秋から映画撮影に入り週末はほぼ毎週撮影で平日も忙しく、10月以降映画館から足が遠のき、そんなこんなで映画に飢えていた
すこーし暇になったので、会社を定時に上がって映画に行こうと決めた。
時間が合うやつを何本か候補に挙げて、どれに行こうか考える日中はなんとなく楽しい。
で、ついこないだシベリウスの交響曲買ってフィンランドづいてたこともあり、フィンランド映画の「希望のかなた」にした。
しかし、色々悩んだ挙句に巨匠カウリスマキの映画を選んでしまう自分の、映画チョイスの冒険心の無さが、なんとなくカッコわりーとか思ってみたり。
とはいえ、そこはカウリスマキ。すげー面白かった。
ほぼフィックスの画。台詞も表情も究極抑制された映画の強みを全部投げ出したような演出は、それがゆえに映画でしか作り得ない世界をスクリーンに映し出す。
無表情な顔は、カウリスマキのトレードマークかもしれんが、この映画に登場する中東からの難民たちの無表情は、彼ら彼女らのこれまでの苦難を想起させ、小手先だけで作り込んだ芝居なんかよりはるかに心を掴んで揺さぶる。
一方でフィンランド人たちの無表情は…単に面白い。
ああ、やっぱり映画ってモンタージュだ。そして脚本だ。
エイゼンシュテインやヒッチコックの言う俳優に演技なんていらん論もあながち間違いではないと思う。
けれども、カウリスマキ映画はいわゆる熱演はないかもしれないけど、みんなその顔、シワ、太った体もろもろから人間の生き様が香り立つ。
単なるモンタージュだけの面白さではない。説明しないだけ。それでいて現実にカメラの前で起こっていることだけで物語や感情や作家の思いを作っていく。
若さ炸裂系の映画より、熟練の腕が沁みる今の心境。
映画って面白い。こんな普通じゃない描き方で、普通の気持ちを表現できるんだから。
結局、感情の映画なのだと思う。
ほんと観てよかった。実を言えばここまでカウリスマキの映画にグッときたのも初めてのことだったりして、おっさんおばさんジイさんたちのもう頑張り尽くした顔と、だけど楽しく奏でる音楽にジンジンときた映画でした。
それにしても、寿司レストラン始めちゃうシーンは爆笑必至
音楽奏でてるのがいつもジイさんなのもおかしい
たっぷり笑ったフィンランド映画「希望のかなた」をあなたもぜひ!