宇宙カレンダーの12月20日(4億3900万年前)、シルル紀が始まった頃、まず植物が陸地への移動を始めます。
(オルドビス紀まで遡るという説もありますし、動物が先という説もあるようですが、ここでは植物が先という説を採用しておきます)。
先祖の光合成微生物、光合成植物たちが長い時間かけて形成してくれたオゾン層のお陰で、陸上でも太陽の紫外線によって細胞膜が壊されることがなくなります。
生命の危険は少なくなってきたのです。
しかも、太陽光のエネルギーを利用するのは陸上のほうが有利です。
この有利な新しい場所を放っておく手はありません。
すると実際、新しい生活の場を開拓するための冒険を始める生命が出てきます。
しかし、考えてみると海の中と陸上ではまったくといっていいほど生きるための条件が違っています。
新しい環境に合うように自分を変えなければ、生命は陸地で生きることはできません。
ところが、そういう自己変革・革命を遂げ、大冒険に挑む生命がいたのです。
細胞つまり生命のいちばん基本になっている物質は水です。
ところが、陸上には肝腎の水がありません。
しかし、豊かな光エネルギーは欲しい。
そこで、植物たちは「工夫した」のではないでしょうか。
私は、擬人化だといわれても、そう思わざるをえません。
これを、単なる「偶然の突然変異が自然選択された結果」とは考えにくいのです。
重要なので何度も繰り返しますが、たとえある種の偶然だとしても、そこには宇宙の自己組織化という一貫した方向性があることだけは確実です。
植物は、枝葉を陸上-空中に伸ばし、根で土中の水を吸い上げて葉先まで送るというそれまでになかったより複雑なシステム・組織を発明したのです。
それだけでなく、根から葉先まで水を揚げることのできる管(維管束、いかんそく)も発明しています。
私たちが今見ることのできる見上げるような大木も、そうした構造で、根から高い枝先、葉先にまで水を送っています。
まったく意外なことですが、この「維管束」がどういうメカニズムで何十メートルもの高さまで水を揚げることができるのか、いまだにわかっていないのだそうです。
いわゆる「毛細管現象」で水が上がるのはほんの少しの高さで、とても大木の梢までは上がりません。
もちろん、ポンプのようなものがついているわけではありませんね。
どうやって植物は水を高いところまで揚げているのでしょう?
それがわかったらノーベル賞ものだ、という話を読んだことがあります。
理系の学生諸君、挑戦してみませんか?
(もしかして私の勉強不足で、すでにわかっているようでしたら、ご存知の方、ぜひ教えてください。)
さて元に戻ると、そうはいっても最初の植物は水際に生えていました。
磯の潮溜まりに行くと、潮が引くと陸になり潮が満ちるとまた海中になるような場所でちゃんと生きている海草を見ることができます。
最初はたぶんあんな風だったのでしょう。
それから、水辺の植物、例えばトクサのようにずっと水の上に体を伸ばすようになり、アシやマングローブのように繁るようになったのでしょうか。
ともかくこうして、それまで何の生命も存在しなかった殺風景な陸地が、海辺・水辺から次第に緑に染まりはじめます。
想像するだけで、心が弾んでくるような気がしませんか?
今私たちが享受している、青い海、青い空、そして緑の大地という美しい地球が、ゆっくりと形成されつつあるのです。
最初に上陸した植物たちの冒険がなかったら、私たち陸上動物が生きることのできる豊かな緑の大地は存在しなかったのですね。
*写真は宮崎県青島の海岸、通称「鬼の洗濯板」
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