NHKEテレに『100分で名著』という番組がある。
今月は三島由紀夫の「金閣寺」だ。解説は作家の平野啓一郎。
私はこの小説がいまいちわからないというか共感しなかったが、別に平野氏の解説でというわけではないが、三島にとっての「金閣寺」は昭和天皇ではなかったかと思った。
1925年生まれの三島はまさに「天皇制軍国主義」の申し子だ。小学校、三島の場合は学習院初等科か?それほど軍国主義的ではなかったともいうが、華族の子弟を教育する場。教育勅語等一通りの天皇を頂点とした教育は行われただろう。後に作家になるような子供だから周囲の誰よりも敏感な子供だったろう。他の生徒は戦後になるとあっさり民主主義体制に乗り換えたが、三島はそうはいかなかった。
しかも天皇のために死ぬつもりだったのに体が弱く「召集免除」になっていて、軍隊経験もない。自分とほぼ同世代の若者は兵士としてあるいは勤労動員で命を落しているのに。
だから戦後誰よりも天皇制にこだわった。しかも心の拠り所だった昭和天皇は神から人間となり、その姿は三島をひどく失望させるものだったに違いない。
「金閣寺」の主人公学僧の溝口はみすぼらしくなった現実の金閣寺に火を放つことで折り合いをつけようとしたが、三島はまさか昭和天皇と刺し違えるわけにもいかない。
身体を鍛え、自分に共感する若者を集め、最後に自衛隊市谷駐屯地に乗り込み自決する。
天皇制軍国主義の誰よりも忠実な申し子「三島由紀夫」の生涯。忌むべし「天皇制」。