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映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

90年代ベスト 外国映画俳優編

2008-03-10 23:21:33 | 私の映画年間ベスト
90年代の私的映画ランキング(90年代総括)に続き、90年代外国映画の俳優(私的)ベストランキングを・・・

90年代マイベスト女優(外国映画編)
 
90年代女優ベスト5
 1位 エマ・トンプソン (日の名残り、ハワーズ・エンド、空騒ぎ、父の祈りを、いつか晴れた日に)
 2位 ミニー・ドライバー (サークル・オブ・フレンズ、スリーパーズ、グッド・ウィル・ハンティング、フラッド)
 3位 ウィノナ・ライダー (悲しみよさようなら、シザーハンズ、リアリティ・バイツ、エイジ・オブ・イノセンス)
 4位 ヘレナ・ボナム・カーター (ハワーズ・エンド、鳩の翼、ファイト・クラブ)
 5位 レナ・オリン (蜘蛛女)


エマ・トンプソン
90年代のイギリス映画(厳密にはイギリスを舞台にしたアメリカ映画が多いのだが)の名作はエマ・トンプソンと共に思い出される作品が沢山。「日の名残り」「から騒ぎ」「父の祈りを」「ピーターズ・フレンズ」「いつか晴れた日に」
90年代を代表する女優として迷いなし。

ミニー・ドライバー
その容貌からケンシロウの名台詞「やはりブタか。ブタはブタ小屋へ行け!」を連想させる、ザ・デブスな女優ミニー・ドライバー。
彼女との邂逅を果たした作品「サークル・オブ・フレンズ」は衝撃の内容だった。
敬虔なクリスチャンにしてブスな容姿を気にするミニー・ドライバーは、そんなの関係ねえよと、優しく彼女を愛するクリス・オドネル(当時既にバットマンの相棒役で有名だった)と純愛生活満喫で幸せいっぱい。しかしクリス・オドネルは彼女のブスな容姿はともかく、ハイティーンの男なら当然抱く、セックスしたくてたまらない症候群に襲われていて、一人欲望と戦い続ける。そんな折ミニーの親友(超美人→この映画をかけた映画館で発行した小冊子の作品紹介の画面写真にも美人の友人の写真が使われていた!!)がクリスを誘惑し、クリスは若き血潮のたぎりに抗えず、ついヤッてしまう・・・
このミニーにとって自虐的ともとれる衝撃の「がんばれ純愛ブス」なイギリス・アイルランド合作映画で、私はがっつりと右手のスマッシュを決められたボルグ・ザンギエフのように映画館というリングの中でKO寸前のダメージを受けたのだった。
しかし、それだけでは90年代女優ベストに残るほどのインパクトではない。
その後ミニーは怒涛のハリウッド電撃侵攻作戦を展開する。
「スリーパーズ」でブラピの恋人、「フラッド」でクリスチャン・スレーターの恋人、「グッド・ウィル・ハンティング」でマット・デイモンの恋人役しかもオスカー候補。その後もタイトル忘れたが美人コンテストに出場するヤングマザーの役とか、あり得ない活動展開を見せたミニー。
どうしちゃったんだハリウッド。かつてイングリッド・バーグマンやオードリー・ヘプバーンやグレース・ケリーを世界中の映画館へ送り出していたハリウッドは、いつの間にデブス帝国に支配されてしまったのだ?
90年代後期は女帝ミニー・ドライバー1世の恐怖政治が敷かれたハリウッド暗黒時代として私の脳裏に深く刻まれている。

ウィノナ・ライダー
自分と同年代なこともあり、「悲しみよさようなら」のアイデンティティに悩む姿や、「リアリティ・バイツ」の夢を諦めたくないけど悲観的な要素しか見出せずいつの間にか堕落していく姿に、性別も国籍も超えた共感を感じさせてくれた。上流階級のお嬢さん役「エイジ・オブ・イノセンス」「愛と精霊の家」もイヤミなくハマるし、お目目ぱっちりで見た目はパーフェクトに俺好みだし、90年代の特に前半はウィノナに恋していた。いつからだろう?本当に堕落しはじめたのは・・・「エイリアン4」あたり?

ヘレナ・ボナム・カーター
私一人で勝手にヘレボナという愛称で呼んでいる女優。
アイヴォリー組女優として可憐な少女を演じたのち、次第にクレージーになっていき2000年代にはティム・バートン組女優へと見事に転身をきめた。
ヘレボナについての濃く熱い解説は↓を参照ください。
「スウィーニー・トッド」の映評

レナ・オリン
ぶっちゃけ「蜘蛛女」一作でのベスト入りなのであるが・・・それにしても強烈なインパクトであった。
「蜘蛛女」以外にも色々と出ているはずだが、90年代最強最恐最狂な「蜘蛛女」のイメージが強すぎて、他の作品など何も思い出せない。(調べてみると「ハバナ」や「NY検事局」にも出ていた)。
蜘蛛女レナ・オリンに匹敵する強烈インパクト女優の登場は、2007年「ブラックブック」のカリス・ファン・ハウテン様まで待たねばならなかった。

*****
90年代マイベスト男優(外国映画編)
90年代男優ベスト10
 1位 チョウ・ユンファ (ゴッド・ギャンブラー完結編、ハードボイルド新・男たちの挽歌、リプレイスメント・キラー)
 2位 トム・ベレンジャー (山猫は眠らない、野獣教師)
 3位 アンソニー・ホプキンス (日の名残り、ハワーズ・エンド、羊たちの沈黙)
 4位 スティーブン・セガール (ハード・トゥ・キル、死の標的、アウト・フォー・ジャスティス、沈黙の戦艦、沈黙の要塞、沈黙シリーズ第三弾・暴走特急、沈黙の断崖、沈黙の陰謀、グリマーマン、エグゼクティブ・デシジョン)
 5位 チャーリー・シーン (ルーキー、ザ・チェイス、ターミナル・ベロシティ、キング・オブ・ハーレー、ホット・ショット)
 6位 ゲイリー・オールドマン (JFK、レオン、エアフォース・ワン、ロスト・イン・スペース)
 7位 ハーヴェイ・カイテル (バグジー、天使にラブソングを、ピアノ・レッスン、レザボアドッグス、ユリシーズの瞳、コップランド)
 8位 ジーン・ハックマン (カナディアン・エクスプレス、許されざる者、クイック&デッド、クリムゾン・タイド、目撃、エネミー・オブ・アメリカ)
 9位 モーガン・フリーマン (ドライビング・ミス・デイジー、許されざる者、ショーシャンクの空に、チェーン・リアクション、アミスタッド、ディープ・インパクト)
 10位 レスリー・チャン (さらば我が愛 覇王別姫、金玉満堂、欲望の翼、君さえいれば 金枝玉葉、上海グランド)

チョウ・ユンファ
まあ、私にとって年代なんて関係なく、永遠のベストアクターなのであるが・・・
それでも90年代に、レンタルビデオでユンファと出会い、男の生き様を教えられ、初めてユンファをスクリーンで観た「ゴッド・ギャンブラー完結編」の感動。そして中国返還に揺れる香港から脱出しハリウッド・デビューを果たす。
「リプレイスメント・キラー」で寡黙な殺し屋(挽歌2の英語を聞く限り、このキャラ設定は正解だ)を演じるユンファ。
この映画では、かつて、ユンファと同じように意気揚々とハリウッド進出を果たしたドイツのスター、ユルゲン・プロフノフ(「Uボート」の艦長)が悪役を演じており、ところがユンファどころかヒロインのミラ・ソルビーノに殺されるヘタレっぷりを見せつけ、ふとその姿にユンファの10年後を観た様な気がしたものだった
果たしてユンファは2000年代ハリウッドで迷走を続ける。
「ギャラ」以外引き受けた理由が思い浮かばない「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「ドラゴンボール」の亀仙人役とか、一方で師匠ジョン・ウーの大作レッド・クリフの主役を降板するなど、私の憧れをぶち壊す残念なニュースばかりが聞こえてくる。
ユンファ!! 「かめはめは!!」とか言わなくていいから、またウー映画でスローモー二丁拳銃見せてくれ!!

トム・ベレンジャー
ほとんど「山猫は眠らない」だけでのランクイン。おっと「野獣教師」もあったっけ。
90年代、狙撃手役と傭兵役で私の心をつかみまくったトム・ベレンジャー。
80年代中期「プラトーン」の悪い軍人役でオスカー候補になり、知名度は一気に上がるが、「影なき男」(←これは傑作だが)、「誰かに見られている」とサスペンス系映画の出演が続き、いまいちパッとしなかったトム。
きっと90年代になって気付いたのだろう。そうか!俺が人気出たのは「プラトーン」じゃん、軍人路線が一番ハマるんだ!!・・・と、思ったかどうかは知らないが、ともかく「山猫」と「野獣」の軍人路線はやはりハマった。
そして2000年代になって奇跡の「山猫は眠らない」シリーズ化へと続く
これからも下手に演技派転向なんてしようとせず、傭兵路線で頑張ってくれ。

アンソニー・ホプキンス
人食いレクターではなく、「ハワーズ・エンド」「日の名残り」でアイヴォリー黄金期を支えた功績を讃えてのランクイン。
他にも「ニクソン」の主演でオスカー候補、「アミスタッド」で第6代大統領アダムズ役(劇中では元大統領)でオスカー候補と、イギリス人のくせにアメリカ実在大統領役が得意だったり、「ジョー・ブラックをよろしく」の大富豪も、「マスク・オブ・ゾロ」の初代ゾロも楽しげに演じていて、安心感のある俳優だ。レクター役も含めて90年代がアンソニー・ホプキンスの全盛期であったが、やはり古き時代のイギリス紳士を演じているのが一番好きだ。

スティーブン・セガール
元CIAの刑事役から、元SEALのコックへと劇的な役柄の大変貌を遂げた90年代セガール。
実際は二作しかないのに邦題の上では2000年代になっても脈々と続く「沈黙」シリーズをスタートさせた90年代セガール。
アル・ゴアより10年も前に北極圏の環境汚染への警鐘を鳴らす作品を自ら監督もした90年代セガール。その作品(要塞)では元CIAの消防士を演じ、タンクローリー5台分のガソリンを豪勢に爆発させ、アラスカの石油採掘基地を爆発炎上させて北極圏の自然破壊を防いでくれた
その後も元CIAの刑事を再び演じたり(グリマーマン)、元○○の設定はないがやたら強い男を演じたり(断崖)と大活躍だった。
格闘アクションとは愛と怒りと根性で圧倒的不利から大逆転するもの・・・という定番を覆し、ピンチなど無縁で悪党を一方的に嬲り殺しにするという新たなアクション映画のフォーマットを作り上げた(ブルース・リーも近いものはあったが)ことは功績として認めていいと思う。
敵がトミー・リー・ジョーンズだろうが、マイケル・ケインだろうが容赦なく嬲り殺しにする様には感動すら覚えた。
ついでに日本に残してきた娘までガメラと共に戦うし、ひょっとしてガメラ対セガール実現か!?と妄想させてくれたことも記しておきたい

チャーリー・シーン
チャーリー・シーンが最も人気があったのは80年代後半、「プラトーン」に「ウォール街」に「メジャーリーグ」のころだったと思うが、実は90年代中期、出る作品ことごとくB級だがハズレなしの信頼のブランドだった時期がある。私などはチャーリーの黄金期はむしろこの時期だったのではと思う。
なぜかSEALの隊長役が似合うマイケル・ビーンとともにテロと戦うバトルアクション「ネイビー・シールズ」
武器と麻薬の密売をする暴走族に潜入した捜査官がいつの間にか暴走族のリーダーになってしまう「キング・オブ・ハーレー」
エンドクレジット除いて90分の上映時間中、85分は車から降りず、女と逃走し続ける「ザ・チェイス」
無茶なスカイダイビングのインストラクターがロシアの情報機関と悪の組織との戦いに巻き込まれ、美人ロシアスパイとともに猛スピードと超高度で悪と戦う奇跡の傑作「ターミナル・ベロシティ」(なぜかディズニー製作)
で、もうノリノリになっちゃってなんでもやってやるぜな感じで出演した「ホットショット」シリーズ
3~4年チャーリーにハズレなしの伝説が続くが、「アライバル」あたりで伝説は終わったと言われている。
まあ、「ネイビー・シールズ」は普通のアクションだし、「ホット・ショット」はありがちなコメディだが、「キング・オブ・ハーレー」「ザ・チェイス」「ターミナル・ベロシティ」は間違いなく異常な作品である。この三作で90年代チャーリーの面白さを感じて欲しい。

ゲイリー・オールドマン
80年代ハリウッド悪役文化はクリストファー・ウォーケン氏が守り続けたが、90年代には世代交代が進んだ。
ポスト・ウォーケンをめぐり、ジョン・マルコビッチ、ゲイリー・シニーズ、スティーブ・ブシェーミ、レイ・リオッタ、ジョン・リスゴーらがしのぎを削る中、頭一つ飛び出したのがミスター・悪・ゲイリー・オールドマンだった。
91年「JFK」で出番は少ないながらもリー・ハーヴェイ・オズワルドの役を演じてメジャー作品に躍り出るや、「蜘蛛女」「レオン」「エアフォース・ワン」で準主役といってもいいくらいのワルっぷりを見せ付けまくる。
個人的には「ロスト・イン・スペース」で演じた悪の科学者が巨大な蜘蛛の化け物に変身したシーンが、ゲイリー・オールドマン悪の華のクライマックスだったと思う

ハーヴェイ・カイテル
タランティーノは嫌いである。レザボアもパルプも嫌いである。しかし彼がティム・ロスとマイケル・マドセンとそしてハーヴェイ・カイテルを「発掘」したことは功績として認めざるを得まい。
ハーヴェイ・カイテルは80年代はスコセッシ映画の常連だったし、90年代初期には「テルマ&ルイーズ」があり「バグジー」でオスカー候補にもなっていたりで、必ずしもタラ公の力ばかりで有名になったわけではないが、「ピアノ・レッスン」と「レザボア・ドッグス」に出演の93年がハーヴェイ・カイテルの超重要年であったことは間違いない。
「天使にラブソングを」や「アサシン」といったB級から、「スモーク」「ユリシーズの瞳」といった芸術作品まで、やたら振幅の大きい俳優活動をしていた90年代。ミニシアター派とメジャー派の、あるいはアクションサスペンス派と芸術派の橋渡し的な役割を担っていた気がする。
ちょっと好きなエピソード。「ユリシーズの瞳」で、テオ・アンゲロプロスの分身とも言うべき映画監督の「A」役をオファーする際、アンゲロプロスは「とても辛い撮影になりますので、返事はよく考えてからでいいですよ」と手紙を書いた。それに対してカイテルは「海兵隊育ちの私に脅しは効きませんよ」と返事を書き、出演を引き受けたという。

ジーン・ハックマン
若手やスターの引き立て役が多かった90年代ジーンである。「許されざる者」のオスカー受賞後、助演が特に多くなった気がする。しかし「クリムゾンタイド」は「フレンチ・コネクション」に匹敵するジーン・ハックマン魂と貫禄の大熱演で、ジーンのベストアクトだと思う。
「目撃」のエロバカ大統領役もさすがの貫禄で・・・笑った。

モーガン・フリーマン
ハリウッドにおける名優の条件は大統領役をやったかどうかである・・・ことはないが、「ディープ・インパクト」で出てきた瞬間に(黒人なのに)大統領に間違いない!!と思わせるのは流石の貫禄であった。
90年代はモーガンにハズレなしと言われていた。2000年代もだ。モーガン・フリーマンが出ていれば安心だ、損はしないだろう・・・と思わせ続けて20年。作品選別を助けてくれる貧乏人の味方である。(そうはいってもたまに「コレクター」とかハズレもある)

レスリー・チャン
青臭さが消えず、ぶっちゃけヘタクソだった80年代レスリーは、90年代「欲望の翼」で見事に演技派への転身を決めた。
チェン・カイコーの「さらば我が愛」で国際映画祭狙いの芸術作品の演技でも見事な求心力を見せ、同時にこの作品あたりから、本人の性的嗜好の変化も作品選別に現れ出したような気がする
ウォン・カーウァイとも抜群の相性の良さを見せたレスリー(2003年の自殺がなければ、カーウァイのフィルモグラフィも随分変わっていたかもしれない)
そうかと思えば、「金玉満堂」や「金枝玉葉」で見せたコメディ演技も絶品。
ジョン・ウーによって鍛えられたフィルムノワール系作品の演技も「上海グランド」でほぼ完成された形で表現する。アンディ・ラウの兄貴分を大物の風格漂わせまくって堂々と演じ、ラストの対決も血が沸き立つほど熱い。あの「挽歌」のキットが、こんな大物になるとは・・・と感慨深かった作品。
とにもかくにもスーパースターだったレスリー。
惜しい男を亡くした。香港のみならず世界的に大きな損失だった。
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