「ユダヤ人の起源」
テルアビブブ大のシュロモー・サンド氏の著書。
2000年前、約束の地カナンから追放され、世界中に「離散」したとされるユダヤ人。だが聖書にあるその記述は事実ではなく、ユダヤ人という「民族」も存在しない。歴史を根底から問い直す「ユダヤ人の起源」。
本書執筆のきっかけは「ユダヤ人の離散は起きなかった」とする論文を見つけたことだった。驚いて図書館で離散を論じたイスラエルの歴史の本を探してみたが一冊も見つからない。古代史の専門家の間では「離散の事実はなかった」ことは常識だと知った。
「だがイスラエルの学校では6才から歴史で聖書を教え、一般の人はモーセがエジプトを脱出して同胞をカナンへ導きその後ローマ人によって離散させられた物語を強く信じている」
紀元70年の「追放」についても歴史書などに明確な記述や痕跡は見当たらない。ハザールなどのユダヤ教の王国は離散者が作ったのではなく改宗の結果に過ぎないと示した。現在パレスチナに住むアラブの人々こそが聖書時代のユダヤ人の子孫かも知れぬと言う。「教えられてきた歴史はパレスチナを植民地化するために必要な物語だった」と言う。
サンド氏は「イスラエルが非ユダヤ系の人々を差別的に扱っていることを憂い、パレスチナ占拠は正当性に欠ける。すぐ撤退を」と訴える。
サンド氏は「イスラエル政府が内部から変ることには期待していない。外からの圧力で変わらざるを得ない状況を期待する」と言った。2010年7月来日した時のこと。
それから10年。イスラエルの後援国アメリカの力は相対的に弱ってきている。国連でのハマス非難の決議に各国は腰が引けている。
滅亡するのはパレスチナではなくイスラエルの方だと考える。無理筋は通らない。