生命力の源泉――爬虫類のご先祖さまからの遺産

2005年11月09日 | いのちの大切さ

 最初のころ陸に上がった植物は、それほど大きくないシダ類などだったようですが、やがて10メートル以上もある大木になって、海辺に近いところから深い森が繁るようになりました。

 そのシダ類の大木が豊かな太陽エネルギーを体の中に蓄え、やがて倒れ土に埋もれて、長い年月を経て石炭になったのです。

 それが、宇宙カレンダーの12月22日、石炭紀です。

 その翌23日、両生類の中から最初の爬虫類が分かれて登場します。

 石炭紀から数千万年、森はしだいに海辺からさらに陸地深くにと広がっていったようです。

 実にゆっくりと悠久の時間をかけて――気候変動によるジグザグは当然あったのですが――しかし確実に、大地全体が緑で覆われていく様子を想像してみてください。

 大地を覆う森はその中や土中に多くの昆虫やミミズのような生き物を育んでいきます。

 それらは、肉食の動物にとってはもちろん食糧です。

 当然、遠くても食べに行きたいですよね。

 しかし、両生類は、水辺からあまり離れることができませんでした。

 それはなぜでしょうか?

 春の池や小川のことを思い出してください。

 ゼラチン状のカエルの卵を見たことがありませんか?

 そうです、ゼラチン状の卵によって子孫を残していくためには、水を離れるわけにいかないんですね。

 水のない陸地では、卵が乾燥して死んでしまいますからね。

 でも、陸地の奥深いところは食糧になる生物の宝庫になっています。

 水辺を離れて、奥地に進出するにはどうしたらいいでしょう?

 みなさんが両生類のフロンティアだったとしたら、どういう戦略を考えますか?

 そのとおり! 卵に殻をつけるんです。

 爬虫類は、殻があり陸地の乾燥に耐えることのできる卵を発明することによって、陸の奥深い場所まで自分たちの生息圏-なわばりにすることができたのです。

 爬虫類はまた、カエルの子、オタマジャクシのように最初はエラで呼吸し、後から肺で呼吸するようになるのではなく、生まれた時から肺で呼吸します。

 したがって、最初から陸で暮らし、陸で卵を産めるわけです。

 完全に水辺を離れることのできた爬虫類は、まだ競争相手の少ない陸で、いわば「陸の王者」になっていきます。

 ところで、もちろんこの爬虫類も私たちの先祖です――「トカゲのなかまが先祖だなんて」とぞっとする人もいるかもしれませんが。

 私たちの脳の中には、ご先祖さまである爬虫類の遺産が残っているようです。

 本能と衝動のセンターである「脳幹」という部分が、爬虫類の脳とほぼ同じパターンになっているのだそうです。

 「本能と衝動」というと、洗練された文明人のつもりの方はちょっと嫌な気がするかもしれません。

 しかし、「食べたい」、「セックスしたい」、「戦おう」、「逃げよう」といった心の働きは、生きるエネルギーの源泉です。

 人間においては、いうまでもなく本能や衝動は適切にコントロールされる必要がありますが、それらがあるからこそ生き延びることができるのですし、それらがあってこそ活き活きと生きることができるのです。

 本能と衝動は、なくてはならない生命力の源泉です。

 私たちは、そうした生命力の源泉を、爬虫類のご先祖さまからの大切な遺産として受け継いでいる、といっていいようです。


 ……と、ここまで考えてきて、もう1つ気づきました。

 今では当たり前のように思っていますが、陸の奥深いところはもともとは生物の棲めるところではなかったのです。

 そこをまず植物が開拓し、続いて昆虫が開拓し、さらに爬虫類が開拓して、豊かな生命圏に変えていったわけです。

 それに続く哺乳類-霊長類-人類は、それらのご先祖さまの親戚や直系のご先祖さまの開拓地という遺産をもらって暮らしている、ともいえるのではないでしょうか。

 内面的にも外面的にも、爬虫類というご先祖さまから受け継いだ遺産は大きいのですね。


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コメント (2)
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