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映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

2011年 劇場鑑賞映画 マイベストテン

2012-01-07 02:33:57 | 私の映画年間ベスト
2011年、映画館で鑑賞した長編映画はわずかに17作

そのうち映評をきちんと書いたのは9作

理由(言い訳)はいろいろ
・00年代ベストの編纂の燃え尽き感がまだ・・・
・山にはまりまくってお金も暇も・・・
・長編映画のプレプロダクションに入ったから
・拙作「せば・す・ちゃん」が神戸のEIZO FESに入選して、そこに出かけたから
・秋に松本演劇祭に出演したから
・冬から新作の短編撮りはじめたから

けども年間総括だけはいちおうやっとこうと思い、恒例のベストテンを
でもたった鑑賞17作でベストテンなんつってもあれなんで、劇場鑑賞した短編映画のうちめぼしいものも含めて23作品を対象に、2010年に引き続き鑑賞全作に強引に順位と点数付けをしてみることにしました。
点数は100点満点中。点数の根拠は「なんとなくそれくらい」。その日の気分や人生経験を重ねたりすることで±10点程度の変動アリ

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2011年の劇場鑑賞映画マイベスト10+13


1位『スコット・ピルグリムvs.邪悪な元カレ軍団』
100点 米 エドガー・ライト


完璧な面白さ。「キック・アス」の「予想通りにして期待以上」的面白さではなく、全てが規格外の予想不可能な驚きに溢れた面白さ。「ホット・ファズ」ではまだ半信半疑だったエドガー・ライトという監督の実力を本作で本物だと確信。これからエドガー・ライトを楽しみにして生きていけると思えたので、同じくらい好きな「キック・アス」より順位を上にした。2011年この映画に映画館で出会えて死ぬほどうれしい

2位『キック・アス』
100点 米 マシュー・ボーン


映画史上ナンバーワンのヒロイン「ヒットガール」。それだけで充分にベスト級。それに加えてヒーロー愛をフィルムの隅々にまで染み込ませたような輝き。そうだ、俺はこれからもヒーローを愛していこう・・・と誓わせてくれた。「スコット・ピルグリム」とあわせてアメリカ流オタク万歳映画に2011年はしてやられた。幅広い人たちに受け容れられる映画より、ごく一部の人間に受け容れられるものを徹底して作り込む映画の方が俺はやっぱり好きなんだ。

3位『ソーシャル・ネットワーク』
95点 米 デビッド・フィンチャー


しかし普通に考えれば上位2作よりこちらが、2011年代表作品にふさわしいのかもしれない。映画年表の2011年の欄には「ソーシャル・ネットワーク」が日本公開された年として記録されるべきだ。内容的にもアカデミー賞で冷遇された点でもかつての「市民ケーン」を彷彿とさせる。
それにしてもすげー脚本。何重のパラレル?時系列の入り乱れたストーリーと圧倒的言葉の量で強引に感動させられる。これも映画の力であり、映画的な驚き。それでいて主人公が1mmも成長しない物語って何だ一体?

4位『アングリー・マン』
95点 ノルウェー アニータ・キリ


松本こどもたちの映画祭で鑑賞した「大人のためのキンダー・フィルム」の一本。衝撃度では本年ナンバーワン。
子供が父親のDVを告発するという内容だが、切り絵アニメの個性的なキャラクターたちがDVに苦しむ人たちを支援する、地域社会や国あるいは法律のメタファーとして描かれるところが秀逸。
そして何よりも恐怖のモンスター「アングリー・マン」が最高(最狂)に恐ろしくて、死ぬまで忘れない。
なお本作は、プロの声優さんによる生吹き替えで鑑賞。吹き替えの抜群の臨場感も称賛に値する。
ユーリー・ノルシュテインと並べて賞賛したくなる今後注目の短編アートアニメ作家と出会えた。

5位『ブラック・スワン』
90点 米 ダーレン・アロノフスキー


賞味期限切れの元アイドル女優で大スターになり損ねたウィノナ・ライダーと、本作でアイドルからスターへと突き抜けたナタリーの対決が因縁じみてて、内容と関係ないけど忘れがたい。
ストーリー的にはありがちと言えばありがちだけど、女の狂気を映像に焼き付けきったそのパワーに圧倒された。

6位『127時間』
88点 米 ダニー・ボイル


登山好きには必見のサバイバル映画。主人公の失敗と成功から多くの事を学べる。
しょんべんや泥水をすすってでも生きる主人公の姿から見える生命の素晴らしさ。127時間身動きできなかった男というおよそ映画的ではないシチュエーションを長編映画として成立させたダニー・ボイルのテクニックもすげー。

7位『アンストッパブル』
85点 米 トニー・スコット


列車がなぜ動き出したのか?それはどうでもいい。映画のきっかけになれば良い。だから理由なんて語らない。大事なのはなぜ走り出したのかではなく、どうやって止めるのかであり、止めるという単純な行為に沢山の人や組織がが関係してくることである。単純な動機が、人を金を会社を動かし、人間関係に劇的な変化をもたらしていく。そして最後はハッピーエンドで人間賛歌。パワフルに動き続けるという点でとっても映画らしい映画。

8位『大鹿村騒動記』
82点 日 阪本順治


どうでもよさげなリニアモーターカーに関する村人たちの議論もよくよく考えれば佐藤浩市の松たか子への恋心を臭わす場面として機能しているなど、脚本は無駄がなく、多くのキャラクターが全て魅力的。村自体の魅力を映像面で描いてくれればとか、歌舞伎シーンのBGMは余計ではないかとか、不満もあるけれど、適材適所なキャスティングでテンポよく描かれた様々な年齢の男女(一部男男)の情念の物語を堪能できて満足

9位『ヒアアフター』
80点 米 クリント・イーストウッド


孤独な超能力者というキャラクターがなんか好き。超能力ゆえの孤独を乗り越えてたどり着いたハッピーエンディングに感動。もちろんオープニングは数年間はまともに観れないけれど、だからといって評価を下げたくはない。

10位『friends もののけ島のナキ』
80点 日本 八木竜一・山崎貴


舞台となる村の地形をさりげなく印象的に映しておいて、続く場面でそこをアクションの舞台にする、そんなさりげなくポイントを抑えた演出がとても巧い。
笑い、アクション、ドタバタ、友情、家族とぎっちり詰め込み、ドラマ重視で涙へと観客を誘導する脚本のうまさ。
阿部サダヲがなんか言うたびにゲラゲラ笑う。

11位『傲慢なる施し』
80点 日本  藤原貴史

神戸アートビレッジセンターにて行われたEIZO FES Part15で鑑賞。短編の自主映画。喫茶店の隅で座ってしゃべるだけの映画なのに飽きさせる事無く描ききる。映画はまず脚本、という当たり前の事を再認識。そして俳優の表情を切り取るカメラから、なんだかんだで最後は演技が人を感動させるってことも再認識。

12位『マイ・バック・ページ』
80点 日本 山下敦弘

底の浅い自称革命家を演じた松山ケンイチの見事な演技に。

13位『マレーネとフロリアン』
80点 ノルウェー アニータ・キリ

「アングリー・マン」の監督による、こちらは戦争がテーマの短編アニメ。小川をはさんで暮らすマレーネとフロリアンは大の仲良しだが、戦争が起こり国境だった小川には鉄条網が敷設され。戦争の愚かさや社会問題を告発するノルウェーの戦うアニメ作家の今後に期待。

14位『英国王のスピーチ』
75点 英 トム・フーパー
いい物語にいい芝居だが、演劇的な魅力が強く、というか舞台で観た方が面白そう。だから映画的な魅力を評価基準にするなら、この辺の順位がいいところかと

15位『地獄のスイカ割り』
75点 日本 EGG HEADS
これもEIZO FESで鑑賞。ゾンビたちが人間の頭でひたすらスイカ割りを楽しむだけのたった9分間。それでも強烈すぎる印象。アングリー・マンやヒットガールと同じくらい衝撃。ゾンビのおっぱいポロリが最高。

16位『まいごのペンギン』
70点 英 フィリップ・ハント
松本こどもたちの映画祭で鑑賞した子供向けCGアニメ24分。ペンギンがかわいくて意地らしい。これ観ながら寝たらいい夢みれそう。

17位『ジョアンニの自慢のパパ』
70点 伊 レイモンド・デラ・カルチェ
松本こどもたちの映画祭で鑑賞した子供向けCGアニメ16分。男とは父親とは見た目ではない。強さとは力ではなく優しさだ。そんな単純な物語だけれど、理想の父親の影が最後ついに本物の父親の影に食われてしまう場面が好き。優しさが力に勝った瞬間。

18位『ツリー・オブ・ライフ』
60点 米 テレンス・マリック
厳格な父と慈愛の母は、破壊と慈悲という神の二面性を象徴する。父にも母にも反抗する子供は神への反抗あるいは神への絶望の現れ。
そうした意味はわかっても、やっぱり宇宙創世、地球の誕生、隕石衝突、恐竜闊歩などといった壮大すぎるにも程があるイメージシーンは・・・笑いどころだよね、やっぱ。自信を持って笑おう。指差して。テレンス・マリックは尊敬してますが。

19位『ウィンターズ・ボーン』
60点 米 デブラ・グラニック
わかりやすそうに見えて、なかなか難解。17歳女の子のハードボイルドだが、推理映画にも犯罪映画にも転がらない。ただ村の異様な雰囲気、悪魔的な数々の登場人物のキャラクターなど、記憶にのこる映画ではある。

20位『タンタンの冒険』
50点 米 スティーブン・スピルバーグ
さすがスピルバーグと思うシーンもあることはあるが・・・ヒロインもいない、さしたるドラマもなく、冒険とアクションが延々続くだけで2時間が長い。楽しんで作ったっぽいアクションシーンも長過ぎて観てて飽きてくる
ジョン・ウィリアムズの才能も枯れ果てたのか、地味すぎて印象ゼロの楽曲。脚本も音楽もレイダースさながらに万人受けを狙えば良かったのに。

21位『岳』
40点 日本 片山修
落ちてくる友人に手を延ばす・・・という原作三歩が絶対やらないことを予告編から見せつけまくっていた時点であまり期待はしていなかったが。
「山に捨ててはいけないものは? 答えは命」と小栗三歩は神妙な顔つきで語るが、言われなくてもわかる当たり前なこと。
対して原作三歩は同じ意味の事を言いながら、もっとずっと深いことを言う。「山に捨ててもいいものは? 答えはゴミと命以外ぜーんぶ」
アマチュアとたしなめられた久美ちゃんの成長を描くなら、彼女は要救のお父さんを見殺しにすべきだ。自分の命も三歩の命も危険にさらした愚行だ。そして三歩の久美ちゃん発見も偶然の賜物に過ぎず、原作三歩のような経験や情報に裏打ちされた捜索の結果ではない。二重遭難のようなクライマックス、原作のあるエピソードでは二重遭難の責任を取って正人は更迭されたぞ。結局アマチュアであることを選んだ久美ちゃんはラストで辞表を出すべきでは?
いろいろ思うにこの脚本家は原作が嫌いで山には恐ればかり抱いて愛は薄いのだろう

22位『コクリコ坂から』
10点 日本 宮崎吾郎
運命と闘わず労せずしてハッピーエンドを手にするカップルも、権威に媚びへつらう若者たちも、わざわざ映画にして描く価値があるとは思えない

23位『男たちの挽歌 A Better Tomorrow』
1点 韓国 
わが人生のワーストワンかもしれない。ひどすぎ。バカ。クソ。

勝手に個人賞

監督賞 エドガー・ライト「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」
脚本賞 アーロン・ソーキン「ソーシャル・ネットワーク」
主演女優賞 クロエ・グレース・モレッツ「キック・アス」
主演男優賞 ジェームズ・フランコ「127時間」
助演女優賞 メアリー・エリザベス・ウィンステッド「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」
助演男優賞 ニコラス・ケイジ「キック・アス」


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2012年は、いま製作中の短編を仕上げて、そしてやっと長編のプロジェクトに入ろうと思う。
今年は山は少なめに、映画(制作)に全力。
カメラ新しくしたのはいいけど、今まで使っていた望遠レンズもワイドレンズも使えないんで困りもの。HDDも欲しいし、だいたいMacも買い替えたいとか金のかかる事ばっかり考えてしまう。
だから今年も映画はそんなに観れないでしょう。
でもいいんだ。受け取る側から発信する側になんとしても変わってやるんだ。

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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円


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2 コメント

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ブロガーのベスト10 (aq99)
2012-01-07 17:30:04
アップしました。この記事を見損なってたんで、ちゃんと修正もしておきましたよ~。

一昨年くらいから、「映画秘宝」(買うのもやめてしもた)的なものに、トキメキを感じなくなってきたんで、エドガー・ライトやマシュー・ボーンもピンときませんでした。さらに韓国ドラマを死ぬほど見るようになり、脳が幼稚になってしまった模様です。脱ハリウッドの傾向も強まり、ブロガーに入ってたトムも猿もロボボクシングもアメコミも見逃してます(「SUPER8」のこともあり、ちまたの評判がよくても信用できなかったので・・・やはりブロガーの方の評判のほうが信頼がおけますわ)。

一年に一回となってしまってますが、末永くよろしくお願いします。
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あけまして (sakurai)
2012-01-08 13:37:31
おめでとうございます。
いろいろとご活躍の模様!嬉しく思います。
当方、相変わらず過ぎて、何の変わりも無く、去年もまた200本越えをしちゃいました。
イチローは10年でストップしましたので、まずそれは抜かないと。

1位は完全スルーというか、存在すら知りませんでした。ぺこり。
これは見ないといけませんな!
「男たちの挽歌」韓国編、先日WOWOWでやってたんで、一応録画しました。
見ようかとどうしようか思案中。
明日、アジアの名優という冠をいただいた「孔子の教え」!見てまいります!
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