映画版第一作は
(A)TVシリーズのテイストを踏襲した作品…とも取れるし、
(B)TV版スパイ大作戦など関係ない純粋なデ・パルマ映画…とも取る事ができた。(もちろん何よりもトム映画だったんだけど)
そして第二作。TV版のテイストなど微塵も残さず、徹底的にジョン・ウー映画だった。
そういうわけで第二作があんな映画だったから、第一作は(B)であるとの再評価を固めた私は、m:i:シリーズはスパイ大作戦の映画化ではなく、スタイリッシュな監督たちがトムを使って技を競い合う、監督やりたい放題シリーズとみなした。当初m:i:3の監督にデビッド・フィンチャーが内定していたのも、m:i:シリーズ=監督狂い咲きシリーズであるとの確信を深めたのだった。
しかし、どんな事情があったか詳しく知らんがフィンチャーは降板し、TVで注目されたJ.J.エイブラムズとかいうよく知らん奴が就任。
トムの髪型も一作目にもどり、テーマ曲も超無難なオーケストラアレンジに戻し、まるでやりすぎちゃった2作目を反省し軌道修正するかのような作品になった。監督好き放題シリーズとしての解釈はこの三作目で崩壊。今後もシリーズが続くなら、2作目は「鬼子」扱いされていくことだろう。
・・・の割りに、中途半端に二作目のテイストも残してしまい、「スパイ大作戦」の映画化ってより、普通のアクション映画になっちまった感もいなめない。大スターが二流監督使って娯楽映画撮るとどうしたってそうなっちまうのだ。
以下、感想羅列
---------
【最初のアクションシーン】
もう、スパイ大作戦ってよりSWATって感じ。
「弾はある?」
「充分だ」
そういってスローモージャンピングショット1発で敵を仕留めるトム
SWATっぽい突入シーンがなかなかリアルだったから、おおっと思ったら、こうやってジョン・ウーぽいコミカル&ケレン味アクション入れて、方向性不明。空中分解。
頭の中の爆弾が起動して七転八倒の味方。
どんなホットな映像がくるかと超期待していたら・・・演技だけで済ませる爆発・・・
【フィリップ・シーモア】
全米5月公開だから、アカデミー授賞式の前に撮影は終わってたハズ。トムたちにとってはこれ以上ないタイミングでのオスカー受賞を果たしたフィリップ・シーモア.H。
彼を起用したトムの眼力を流石!とほめるか? フィリップ・シーモアのオスカーゲットのためにトム・マネーが相当額動いたのか?
なんにせよ、フィリップ・シーモアの存在感が、ともするとただの駄作扱いされかねない本作を救っている。
フィリップ・シーモアが変態くさい笑顔ふりまいて登場すると、どんなひどい目にあってくたばるのかと期待する私。オスカー俳優となっちゃった今、「ひどい目にあうデブ」である彼を見れるのも、もしかしたら最後かもしれない。
「飛行機で宙づりにされわめき散らすデブ」の巻…ではフィリップ・シーモア節炸裂であった。
「フィリップ・シーモアがフィリップ・シーモアに変装したトムを演じる」の巻・・・で彼が見せるトムっぽい演技もかなり微笑ましかった。
「変態くさいデブvsイケメンの死闘」の巻…はトムが大人気なく見えるほど、定石どおりにボコボコにされる彼。
頭痛に襲われトムがへろへろになって弱い敵に苦戦するところでは、ウルトラセブンの最終回を彷彿とさせられたが、勿論トムもエイブラムズもそんなもの見てるわけない。
だが、フィリップ・シーモア・・・交通事故で絶命って・・・また中途半端リアルのせいで映画だいなし。フィリップ・シーモアなんだからもっとめちゃくちゃ酷い目にあわせてほしかった。これだから二流監督はダメだなあ・・・
【脚本に関して1・・・丁寧すぎてウザイ】
J.J.エイブラムズはTVシリーズで注目されたとか。チラシによるとストーリーテリングの達人とかなんとか。
シナリオ面に関して言えば丁寧すぎてウザイところも多々見られる。
「イーサンの読唇術」とかあからさまな伏線、いらねーよ。イーサンなら唇くらい読めるに決まってんだろ!!
「妻が看護婦」とか、「妻に丁寧に銃の扱いを教える」とか・・・あーもうもうわかったわかったって感じ。イーサンと結婚するくらいの女なら蘇生術に精通してても、銃の扱いに精通しててもつっこみゃしねーよ!!!
【脚本に関して2・・・マクガフィン】
あと、今回の脚本で、一番大胆なのは、「マクガフィン」としての"ラビットフット"であろう。
『マクガフィン』
トリュフォー著「ヒッチコック」より(注 うろ覚え)
列車の中での2人の男の会話
「あの鞄には何が入っているんだい」
「マクガフィンだよ」
「それはなんだい?」
「高山でライオンを捕まえる道具さ」
「高山にライオンはいないよ」
「そうか、じゃあマクガフィンは何だっていいんだ」
というわけでマクガフィンは別に強力な破壊力を持つ爆弾でなくてもいいし、地球を破滅させる超兵器でなくたっていいし、その威力を見せつける前フリのことでもない。なんだっていいのだ。事件の動機付けになる何かであればいいのだ。物語はその何かを描くことを目的とはしていない。
比較的最近の映画で、見事だったマクガフィンといえジョン・フランケンハイマーの「RONIN」における「アタッシェケース」だった。
「アタッシェケース」の争奪戦がひたすら描かれるこの作品は、動機なんか何でもいいから戦闘のプロ同士の戦いを描きたかったのだ。
・・・で「m:i:3」では「ラビットフット」という「よくわからない何か」が「マクガフィン」となる。
TVシリーズも映画版の前2作でも主人公のターゲットが何であるかの説明は欠かさなかった。それを核に物語は肉付けされていった。
だがそんなものなんだっていいじゃないか、とばかりに、ラビットフットの正体は最後まで明かすことなく、トムとフィリップ・シーモアが戦い続ける。
ただ気になるのは、マクガフィンが何であるかはどうでもいいとはいえ、何のためのマクガフィンかは非常に重要だ。
チームプレイによるスパイ活動を描くための「ラビットフット」?
トムとフィリップ・シーモアの戦いを描くための「ラビットフット」?
イーサンと妻との愛を描くための「ラビットフット」?
物語の目的が不鮮明というか散漫なせいで、マクガフィンどころか、物語全体的にどうだっていいよ・・・ってことになっちまった。
【トゥルーライズへのオマージュ???】
夫の正体はスーパースパイ???って物語が既に「トゥルーライズ」しまくってるのに、中盤トゥルーライズと同じようなロケ地でのアクションシーンまで用意されたら、やっぱあれへのオマージュがこの映画の基本なんだろうか?と思わずにはいれない。
しかしまあ、なんだってわざわざあんな、襲うにはもってこいのルートで護送するのか?飛行機で移動してすぐあの道を通ったわけだが、飛行機で海渡ればいいじゃんとバカでも考えるところだが、戦隊ヒーローもののシナリオにつっこむような大人気ない真似はやめよう。
橋の一部が破壊され、迂回すれば済むものを、わざわざジャンプして越えようとするイーサン。飛距離が足りず、橋から落ちかけて大ピンチと、敵に撃たれずとも一人で勝手にピンチになって一人で勝手に切り抜けるサービス精神の旺盛さ。
そのせいでフィリップ・シーモア取り逃がしちゃったわけで、バカねぇ・・と思いつつフィリップ・シーモアが逃げおおせなければ話が盛り上がらないからいい。
いいのだが、場面設定とかシチュエーション作りとか、もう少し考えてほしかった。
-----------
全体的に笑って突っ込んでほしいのか、リアル描写にマニアックに興奮してほしいのかよくわからない映画でした・・・
*******
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(A)TVシリーズのテイストを踏襲した作品…とも取れるし、
(B)TV版スパイ大作戦など関係ない純粋なデ・パルマ映画…とも取る事ができた。(もちろん何よりもトム映画だったんだけど)
そして第二作。TV版のテイストなど微塵も残さず、徹底的にジョン・ウー映画だった。
そういうわけで第二作があんな映画だったから、第一作は(B)であるとの再評価を固めた私は、m:i:シリーズはスパイ大作戦の映画化ではなく、スタイリッシュな監督たちがトムを使って技を競い合う、監督やりたい放題シリーズとみなした。当初m:i:3の監督にデビッド・フィンチャーが内定していたのも、m:i:シリーズ=監督狂い咲きシリーズであるとの確信を深めたのだった。
しかし、どんな事情があったか詳しく知らんがフィンチャーは降板し、TVで注目されたJ.J.エイブラムズとかいうよく知らん奴が就任。
トムの髪型も一作目にもどり、テーマ曲も超無難なオーケストラアレンジに戻し、まるでやりすぎちゃった2作目を反省し軌道修正するかのような作品になった。監督好き放題シリーズとしての解釈はこの三作目で崩壊。今後もシリーズが続くなら、2作目は「鬼子」扱いされていくことだろう。
・・・の割りに、中途半端に二作目のテイストも残してしまい、「スパイ大作戦」の映画化ってより、普通のアクション映画になっちまった感もいなめない。大スターが二流監督使って娯楽映画撮るとどうしたってそうなっちまうのだ。
以下、感想羅列
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【最初のアクションシーン】
もう、スパイ大作戦ってよりSWATって感じ。
「弾はある?」
「充分だ」
そういってスローモージャンピングショット1発で敵を仕留めるトム
SWATっぽい突入シーンがなかなかリアルだったから、おおっと思ったら、こうやってジョン・ウーぽいコミカル&ケレン味アクション入れて、方向性不明。空中分解。
頭の中の爆弾が起動して七転八倒の味方。
どんなホットな映像がくるかと超期待していたら・・・演技だけで済ませる爆発・・・
【フィリップ・シーモア】
全米5月公開だから、アカデミー授賞式の前に撮影は終わってたハズ。トムたちにとってはこれ以上ないタイミングでのオスカー受賞を果たしたフィリップ・シーモア.H。
彼を起用したトムの眼力を流石!とほめるか? フィリップ・シーモアのオスカーゲットのためにトム・マネーが相当額動いたのか?
なんにせよ、フィリップ・シーモアの存在感が、ともするとただの駄作扱いされかねない本作を救っている。
フィリップ・シーモアが変態くさい笑顔ふりまいて登場すると、どんなひどい目にあってくたばるのかと期待する私。オスカー俳優となっちゃった今、「ひどい目にあうデブ」である彼を見れるのも、もしかしたら最後かもしれない。
「飛行機で宙づりにされわめき散らすデブ」の巻…ではフィリップ・シーモア節炸裂であった。
「フィリップ・シーモアがフィリップ・シーモアに変装したトムを演じる」の巻・・・で彼が見せるトムっぽい演技もかなり微笑ましかった。
「変態くさいデブvsイケメンの死闘」の巻…はトムが大人気なく見えるほど、定石どおりにボコボコにされる彼。
頭痛に襲われトムがへろへろになって弱い敵に苦戦するところでは、ウルトラセブンの最終回を彷彿とさせられたが、勿論トムもエイブラムズもそんなもの見てるわけない。
だが、フィリップ・シーモア・・・交通事故で絶命って・・・また中途半端リアルのせいで映画だいなし。フィリップ・シーモアなんだからもっとめちゃくちゃ酷い目にあわせてほしかった。これだから二流監督はダメだなあ・・・
【脚本に関して1・・・丁寧すぎてウザイ】
J.J.エイブラムズはTVシリーズで注目されたとか。チラシによるとストーリーテリングの達人とかなんとか。
シナリオ面に関して言えば丁寧すぎてウザイところも多々見られる。
「イーサンの読唇術」とかあからさまな伏線、いらねーよ。イーサンなら唇くらい読めるに決まってんだろ!!
「妻が看護婦」とか、「妻に丁寧に銃の扱いを教える」とか・・・あーもうもうわかったわかったって感じ。イーサンと結婚するくらいの女なら蘇生術に精通してても、銃の扱いに精通しててもつっこみゃしねーよ!!!
【脚本に関して2・・・マクガフィン】
あと、今回の脚本で、一番大胆なのは、「マクガフィン」としての"ラビットフット"であろう。
『マクガフィン』
トリュフォー著「ヒッチコック」より(注 うろ覚え)
列車の中での2人の男の会話
「あの鞄には何が入っているんだい」
「マクガフィンだよ」
「それはなんだい?」
「高山でライオンを捕まえる道具さ」
「高山にライオンはいないよ」
「そうか、じゃあマクガフィンは何だっていいんだ」
というわけでマクガフィンは別に強力な破壊力を持つ爆弾でなくてもいいし、地球を破滅させる超兵器でなくたっていいし、その威力を見せつける前フリのことでもない。なんだっていいのだ。事件の動機付けになる何かであればいいのだ。物語はその何かを描くことを目的とはしていない。
比較的最近の映画で、見事だったマクガフィンといえジョン・フランケンハイマーの「RONIN」における「アタッシェケース」だった。
「アタッシェケース」の争奪戦がひたすら描かれるこの作品は、動機なんか何でもいいから戦闘のプロ同士の戦いを描きたかったのだ。
・・・で「m:i:3」では「ラビットフット」という「よくわからない何か」が「マクガフィン」となる。
TVシリーズも映画版の前2作でも主人公のターゲットが何であるかの説明は欠かさなかった。それを核に物語は肉付けされていった。
だがそんなものなんだっていいじゃないか、とばかりに、ラビットフットの正体は最後まで明かすことなく、トムとフィリップ・シーモアが戦い続ける。
ただ気になるのは、マクガフィンが何であるかはどうでもいいとはいえ、何のためのマクガフィンかは非常に重要だ。
チームプレイによるスパイ活動を描くための「ラビットフット」?
トムとフィリップ・シーモアの戦いを描くための「ラビットフット」?
イーサンと妻との愛を描くための「ラビットフット」?
物語の目的が不鮮明というか散漫なせいで、マクガフィンどころか、物語全体的にどうだっていいよ・・・ってことになっちまった。
【トゥルーライズへのオマージュ???】
夫の正体はスーパースパイ???って物語が既に「トゥルーライズ」しまくってるのに、中盤トゥルーライズと同じようなロケ地でのアクションシーンまで用意されたら、やっぱあれへのオマージュがこの映画の基本なんだろうか?と思わずにはいれない。
しかしまあ、なんだってわざわざあんな、襲うにはもってこいのルートで護送するのか?飛行機で移動してすぐあの道を通ったわけだが、飛行機で海渡ればいいじゃんとバカでも考えるところだが、戦隊ヒーローもののシナリオにつっこむような大人気ない真似はやめよう。
橋の一部が破壊され、迂回すれば済むものを、わざわざジャンプして越えようとするイーサン。飛距離が足りず、橋から落ちかけて大ピンチと、敵に撃たれずとも一人で勝手にピンチになって一人で勝手に切り抜けるサービス精神の旺盛さ。
そのせいでフィリップ・シーモア取り逃がしちゃったわけで、バカねぇ・・と思いつつフィリップ・シーモアが逃げおおせなければ話が盛り上がらないからいい。
いいのだが、場面設定とかシチュエーション作りとか、もう少し考えてほしかった。
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
なんだか美味しそうなネーミングですね~マクガフィン。
それにしてもトム・クルーズと共演したらオスカー像が近いというジンクスは今回も守られたってことですね。
でもトップガン組は、アンソ\ニー・エドワーズもケリー・マクギリスもヴァルもメグも獲ってないよ・・と、突っ込もうと思ったら・・・ティム・ロビンスがちょい役で出てたっけ
シリーズの「1」を(A)と解釈していた私は、どんどん脱力感が増してきています。
やはりあれは(B)だったのですね~。
ラビットフットというマクガフィンとトゥルーライズの双方に媚び売ってるシナリオはスカスカですけど、トムくんの頑張りに、そこそこ楽しめた今作でした。
いや結局「A」だったんじゃ・・・との判断で、いまやただのトム映画となっちゃったと思うんであります
>にら様
必死こいて走ってるトムの姿はけっこう笑えました。
なんか面白い走り方ですよね
某団体の広告塔で、かつ集金システムの優良コンテンツたる本作品は、ますます娯楽化が強まる感じがします。
ワグナー=クルーズというロゴがずいぶん目立った気がします・・・。
本作は、どうでもいい映画。楽しめりゃいい。映画を難しく眉間に皺をよせて議論するものではない。楽しいでしょうが、という娯楽に徹底した中の娯楽作品でした。こういうジェットコースター、サーカスアクションムービーを観ると、とても楽で、ほっとします。大の大人が寄ってたかって、観客を喜ばせることだけを考えて撮る。いい光景です。こんな世界で仕事してみたいものです。
読ませてもらい、感謝します。 冨田弘嗣
もっとはしゃいで広告塔として暴走すればおもしろいのですがね
>富田さま
私もジェットコースターサーカスアクションムービー撮りたいです。