽田まで早朝の飛行機で飛び、羽田~成田間はリムジンバスで移動です。3,100円とやや割高ですが、荷物は出し入れしてくれるし、席はゆったりしていて充電用のコンセントまで装備しています。
 しかも渋滞情報を見ながら最速ルートを掴んでくれるので、早い早い。乗り継ぎ時間が3時間しかないので気を揉んでいたけど、1時間と少しで、第2ターミナルへと連れて来られました。


 1階のグローバルwi-fiで、でヨーロッパ各国対応のwi-fiルーターをレンタル。10日間1万円弱で、2人分の通信手段を確保です。
 エスカレーターを上がって、出発ロビーへ。福岡空港の国際線も地方空港としては多いですが、やはりニッポンの玄関口の本数は段違い。壁一面に掲げられたフライト情報に、圧倒されてしまいます。見知らぬ異国への旅立ちの興奮も、ぐんと高まってきました。


 そういえば成田へ帰国したことはあるけど、出国するのは今回が初めて。博多港や福岡空港の出国に慣れた身としては、審査場の自動審査機が目新しいところです。今後そうそう成田を使うことはなさそうだし、時間もないので登録は見送りましたが、常連さんには便利なんだろうな。
 免税ゾーンには、こんなお店も。AKIBAは、もはや世界共通語!?


 11時間のフライトに備え、履き物をスリッパに履き替えておきます。
 12時40分に搭乗開始。広々としたブースがまるでネカフェのようなビジネスクラスを、「いいなあ」と指をくわえながら眺め…


 プレミアムエコノミーに「ウン万円でこれなら、出してもよかったかなあ」とちょっと後悔しつつ…


 たどり着いたのはエコノミークラス(※ここまでの機内の写真は、フランクフルト到着時に撮影)。エコノミーとはいえ、国内線のそれとは比べ物にならないゆとりがあります。JALご自慢の、世界最大級のゆとりがあるエコノミークラスです。
 しかも、当初は内側にしか取れなかった席を、赤ちゃんの隣であることを条件に通路側に変えてもらったら、最前部の足元が広い席でした。かわいい赤ちゃんとの旅も楽しいものなのに、広い席まであてがって頂き、感謝、感謝。


 水平飛行に移ると、壁に固定できる赤ちゃん用ベッドがセッティングされ、こういう理由で広く作ってあったのかと感心しきり。
 そして、昼飯を抜いていた身にはありがたい機内食の登場。上げ膳、据え膳で11時間なんだから、エコノミーといってもこんなに贅沢なことはないですよね。


 ビデオモニタで「鉄道員」を見たり、ゲスの極み乙女のニューアルバムを全曲聞いてみたり、機内wi-fiで旅の下調べをしたりしていれば、思いのほか時間は早く流れていきます。
 フリードリンクになるアルコールも、レベルは東北新幹線のグランクラス並み。プレミアムビールにワイン、ウイスキーなどなど、ついつい飲みすぎてしまいます。品がないかなとは思ったのですが、周囲もガンガン空けているので、遠慮のタガが外れてしまいました(笑)。


 とはいえ、さすがに12時間の飛行は体に応え、腰が痛くなりはじめました。トイレの前で屈伸運動しつつ、体をほぐして耐えます。
 到着直前の軽食は、つけ麺でした。醤油系の味とはしばしお別れ、そして音をたてて麺をすすれない文化圏に入るので、ゆっくり、かみ締めるようにすすりました。


 メルカトル正円図法で地図を思い描いていると分かりにくいのですが、ロシアから北欧、ベルリン上空を経由して、フランクフルトに無事着陸。長時間の搭乗が不安でしかなかった初めてのヨーロッパ航路は、揺れも少なく楽しい経験でした。
 新婚旅行らしく、ナショナルフラッグキャリアで贅沢な旅ができてたのも、数年に渡ってコツコツとマイルを貯めていてくれたヨメさんのお陰です。感謝。


 現地時間では夕方5時前なのに、当方の体感時間は午前様。これまで経験した時差といえば中国との1時間が最大なので、8時間というズレにちょっと脳内が混乱します。
 入国審査も、フランクフルトでは理不尽に厳しいと聞く税関審査も思いの他あっさりと抜け、立派な空港ターミナルへと出てきました。ATMで引き出した200ユーロを握り締め、いざ街へと繰り出します。


 フランクフルト空港は、近郊電車のSバーンと、長距離列車の双方が乗り入れていて便利。ただ日本とは運賃制度が異なり、当然日本式の運賃表は見当たらないので、タッチパネル式の切符の券売機を前に途方にくれてしまいました。これと思う切符を購入、案内所で確認を得てから、ホームへと下ります。
 ヨーロッパの鉄道は、いわゆる「信用乗車方式」で改札がありません。階段を下ればすぐさまホーム。やってきた真っ赤な市内方面の電車に乗り込みました。首都クラスの都市近郊電車なのにクロスシートなのは、うらやましいことです。


 北海道のような車窓を見ながら走ること3駅、10分少々でフランクフルト中央駅の地下ホームに到着。宿への最寄駅はUバーン(地下鉄)の沿線なのですが、Sバーンとは地下で直結していないので一旦階段を上がると、中央駅の長距離列車ホームに出てきました。
 これまで何度も本や雑誌で見てきた、ヨーロッパの「中央駅」のたたずまい。旅立ちの匂いにあふれる雰囲気に飲まれ、胸が高鳴ります。


 コンコースも、装飾が施された歴史ある駅舎の広い空間。何時間でも眺めていたくなる風景だけど、眠気もピークに達してきているので宿へと急ぎましょう。


 日本流には「地下鉄」に位置づけられるUバーンだけど、電車は路面電車のようなスタイル。ドイツ鉄道の運営するSバーンも都心では地下を走っており、どちらかというとそちらの方が「地下鉄」のイメージに近い気がします。ここは異国、鉄道システムそのものがガラッと違う感じで、日本に当てはめて考えるのは無理がありそうです。
 宿最寄りのメッセ駅に到着。大きな吹き抜けの空間が広がり、壁面もポップにデザインされていておしゃれ。メッセの名が示す通り、大規模な展示場の最寄り駅になっています。


 地上に出ると、トラムの線路が。芝に覆われた軌道は、公園の一部のようです。


 今日の泊まりは、NHホテル・フランクフルトメッセ。国際的な宿サイト(今回はBooking.comを利用)のお陰で、異国の宿でもオンラインで直接予約できて、ホント便利になりました。


 まだまだ新しいホテルで、快適そのもの。アメニティも一式付いており、立地や物価水準を考えれば、1泊79ユーロ(10,350円:当日の国際キャッシュカードの実勢レート1ユーロ=131円に基づく。以下同じ)はお値打ちです。ただメッセでイベントが行われる際には、グンと高くなるのだとか。


 機内の軽食を食べてから数時間が過ぎて、お腹も空いてきたので宿の外へ。コンビニ的なものは一切見当たりませんでしたが、近所に大型ショッピングセンターを見つけました。
 スーパーも入っていたので、英語もドイツ語もできないけど、勇気を出して買い物にチャレンジ。肉コーナーのサンドの買い方に戸惑ったり、レジの人が座っているのに違和感を覚えたりしましたが、基本的なシステムは韓国のショッピングセンターと同じ。なんとか買い物に成功しました。


 サンドは分厚い加工肉入りで1.5ユーロとリーズナブルです。水は2本で0.58ユーロ(76円)、ビールはさすが本場で€0.75(103円)と思ったよりも安かったのですが、合計額が若干高い気が。よくみると、謎の0.25ユーロ(33円)が3つ加算されていました。
 調べてみると、ドイツでは空き容器に0.25ユーロのデポジットがかかっているのだとか。さすがは環境先進国!感心しつつ、「32時間の1日」はつつがなく幕を下ろしたのでした。つづく。

今年は一味違う!城島酒蔵開き2016

2016年02月13日 | □久留米なう
 すっかり恒例になった、酒どころ・久留米市城島町の酒蔵びらき。城島・三潴エリアの酒蔵が一斉に開放され、メイン会場では飲み比べを楽しめる、左党にはたまらないイベントです。
 もう毎年のように通っているイベントだけど、今年は一味違う試みも目白押し。「春の嵐」の予報もなんのその、1日目の13日(土曜日)に訪ねました。


 しょっぱなから今年の違う点が、西鉄の割引きっぷ。例年だど三潴までの往復運賃で、メイン会場での飲み比べが100円引きになる「酒蔵びらき記念きっぷ」が売られていました。
 ところが今年は、三潴までの往復運賃より安い上に、会場で使える500円商品券が付いた「城島よかとこきっぷ」にパワーアップ!国の交付金を利用した「ふるさと割」の一環です。お得感はあるけど、今年限定だろうな。


 「例年通り」事前の告知はなかったけれど、特急電車は三潴駅に臨時停車。当日の乗客の動向を見ながら、適宜対応していく方針なんでしょうか。
 車内放送では「柳川、大牟田方面へのお客様にはご迷惑をおかけしますが」と付け加えられていたのが、印象的でした。


 いつもの年ならメイン会場行きのバスに乗ってしまうのですが、今年はまず駅から徒歩2分の、杜の蔵へと足を運んでみました。
 時間は9時50分。酒蔵開きスタートから20分しか経たないのに、はやくも酒飲み天国の様相です。


 「今年初」のイベントがこれ、ピチピチ生原酒の飲み比べ券です。参加蔵のうち6蔵で、普段は飲めない、濾過しただけの原酒を味わえます。200枚限定というので気を揉んでいましたが、無事に人数分の6枚をゲットできました。
 お値段は1,500円だけど、よかとこきっぷの割引券を活用して1,000円に。この値段だから、まあ試飲程度のボリュームでしょうねと思っていたら…


 なんなんだこの量は!お猪口ではない、使い捨てのプラ杯になみなみと注いでくれます。しかも度数は15度超え。これを蔵ごとに飲んでいたら、しまいには どうなることやら…
 杜の蔵さんの原酒はしっかり濾過がされていて、このまま商品にできそうでした。強めの1杯を飲み干し、早くも上機嫌です。


 熱が入っていたのが、「8つの会」の会員募集。季節に合わせ会員しか飲めないお酒が送られてきたり、会員限定の招待会に招かれたりと、酒好きの心くすぐるプランです。
 最後に回ってきてたら、酔った勢いで入会してたかも…


 お酒が苦手な人にも、お酒も甘いものも得意な僕のような人にも嬉しい、こんなスイーツも。中のイチゴからはほのかに日本酒が香り、まぁ、おいしかったおいしかった。


 三潴駅からはメイン会場行き直行バス、市役所三潴支所前からは蔵めぐりのシャトルバスが発着します。いずれも運賃無料という気前の良さ。近隣の西鉄バスが総動員され、毎年のことなので、誘導や案内はスムーズです。
 広島の酒祭りだと山陽本線の駅前なので、来場者輸送もスムーズなのですが、城島は鉄道がないのが泣き所。10万人超えの大輸送は、日本最大のバスグループあってこそです。


 旭菊で下車。ここで降りてしまうと、なかなか次のバスに乗れないような気がして、これまで降りたことがなかった酒蔵です。


 酒蔵の中は、なんだかシックな雰囲気。試飲は1杯100円からとリーズナブルです。テーブル席もあって、腰を据えて飲み比べている人が目立ちました。


 外のテントでは、酒造り唄の披露も。出店も何軒か出ていました。


 外に出たらちょうどバスが行ってしまったところで、次のバスまで10分待ちました。
 雨のパラつく天気にも関わらず人出は多く、その次のバスは「積み残し」も発生。ただ旭菊から両隣の蔵までは3km近くあり、少々待ってもバスを使った方が早いと思われます。


 いつもは路線バスの走らない、田んぼの真ん中の道を行くこと5分、次の酒蔵・蔓年亀へ。開放イベントは屋内開催で、雨の天気とあってありがたいです。
 なかなか年季の入った建物で、あまり手が加わっていない雰囲気もいい感じ。


 「濁り酒」に加え、いろいろ飲み比べ初めてしまったので、この辺から記憶が曖昧です。うまかったのは、間違いありません。


 寒い冬にはありがたい、おでんのコーナーも。200円でたっぷり5品入ったおでんは、心底ありがたかったです。


 次の蔵までは1kmほどなので、歩いても大した距離ではありません。歩道はかつての大川軌道跡で、昭和20年代には廃線となってしまいました。
 もともと酒の出荷用に作られた鉄道なので、路線は酒蔵を結ぶようなルートを描いています。西鉄大川線としてでも存続していれば、酒蔵びらきの来客輸送もだいぶスムーズだったことでしょう。


 土手を回って、池亀へ。天窓から光が入る、モダンな雰囲気の蔵が試飲会場でした。
 濁り酒は生ものなので市場に出荷できず、ここでしか飲めないものです。米の粒が残り、スプーンですくいながら味わう「食べるお酒」でした。


 有料試飲の黒麹仕込は、貯蔵年数ごとに味の違いを楽しむという嗜好。一番人気の8年ものは、早々に品切れになっていました。
 まだ午後1時前、それも雨だというのに、酒好きパワー恐るべし。


 ここまで来れば、次の有薫も徒歩圏内。酒蔵開きに合わせてJR九州ウォーキングも開催中で、歩く人はウォーカースタイルの人が目立ちます。
 軌道跡の「ポッポ汽車のプロムナード」は、旧三潴町から旧城島町に入ると、舗装が瓦に変わります。瓦もまた、城島の特産品の一つです。


 有薫は、ヤードが試飲会場。にごり酒は、大きな甕から注がれます。ここも、粒の残る「食べ応え」のあるものでした。


 同行者からドンと純米酒の酒瓶が1本提供され、じっくり腰を据えて飲むことに。その名の通り、独特の薫りがあるお酒を…7人で空けてしまいました。


 千鳥足でプロムナードを歩き、花の露へ。こちらはメイン会場から徒歩圏内ということもあって、毎年来ていた蔵です。
 昨年に続き、車座で座ってモンゴルの伝統音楽・ホーミーを楽しめる「酒の間」が開催されていましたが、今年は残りの2蔵も巡りたいのでパス。2日間来なければ、とてもすべてを見て回ることはできません。


 ギャラリーのような暖かな試飲コーナーで、にごり酒をちびりちびり。


 午後3時に、ようやく城島町の中心部までたどり着きました。
 今年「初」はもう1ヶ所、寒い時期なので熱燗が飲みたい!という声に応えて登場した、パラダイス・お燗リゾートです。あぁ、あったまる~


 全蔵制覇を目指し、メイン会場には目もくれず、支所前から別のバスに乗り継ぎます。


 着いたのが、筑紫の誉。


 こちらも、味わいある濁り酒でした。さすがの我々も、ぼちぼち酔っ払いモード全開です。


 城島支所前でJR荒木行のバスに乗り継ぎ、最後の酒蔵・瑞穂錦へ。久留米住まいの頃は、よく仕込み水を買いに来ていました。うなぎ屋さんもあって、ここだけでも充分楽しめる酒蔵です。
 

 即売場も広々。お土産や、自分の晩酌用の酒を求めるにもよさそうです。


 瑞穂錦からはJR荒木行のバスしかありませんが、西鉄大善寺駅まで歩いても10分少々といったところ。田んぼの中を歩いて、電車を捕まえました。


 さて昨年、一昨年は酒蔵開きに合わせ、久留米中心部の飲み屋ではしご酒イベント「久留米酒駅伝」が同時開催されていたのですが、残念ながら今年はなし。しかしこのままお開きにするのも惜しく、花畑駅で途中下車しました。
 鉄砲で、焼き鳥を肴に生をグビッ。日本酒もいいけど、ビールもイイネ!


 さらに1駅乗って、西鉄久留米へ。西鉄は17km以上の乗車券で途中下車が自由なので、気軽に乗り降りできます。駅近くのビルにあるバー、ONE SHOTにお邪魔しました。


 世界レベルのフレアカクテルショーに魅了されます。


 夜も9時を回りましたが、終わりのない土曜の夜。浮世小路のスドウバーで楽しく呑んで歌って、自由な週末の夜は更けていきました。

九州オルレ久留米・高良山コースを歩く

2016年02月06日 | □久留米なう
 「オルレ」は韓国・済州島発祥のトレッキング文化。本場済州島には20を超えるコースがあり、四季折々の自然を楽しみながら歩くとことができます。その姉妹版として注目を浴びているのが「九州オルレ」です。現在、九州各地に17コースが認定されてます。
 中でも最も新しいのが、昨年11月に認定された久留米・高良山コース。韓国の方々にもおすすめできるコースなのか、自分の目と足で確かめてみたい!というわけで1月の最終日曜日、旅仲間8人とともにそぞろ歩いてみました。


 まずは、JRの快速電車で久留米へ。久大本線の赤い気動車に乗り換え、始発駅の久留米大学駅を目指しました。
 平日の久大本線は学生で混んでいて、「のんびりローカル線」の風情とはほど遠いものがありますが、今日は休日。2両編成だったこともあり、ゆったり全員座ることができました。


 始発駅、久留米大学駅にはオルレ観光の歓迎横断幕が。日本語版、韓国語版のコース案内は、駅の窓口に置いてあります。
 ハイカースタイルの韓国人夫婦も待合室で一休みしており、さっそく「オルレ」の誘客効果が感じられました。


 まずお昼ご飯を買い出すため、さっそくコースアウトしてローソン久留米大学前店へ寄り道。コース上に店はしばらくないので、食料と飲料の調達はここで行っておくのが必須です。


 上津バイパスから御井小学校までは市街地のアスファルト道ですが、鳥居と高速の高架をくぐると、参道といった風情が感じられるようになってきます。
 昔は麓から参拝するのが当たり前で、参道には門前町の名残もあるのですが、店はほとんどなくなってしまいました。かくゆう僕も、高良大社には何度も行ったことがあるのに、麓からの参道を歩いたのは初めてです。


 多くの参拝者を渡したであろう石橋も、少し寂しげ。
 参拝者に代わって目立つのはランナーの姿で、勾配の激しい参道は、格好のトレーニングコースになっているようでした。


 オルレコースの目印は、リボンと矢印。赤と青の組み合わせは目立つし、他の色とまぎれる事もなく分かりやすいです。
 リボンは、フェンスだったり木の枝だったり、いろんな場所にぶら下げてありました。


 矢印は、「人」の漢字がモチーフ。赤は標準コースと逆方向、青は順方向を差しています。これは事前に知識として知っておかないと、戸惑ってしまうかもしれません。
 「Aコース」「Bコース」などの看板もあちこちに立っていますが、オルレとは違うハイキングコースの案内なので、間違わないよう要注意です。


 高良大社への石段へ。ランナーや参拝者など、行き交う人は思ったよりも多くて驚きます。駅やバス停から歩く人は少なくとも、麓の駐車場から参拝する人は多いようです。
 「若い人たちは珍しいわね」といいながら、軽やかに追い抜き登っていく老夫婦。30代後半が「若い」と言うのかは分からないけど、体力的に負けていることは確かです。


 オルレコース中の見所には、馬のオブジェ「カンセ」が置いてあります。


 カンセスポットの「夫婦榊」は、2つの木の枝が手を取り合ったような不思議な木。あまり大きくはないのでちょっと拍子抜けだったけど、今風に「パワースポット」と銘打ち、大アピールされていました。


 あじさい園、見ごろに来ればきれいなんだろうな。


 3つめの「カンセポイント」である、孟宗金明竹(もうそうきんめいちく)。光を通すと金色に輝いて見える、不思議な竹です。
 竹林をぐるりと取り巻くフェンスがあるのは、天然記念物であるが故。


 石段の参道を上がれば高良大社ですが、オルレのコースは参道を外れ、山道へと分け入っていきます。
 オルレコースの選定にあたっては、舗装されていない道が一定割合以上あることという基準があるとかで、いよいよオルレらしい道になったと言えるかも。


 参道を外れた途端、すれちがう人も少なくなりました。木々は深く、久留米市内にいることを忘れそうになります。木々の切れ間からは、こんな眺望も。成田山の観音像の、後姿を拝めました。
 登り勾配はややきつく、このコースの難易度が中上級とされる所以でもあります。とはいえ登山というほどハードではなく、老若男女楽しめるコースです。


 高良大社の奥院へ出てきました。参拝者も多い高良大社にあって、ひっそりと静かな場所です。


 側に立つトタンぶきの廃屋はただの小屋ではなく、泊り込みで祈祷する人のための施設だったとか。
 中は荒れ放題でしたが、外に掲げられた木札には「利用の方は社務所へ」という文字が、うっすらと残っていました。


 奥院の裏手に回ると下り坂に。ひさびさに舗装路の林道に出たと思えば、再び山道を登ります。標高300mから200mまで一旦下り、また300mまで登るというアップダウンぶりです。
 しょうぶ池、ここも見ごろの時期ならばきれいなんでしょう…。


 登ったところにトイレと一休みできる広場があり、時間も1時に近いということで昼食タイムに。コンロで湯を沸かし、カップ麺とコーヒーで温まりました。
 同じメニューを家で食べてもわびしいだけだろうけど、体を動かすと何でもうまくなります。


 ひとやすみして元気になったところで、オルレ再開。高良山上のつつじ公園にやってきました。きれいなトイレや、売店も整備されています。
 つつじ満開の季節はきれいなはずで、このコースはやはり春がベストシーズンです。


 うどんや猪汁などの軽食も置いてあり、手ぶらで来ても暖かい昼食にありつけるのはありがたいことです。月曜日は定休日なので、気をつけて。


 駐車場へ下れば、久留米から朝倉・浮羽方面を一望できます。
 今回は列車で来たので、売店で買った「銀色の缶」も味わえました。下りとはいえ、まだコースは2/3を余しているので、飲みすぎ注意!


 つつじ公園から高良大社までは車道が通じていますが、オルレコースでは尾根伝いの林道を歩きます。鳳山山頂からは、青峰団地方面が眼下に望めました。


 高良大社の境内へ、裏手から出てきました。重要文化財にもなっているお社は、平成の大修理中。1年半後の完成までしばし見られません。


 展望所からは、九州自動車道と久留米市内が迫るように見えてきます。コース中の「展望スポット」は3箇所。いずれも方角が違うので、まったく違う風景です。


 まだまだオルレコースは続きます。ストレートに下れる参道の石段には入らず、茶店の脇の山道へ。
 妙見神社は、苔むした階段の先にあります。鳥居は落ちてしまっていて、荒れているといえば荒れているのですが、自然に溶け込んでいるようにも見えました。




 さらに下ると、薬師堂が。無数のお地蔵様と、水神様が祭られています。
 陽もあたらぬ谷間へとそそぐ、山の水。コンクリートブロックも苔むし、しっとりとした空気が包んでいました。


 竹に結ばれたオルレリボン、風流です。


 王子池のほとりでは毎年9月15日、花火動乱蜂なる奇祭が行われるのだとか。花火という言葉ではくくれないような派手さがあるらしく、一同、行ってみようかと盛り上がりました。
 遊歩道から古宝殿城跡までは、400段の階段が続いています。地元のおじちゃんは、毎日上り下りしているのだとか。元気なわけだ。


 住宅街を歩けば、ゴールの御井駅。コース踏破のめやすは3~4時間とされていますが、お昼休憩を取ったこともあり、5時間かかりました。お疲れ様でした!
 御井駅は久留米方面ホームに直接上がれるのですが、SUGOCAのリーダーは田主丸方面ホームにしかないので、線路を渡ってタッチしに行かねばなりません。お帰りの際は、ご注意を!


 僕らは列車を待たず、国道を走るバスに乗りました。久大本線だと1時間待つ時間帯がある一方、バスは昼でも10分間隔で走っているので、タイミングによってはバスもおすすめ。また久留米の市街地に出るなら、バスの方が便利です。
 文化センター前で下車。文化センターの中を通り、文化ホール、勤労青少年ホームの前を経由して抜けた先にあるのが…


 久留米温泉!3時間コースなら730円です。街中の温泉ではあるけど、源泉かけ流しのトロトロ湯が楽しめます。サウナや露天風呂もあり。
 気軽なハイキングコースとはいえ、それなりに酷使した体をゆったりと休めました。


 さらに歩いて10分の大砲ラーメン本店で、「おやつ」の時間。郊外の店だと夕方は込み合いますが、本店だと他店より待たなくていい印象があります。
 ズルズルっとラーメンをすすれば久留米満喫コースも終了!だったはずなのですが…


 やはり下山後の1杯は欠かせず、さらに歩いて10分の激安居酒屋・松竹本館へ。生380円、焼酎も200円台から揃えている、久留米の「神居酒屋」です。
 運動後の体に嬉しかったのが、生レモンサワー。氷の代わりに、凍らせたレモンを浮かべたサワーです。メガジョッキ580円をグビリ。クエン酸で体をいたわったのか、アルコールでさらに酷使したのか分からなくなりました。