しゅぷりったあえこお nano

ブログ版 シュプリッターエコー

今昔物語

2008-10-14 07:55:05 | 引用
中学生の古文の問題を読んで大笑いをした。

「今は昔、筑前の前司 藤原章家(あきいえ)といふ人ありき」ではじまるエピソード。

頼方(よりかた)という「見目ことごとしくして(見るからにものものしくて)、鬢(びん)長く(左右の鬢の毛が長く)、きらきらしき気色ありて(堂々とした様子で)、兵だちしたためしたる侍(いかにも武人らしくふるまう侍)」がいた。

で、その頼方も加わって、主人の章家のそばで侍たちが食事をしていたときのこと、章家はもう満腹になったので残り物を侍たちに分けてやった。侍たちが主人の食器を順々に回し、そこから自分の器に移していく。

さて、頼方のところまで主人の食器が回ってきたが、そのとき頼方はうっかりして主人の食器から直接かき込んでしまう。驚くほかの侍たち。「おいおい、あの人、ご主人様の器から食べちゃったよ。」

あわてる頼方。

「まことにさぞかし。あやまちしてけり(ほんとだっ。しまった。)と思ひけるに、よく臆病しにければ(動転してしまって)、含みたりける飯をこそ、その御器にまた吐き入れたりけれ。ただその器ながら食ひつるをだに、侍どもも主もきたななり(きったねー)と見つるに、唾(つばき)加はりながら食ひたる飯を器に吐き入れたりければ、長き鬢にかかりなどしてありければ、のごひあつかひなどしけるこそ(ぬぐうのに困ってる姿は)、極めてにくくつたなかりけれ(かっこが悪かった)。異侍(ことさぶらひ)どもこれを見て、立ちて外にてぞわらひける(うひゃひゃひゃひゃ)。」

「女の人はこういう失敗しないよねぇ」と家の者(女性)が言った。

そう思う。

硬直した論理性。「食べちゃったから戻さないと!」。

〈食べるー吐く〉という図式(論理)、あるいは制度がその侍の中で先行しているのがわかる。その図式の上では逆戻り可能だったのだろう。

そういう論理が行動の原理になっちゃってる男性の不自由さ不自然さが、あわれで馬鹿馬鹿しくて笑えるんだろうね。

自分を笑うようでアレなんだが。