個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
阪本監督作品には、不自然で違和感ある台詞まわしがつきまとう。
そんな所で言うことかな・・・と首を傾げたくなるところがいつも沢山ある。
人身売買組織に銃で脅された直後の「汚い日本人と同じに思われたからだ」。
別の場所いって落ち着いてから言うことではないだろうか?
銃撃戦のさなかの会話。
「大使館に行こう。」「いや!私は自分に嘘をつきたくない」・・というやりとり。
こんな会話をできるとは、余裕があるというか、修羅場なれしているというか
とりあえず、伏せさせて物陰に押し込むとか、有無を言わず連れてって危険のないところまで来たら話し始める・・・とする方がずっと自然。
元臓器売買仲介屋から取材した直後その場で新聞社に携帯で電話するのも変。
誰に聞かれているやら・・・
ゲーオが正体を明かすところも全て説明台詞だけで済ます。
すぐその場で喋るのでテンポは早いのだが、台本に書いてあるから喋ってます感が強く、キャラクターの心からの声に感じない。
そんな阪本流台詞まわしも、タイ語の多い本作では字幕効果でわざとらしさ・くささは幾分緩和されてるとはいえ、やっぱり気になってしまう。
わざとらしさは台詞だけではない。
クライマックスの銃撃戦は警官も敵もNGOの人も江口洋介も、みんなわりと棒立ちでちょいと苦笑を誘われもする。
などと突っ込みどころも欠点もいろいろあれど、本作にはそれを補ってあまりある魅力がいっぱい備わっている。
【魅力1・・・かっこいい台詞の反復】
くさいを通り越して、そうは言ってもかっこいいもんはかっこいい・・・という台詞も多い。
そしてそういう台詞に限って、イーストウッド映画バリの反復を見せてくれるからまた熱い
「見て見ぬフリをするんじゃない。見て見たことを書くんだ」・・・という豊原功補の台詞を後で江口洋介が再利用して妻夫木聡に聞かせ、その妻夫木も「見て見たことを撮りたいんです」と言わせる。人から人へと気持ちが受け継がれて行くのが伝わり、本作の「これを観て、この事実を知って欲しい」というコンセプトにもつながる。
「地図だと東京から20cmの場所だ」も江口から妻夫木へと受け継がれ反復される。
【魅力2・・・女】
童顔でいつまでも子供らしい可愛らしさが抜けない宮崎あおいだが、本作では子供が背伸びしてきれいごと吠えている感が出てうまいキャスティングだと思った。
【魅力3・・・女のアクション】
そんな彼女にも阪本監督はしっかりとアクションシーンを準備。カット割って誤摩化すような甘えは許さない。
ワンカットで、トラックの荷台から落ちて、襲いかかる悪党の足を鉄棒でガツンと叩き、そのまま急所を蹴り上げ、またトラックを走って追いかけさせる・・・までをやらせてしまう。容赦ねえ。しかしそんなアクションバカ監督の要求にきっちり応える彼女も素敵。いい女は戦っている時が一番美しい。
【魅力4・・・男のアクション】
前述の銃撃戦も、わざとらしい反面、モブシーンでのアクションには正直、男の血がたぎる。
【魅力5・・・展開の意外性、一筋縄ではいかない人物設定】
そしてやや泥臭いアクションとはいえ、そのさなかに一気に観客をどん底にたたき落とすショッキングな回想が緩んだ空気を引き締める。観客が信じていた男の裏切り。あの姿はお前自身だ!と言われたようなショック。その後の江口洋介の絶叫芝居とその演出がちょいクサくても、気にする余裕もないほどに打ちのめされる。
【魅力6・・・もちろんなんつっても心に突き刺さるメッセージ】
バカみたいに正義をふりかざす小娘に見えた宮崎あおいだが、信念にしたがった結果一人を救い出し、組織を潰すことに貢献する。無数にいる犠牲者の中の一人、無数にある組織の一つに過ぎないにしても、やはり胸を打つ。まずは信じることから始めよう。きれいごとの何が悪い。
交渉慣れし、社会の仕組みを知るジャーナリストたちが、目の前の少女を救うことができずに苦悩するのと対照的だ。
過去の過ちから良心の呵責に耐えられなくなる江口。妻夫木聡もまた下心から隠し撮りをしたらしいことが序盤で語られ、彼にも悪がつけいるスキがあることが示唆されている。
男の映画を作ってきた阪本監督だけあって、男には容赦ない。心を土足で踏みにじられるようないやな感じ。「外国での買春なんて絶対すんじゃねーぞ、この腐れ男ども」と言われた気がした。
売る者が減らないのは買う者がいるからだ。我々が買わなければ、犠牲者を一人減らすことができる。当たり前のことだが身にしみた。
悪に加担しないことが最初の一歩。悪と戦うものを応援することが次の一歩。そしてさらにその先に歩を進めている人たちがいる。
それでも、今も貧しい子供たちは生きたまま切り刻まれているのかもしれない
********
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
阪本監督作品には、不自然で違和感ある台詞まわしがつきまとう。
そんな所で言うことかな・・・と首を傾げたくなるところがいつも沢山ある。
人身売買組織に銃で脅された直後の「汚い日本人と同じに思われたからだ」。
別の場所いって落ち着いてから言うことではないだろうか?
銃撃戦のさなかの会話。
「大使館に行こう。」「いや!私は自分に嘘をつきたくない」・・というやりとり。
こんな会話をできるとは、余裕があるというか、修羅場なれしているというか
とりあえず、伏せさせて物陰に押し込むとか、有無を言わず連れてって危険のないところまで来たら話し始める・・・とする方がずっと自然。
元臓器売買仲介屋から取材した直後その場で新聞社に携帯で電話するのも変。
誰に聞かれているやら・・・
ゲーオが正体を明かすところも全て説明台詞だけで済ます。
すぐその場で喋るのでテンポは早いのだが、台本に書いてあるから喋ってます感が強く、キャラクターの心からの声に感じない。
そんな阪本流台詞まわしも、タイ語の多い本作では字幕効果でわざとらしさ・くささは幾分緩和されてるとはいえ、やっぱり気になってしまう。
わざとらしさは台詞だけではない。
クライマックスの銃撃戦は警官も敵もNGOの人も江口洋介も、みんなわりと棒立ちでちょいと苦笑を誘われもする。
などと突っ込みどころも欠点もいろいろあれど、本作にはそれを補ってあまりある魅力がいっぱい備わっている。
【魅力1・・・かっこいい台詞の反復】
くさいを通り越して、そうは言ってもかっこいいもんはかっこいい・・・という台詞も多い。
そしてそういう台詞に限って、イーストウッド映画バリの反復を見せてくれるからまた熱い
「見て見ぬフリをするんじゃない。見て見たことを書くんだ」・・・という豊原功補の台詞を後で江口洋介が再利用して妻夫木聡に聞かせ、その妻夫木も「見て見たことを撮りたいんです」と言わせる。人から人へと気持ちが受け継がれて行くのが伝わり、本作の「これを観て、この事実を知って欲しい」というコンセプトにもつながる。
「地図だと東京から20cmの場所だ」も江口から妻夫木へと受け継がれ反復される。
【魅力2・・・女】
童顔でいつまでも子供らしい可愛らしさが抜けない宮崎あおいだが、本作では子供が背伸びしてきれいごと吠えている感が出てうまいキャスティングだと思った。
【魅力3・・・女のアクション】
そんな彼女にも阪本監督はしっかりとアクションシーンを準備。カット割って誤摩化すような甘えは許さない。
ワンカットで、トラックの荷台から落ちて、襲いかかる悪党の足を鉄棒でガツンと叩き、そのまま急所を蹴り上げ、またトラックを走って追いかけさせる・・・までをやらせてしまう。容赦ねえ。しかしそんなアクションバカ監督の要求にきっちり応える彼女も素敵。いい女は戦っている時が一番美しい。
【魅力4・・・男のアクション】
前述の銃撃戦も、わざとらしい反面、モブシーンでのアクションには正直、男の血がたぎる。
【魅力5・・・展開の意外性、一筋縄ではいかない人物設定】
そしてやや泥臭いアクションとはいえ、そのさなかに一気に観客をどん底にたたき落とすショッキングな回想が緩んだ空気を引き締める。観客が信じていた男の裏切り。あの姿はお前自身だ!と言われたようなショック。その後の江口洋介の絶叫芝居とその演出がちょいクサくても、気にする余裕もないほどに打ちのめされる。
【魅力6・・・もちろんなんつっても心に突き刺さるメッセージ】
バカみたいに正義をふりかざす小娘に見えた宮崎あおいだが、信念にしたがった結果一人を救い出し、組織を潰すことに貢献する。無数にいる犠牲者の中の一人、無数にある組織の一つに過ぎないにしても、やはり胸を打つ。まずは信じることから始めよう。きれいごとの何が悪い。
交渉慣れし、社会の仕組みを知るジャーナリストたちが、目の前の少女を救うことができずに苦悩するのと対照的だ。
過去の過ちから良心の呵責に耐えられなくなる江口。妻夫木聡もまた下心から隠し撮りをしたらしいことが序盤で語られ、彼にも悪がつけいるスキがあることが示唆されている。
男の映画を作ってきた阪本監督だけあって、男には容赦ない。心を土足で踏みにじられるようないやな感じ。「外国での買春なんて絶対すんじゃねーぞ、この腐れ男ども」と言われた気がした。
売る者が減らないのは買う者がいるからだ。我々が買わなければ、犠牲者を一人減らすことができる。当たり前のことだが身にしみた。
悪に加担しないことが最初の一歩。悪と戦うものを応援することが次の一歩。そしてさらにその先に歩を進めている人たちがいる。
それでも、今も貧しい子供たちは生きたまま切り刻まれているのかもしれない
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阪本監督って言うのは、基本不器用なんでしょうね。妙に小賢しい映画が中で、男気を感じます。
少年が変態男にやられた時にはおしりがむずむずしてきちゃいました・・・腰が痛いのもあったけど・・・
田母神問題が話題となってる今、『亡国のイージス』を公開していたらよかったのに・・・そしたらそれも社会派映画と評価されたかもしれないような・・・
本当に男気だけの監督って感じで、その不器用ゆえの面白さがなんとなくやっと判ってきました
>kossyさま
痔かもしれないのでお医者にみてもらうことをお薦めします
内臓切り出さない医者に