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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

007私的ベストテン~『ノー・タイム・トゥ・ダイ』について書く前に

2021-12-20 00:32:00 | 過去に観た映画
007私的ベストテン~『ノー・タイム・トゥ・ダイ』について書く前に

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そういえば2021年も終わりそうですが、ここ30年くらいでもっとも映画館に行かなかった1年になってしまいました。そんな年でもこれだけは観ないわけにいくまいと「007ノータイム・トゥ・ダイ」を見たのです。
007大好き青年の私としましてはこの映画の映評だけは年内に書かないわけにいくまいと思っていたのですが…その前に…

007を鑑賞した日。
実は鑑賞直後に、『水面のあかり』の渡辺シン監督と有楽町で飲みまして、その時に渡辺さんが言うのです

「新しい007全然見てないんだけど、ティモシー・ダルトンの007はえらい評判いいじゃないか」

いや、ティモシー・ダルトンの007だってクラシックに片足突っ込んでますけど・・・と思いつつ、私だってガンダムが好きという若者とガンダム話で盛り上がろうとおもったら、そいつが言うガンダムってのがSeedだったりして心砕かれたりもしたことありまして、そういうもんですよ。愛すべき居場所のないオールド人種はどこにでもいるのです。
とはいえ、ショーンからダニエルまで全部のボンドが好きな私として、やっぱりノータイムトゥダイの前に全ボンドをトータルで語っておきたくなったのです。
といっても25作全部語ると疲れるので、私のボンドベスト10ということで(過去に何度か書いたかもしれないけど)

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私の007ベストテン

1位 私を愛したスパイ
2位 オクトパシー
3位 ロシアより愛をこめて
4位 リビング・デイライツ
5位 女王陛下の007
6位 スカイフォール
7位 ゴールドフィンガー
8位 ゴールデンアイ
9位 サンダーボール作戦
10位 ユア・アイズ・オンリー

なお『リビング・デイライツ』は『消されたライセンス』と置換可能、
『ゴールデンアイ』は『トゥモロー・ネバー・ダイ』と置換可能、
『サンダーボール作戦』は『二度死ぬ』と置換可能です。

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よくボンドはやっぱショーン・コネリーが一番だよ~という声を聴きますが、言っちゃなんですがそういうこと言う人ってだいたいお年寄りで、単にその人が一番007を楽しんだ時代に演じていたのがコネリーだったってだけじゃないかなと思います。
やっぱり今の人たちにはボンドと言えばダニエル・クレイグなんでしょうし、それぞれの世代にそれぞれのボンドがいる。それでいいんじゃないでしょうか。
だから「世代」を形成できなかったジョージ・レイゼンビーと、ティモシー・ダルトンの二人は不幸だなと思います。特にダルトンは本来あと2作は撮るくらいには契約期間があったにも関わらず、権利の関係で制作サイドでもめて映画が作られることなく、契約期間が終わってしまいました。しかもその間にベルリンの壁が崩れソ連が崩壊してと、ボンドの活躍の場いっぱいあったろうに。
私は本来ダルトン世代なので失われた彼の時代のボンドについ想いを馳せます。
ただ同時にレンタルビデオ全盛時代でもあったので、映像的に演出的に古臭い(と、当時は思っていた)コネリー時代のボンドより、ロジャー・ムーアのボンドの方が楽しめました。

しかし年を取ってから旧作を見返すと、どのボンドにも魅力がいっぱいあります。

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10位『ユア・アイズ・オンリー』
その前の『私を愛したスパイ』と『ムーンレイカー』が「特撮映画」だったのに比べ、ユアアイズオンリーは明確に「アクション映画」でした。物語は地味で、尻つぼみ感もあるのですが、個々のアクションシーンの楽しさは群を抜いています。

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9位『サンダーボール作戦』
悪の組織が核弾頭盗むって、全アクション映画ファン憧れのシチュエーションじゃないですか?
敵のボスが、失敗した部下を組織内公開処刑するところとか痺れませんか(デスラーとかショッカーとかのノリ)
あちこち楽しくて仕方ないほぼ完成されたボンドムービーです

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8位『コールデンアイ』
ピアース・ブロスナンの007はやたら映像的にハデハデで、中身は薄くてアイデア不足な印象ありますが、それでも最初の二つ『コールデンアイ』と『トゥモロー・ネバー・ダイ』は観ていて楽しくなるシーンが多くアクションシーンも面白いです。加えて『コールデンアイ』はついに007がロシアでロケしたという時代が変わったことを感じる映像と、それとなんといってもファムケ・ヤンセン演じる悪女の魅力ですね。
ところで第15作でティモシー・ダルトン初登場の作品「リビング・デイ・ライツ」は1987年。ダルトンの2作目「消されたライセンス」は1989年。
そしてピアース・ブロスナン初登場の第17作「ゴールデンアイ」は、しばし間をあけて1995年の作品です。
「ゴールデンアイ」のオープニングは旧ソ連の秘密基地にボンドが潜入して例によって大爆発しまくりなオープニングで映画が始まるのですが…
1995年のこの時ソ連という国家はとっくに消えています。そしてティナ・ターナーの歌う主題歌「ゴールデンアイ」がおわって本編が始まるときに、非情なテロップが入ります
「8年後」
…何が非情なの?って思うかもしれませんが、よく考えてみてください。つまり「ゴールデンアイ」のオープニングシーンは1987年の出来事だったってことです。わかりますか。ティモシー・ダルトンのボンドはライセンスだけでなく存在すら消されたのです!!!
だからってピアースを嫌いになることはありませんが、ティモシーへの同情は募ります。

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7位『ゴールドフィンガー』
アメリカじゃ一番人気らしい作品ですが、007映画のフォーマットを作った作品として重要です。オープニング前にアクションシーン、オープニングタイトルで主題歌、ボンドカー、敵の計画がやたら壮大…
主題歌「ゴールドフィンガー」はめちゃめちゃ印象的なイントロとシャーリー・バッシーの歌声が忘れられない名曲ですが歌詞はゴールドフィンガーって奴がどんな男かを歌い上げるアニソンのりというか、「悪魔のショッカー」や「死ね死ね団の歌」や「不思議ソング」と方向性は変わらないんだけど、ジョン・バリーが作曲でジャーリー・バッシーが歌うとなんか名曲みたいな感じになるのが面白いですね
しかし、ガイ・ハミルトン監督。007を4作も監督。その中の一本は大げさでなく映画史に残る「ゴールドフィンガー」だったのに…あとの3作は007史上のワースト3かもしれない酷い作品で。
ボンドを1作目から順にみた人が途中で挫折しそうになるのが、『ダイヤモンドは永遠に』『死ぬのは奴らだ』『黄金銃を持つ男』の7作目~9作目の「ガイハミルトンエリア」です。皆さまお気を付けください。そこを乗り越えたら超絶面白い10作目『私を愛したスパイ』が待っています。くじけないでください。

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6位『スカイフォール』
いや、正直言ってダニエル・クレイグの最初の二つは大嫌いなんですよ。
もう、あんま好きになれねーな…と思っていたときに、次のボンドの監督はサム・メンデスと発表されて…
冗談じゃねーよ、あんなネクラ野郎にボンド映画の監督つとまるわけねーじゃねーかよ!!ふざけんなよ!!
・・・とかなり激怒モードで、それでもきちんと映画館に行って、アラさがししまくって悪口いっぱい書いてやろうくらいな気持ちだったのですが・・・
これが、自分が恥ずかしくなるくらいめちゃくちゃ面白くて!!!!
何がいいって、「ワールド・イズ・ノット・イナフ」あたりから特に顕著だった、ボンドが大ピンチになると通りすがりの誰かに助けてもらうパターンが多かったのだけどスカイフォールのボンドは基本的に自分の機転と力でなんとか切り抜けるところですね
正直スカイフォール以前は嫌いだったサム・メンデスですが、これ以降大好きな監督になってしまいましたw

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5位『女王陛下の007』
ネタバレになるから詳しく書けないのですが、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』は『女王陛下の007』オマージュがものすごく詰まった映画でした。
ジョージ・レイゼンビーはたった1作だけのボンド役で、印象に残りようもないわけですが、彼の唯一の007は超のつく傑作でした。
ボンド役が変わるとアクション重視になるのですが、本作のアクションはどれもかなり面白いです。スキーチェイスといい、カーリング銃撃戦、ボブスレーチェイスと冬季オリンピックかよ!!なアクションですが、どれもスピード感あり最高です。
『ダイヤモンドは永遠に』でショーン・コネリーに戻したのやっぱ失敗だったと思うなあ。せめてもう1作、レイゼンビーで観たかった。

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4位『リビング・デイ・ライツ』
ロジャー・ムーアから若返り、アクションがより迫力を増して見応えたっぷりな作品。体を張ってボンドを演じている感が強いティモシー・ダルトンはホントにかっこよかった。ボンドカーチェイスも楽しく、これが最後となるジョン・バリーの音楽もノリノリ。スパイ映画的なソ連側との駆け引きもなかなか楽しく、シリーズ中屈指の傑作だと思います。ダルトンの2作目『消されたライセンス』も素晴らしいです。『用心棒』のようなストーリーも、私情で動くボンドという珍しさもありやはり傑作。実は初めて劇場で観た007が『消されたライセンス』なので思い入れも強いです。

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3位『ロシアより愛をこめて』
コネリーボンドファンには悪いけど、彼の時代のボンドムービーは演出などに古臭さは否めないところがあります。
とはいえ、いまだに熱く支持されている作品が多いのも事実だし、そして実際面白いです。
でもそんな中でも私が強く『ロシアより~』を推すのは、これが当時の時代性を感じさせるからです。
この作品はリメイクはできないのではないか?
例えば「ゴールドフィンガー」や「サンダーボール作戦」は、現代的なアレンジは要るにしても、わりと大枠そのままで現代でのリメイクにも耐えれる気がします。しかし『ロシアより~』と『ドクターノー』に関しては、この時代だから作りえた、それより前でも後でも作れなかった作品のような気がするのです。
普遍的な面白さではないがゆえに、唯一無二。列車の中でのロバート・ショーとの対決シーンは、今の感性でいえば超地味なんですが、ついつい見てしまいます。たまに音楽をデジタルでなくアナログレコードで聴きたくなるような感覚に近い楽しみ方ができるのです。
あとこれは私見ですが『カジノロワイアル』(ダニエル・クレイグの)は、今の時代にあえてコネリーボンドをやろうとした作品で高評価する向きもありますが、ある種の懐古趣味みたいで私は失敗作だと思ってます。

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2位『オクトパシー』
私はロジャー・ムーアのボンドが好きなんだなと、私的ランキング作って思いました。
ムーア時代のボンドムービーも今やいろんな意味で古いですが。
しかしオクトパシーは面白かったです
オクトパシーと同年にシリーズ本家とは別のプロダクションが、『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』という実は『サンダーボール作戦』のリメイクをよりにもよってショーン・コネリー主演で制作したのもあって、本家が対抗意識燃やしまくって相当気合い入れて作った作品で、あちこち過剰なまでの「ボンド感」があふれています。
オープニングアクションシーンが本編と全く関係なくてショートムービーになっちゃてるところ、最高です。歴代オープニングシーンでブッチギリで最高だと思います。
そして本編が実はフレデリック・フォーサイスの「第四の核」のかなりパクりなんだけど、後発だけにフォーサイスよりずっと面白くしちゃったしたたかさも好きです。
余談ですが映画版の『第四の核』で核テロを企むソ連のスパイをピアース・ブロスナンが演じているのも一興です。

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1位『私を愛したスパイ』
やっぱりバカバカしさと胸アツさとエキサイティングさと奇抜なアイデアが理想的にブレンドされたのは『私の愛したスパイ』じゃないでしょうか。バカバカしいだけならもっとバカバカしい作品もあるんですが、バカバカしさをきちんと感動につなげている点では本作が最高峰だと信じています。
見返すとテンポはかなり悪いんですが、なんだかそのおかげでずっと見続けていられるような幸福感を味わえます。
余談ですがピアース時代の『トゥモロー・ネバー・ダイ』は『私を愛したスパイ』の実質的なリメイクだと思ってます。敵が巨大な船を使うところ、超大国同士の戦争を起こさせようとするところ、敵国の女スパイと一緒に戦い、最後はラブラブなところ
でもド派手なアクションだけで押し切ったトゥモロー~より、やっぱりキャラクターの魅力と敵の人類滅亡を目論むアホみたいなスケール感と、CGでなくミニチュアと巨大セットで本物の爆炎あげる特撮の恍惚感で、私を愛した~の方が映画的な力は強いと思います。
それから私を愛した~はマービン・ハムリッシュによる音楽がまた最高で…
西側とソ連が対立していたあのスパイ映画が面白かった時代が懐かしいなあ…なんて

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てなところで、また素晴らしいスパイ映画でお会いしましょう

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