一関市花泉町永井地区北東部、北上川近くの集落への道を歩いて行くと、行く手に杉や欅
からなる林があって、樹間からチラチラと民家の屋根が見えるので屋敷林なのでしょう。
屋敷林の手前に細い農道があり、これを下りかけると法面に常緑の剣葉が株をなしている
のを見つけました。葉が幅広でもっこりと茂っていますから、ヤブランでしょう。
よく似たオオバジャノヒゲなら、葉がもっと細くて地際に伏せていますからね。
周囲を見渡すと、農道法面や屋敷林際の草藪にも10株ほど生えていて、中にはたくさんの
種子を付けた株もあります。藪の中に生えていることから植えられたのではなく、種から
育った実生株と思われます。ただ、集落周りですから自生株ではなく、庭などに植えられ
た株からの逸出とみるべきでしょう。
二枚とも2020.12.29撮影
多くの植物では、花茎に丸い実が付いていればそれは果実で、中に幾つもの種子が入って
います。ところがこのヤブランの場合は、漆黒の果実のように見えるのは種子だとありま
す。種子がもろに露出しているというのです。
結実直後には果皮があるのですが、ごく早い時季に剥落し、種子が剥き出しの状態で成熟
するようです。果肉に相当する部分はありません。黒色の表皮を剥くことができますが、
現れるのは種子の胚珠部分なのだそうです。
種子を2分割すると、種皮の下に胚乳の核球があり、その中心に胚が見られます。
二枚とも2020.12.29撮影
キジカクシ科ヤブラン属の常緑多年草で、本州〜沖縄に分布し、草丈は30〜50cm。
丘陵~低山のやや湿った林内や、寺社の境内などに自生する。
根はときに肉質、先端の近くで管状に太くなる。匐枝は出さない。
葉は根生、線形の葉を叢生し、長さ30〜60cm、幅0.8〜1.2cm、先端は丸みを帯びる。
葉縁には細かな鋸歯がある。葉質はかたく、葉表は深緑色でやや光沢がある。
花期は8〜10月、高さ30〜50cmの花茎を伸ばし、淡紫色の小さな花を総状に多数つける。
花の直径は6~7mm、花被片は6枚、長さ4mmほどで数個ずつ束生する。
雄しべ6個、雌しべ1個。花は花穂の下方から順に咲く。
種子は球形で直径6〜7mm、黒色で光沢がある。
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