「シービスケット」のミニチュア版という印象の映画。迫力も感動の度合いもミニチュア化されているような・・・
しかし、そもそも「シービスケット」をさほど評価していない私にとっては、これくらい素朴な作りの方が、伝えたいことがきちんと伝わっていいんでないだろうか、と思ったりもする。
映画と全く関係ない話だが、ボクサーがパンチを打ち出す直前には「予備動作」というものが生じるらしい。
ため、ひねり、呼吸、目線、一人一人のくせ・・・そういったものがパンチを打ち出す直前のコンマ何秒かに発生する。
それを予備動作といい、ボクサーは予備動作から相手の次のパンチを予測して、かわしたりガードを固めたりカウンターの準備をしたりする(らしい)
一流のボクサーほど予備動作は小さくなり、相手に次の手を予測させにくくしたり、逆に予備動作を逆手にとってフェイントかけたりするという。
(なお、私のボクシング知識は、40%が「あしたのジョー」から、40%が「はじめの一歩」から、10%が「ロッキー」から(笑)得ているので、その辺を汲み取って話半分で聞いてください)
ばんえい競馬の人情話でなにゆえボクシング談義から入るのかと言えば、すごく予備動作の大きい映画だな・・・と思ったからだ。
根岸吉太郎という監督、そんなに色々見てないけど、この映画は泣かず飛ばずのプロボクサーの4回戦みたいな映画だった。
予定調和の集合体といえるストーリーを持つこの映画は、その後半、様々に展開させたエピソードをまとめあげ、大団円になだれこませようとした結果、終盤は筋を追うだけになっている。
中盤までに配置していたエピソードをお馬さんの復活レースで一つに集約させる、その予備動作としての説明シーンが長くくどい。
感動のラストシーンという大砲を撃つための予備動作が見え見えで、こっちはくるぞくるぞと身構えて、歯食いしばって、ガードかためて、インパクトの瞬間体を流してダメージを低減させようと心の準備を固めてしまう。
「シービスケット」なんかは、くるとわかっちゃいるけど、ガードごとぶっ飛ばされ気が付くとテンカウントとられてる、力押しの一発。ジョルトカウンターかデンプシーロールか
雪に願うことは、まあ凡人の放つただのストレート。くるとわかってりゃどうってことない一発。
それでも、前半から中盤にかけて、根岸吉太郎は的確にジャブやフックをパンパン繰り出し、俺はそれをきれいにもらってしまった。
シナリオ的なジャブは・・・
「急に母さんや兄さんに会いたくなって、気が付いたらここに来てたんだ」でほろり
ぼけた母ちゃん、息子のことがわからないで、涙一滴
その直後の雪玉なげて無邪気な笑顔で元気付ける佐藤浩市で、また泣く。
映像的なジャブは・・・
重量感ある馬の映像
馬のトレーニングシーンの美しさ
真っ白い世界から始まり、雪解けへと進む北国の冬
演出面でのジャブは
小泉今日子の控えめな使い方
小澤征悦が伊勢谷友介を罵倒する際の周囲の人間へのきめ細やかな段取り
話が行き詰まってきたら、まるでコーナーに追い詰められたボクサーがクリンチで仕切りなおししようとするかのように、無難で普通でステロタイプで予定調和なストーリーテリングに逃げて減点されないようにする。
大感動の必殺技炸裂でKO勝ちとはいかないが、前半こまめなジャブでポイント稼ぎ、減点を恐れて冒険しない試合運びで、最後は判定勝ち。
まばらな客席。ちらほら寝てる客。いかにも4回戦くらいの場末の拳闘の試合場みたいな映画であった。
結構感動して、それなりに満足した映画だったのに、批判してるみたいな物言いになってしまった。
ボクシングに例えた話のついでに、バイオレンス描写について少し
素朴なお話、北国と馬と家族と人情の優しさあふれるお話でありながら、佐藤浩市が伊勢谷友介をぶんなぐる描写がやけにバイオレント
・浩市の裏拳喰らった伊勢谷友介が派手に一回転
・浩市のストレートまともにもらった友介がぶっとんで神棚にバッコリ
・夜遊び朝帰りの出口哲也に浩市の執拗な鉄拳制裁
とても面白い。面白いとは笑えるという意味でだ。
演出的に深い意味はないのだろう。
バイオレンス好きなんだよ!!
という監督の魂の叫びが聞こえる
*******
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
しかし、そもそも「シービスケット」をさほど評価していない私にとっては、これくらい素朴な作りの方が、伝えたいことがきちんと伝わっていいんでないだろうか、と思ったりもする。
映画と全く関係ない話だが、ボクサーがパンチを打ち出す直前には「予備動作」というものが生じるらしい。
ため、ひねり、呼吸、目線、一人一人のくせ・・・そういったものがパンチを打ち出す直前のコンマ何秒かに発生する。
それを予備動作といい、ボクサーは予備動作から相手の次のパンチを予測して、かわしたりガードを固めたりカウンターの準備をしたりする(らしい)
一流のボクサーほど予備動作は小さくなり、相手に次の手を予測させにくくしたり、逆に予備動作を逆手にとってフェイントかけたりするという。
(なお、私のボクシング知識は、40%が「あしたのジョー」から、40%が「はじめの一歩」から、10%が「ロッキー」から(笑)得ているので、その辺を汲み取って話半分で聞いてください)
ばんえい競馬の人情話でなにゆえボクシング談義から入るのかと言えば、すごく予備動作の大きい映画だな・・・と思ったからだ。
根岸吉太郎という監督、そんなに色々見てないけど、この映画は泣かず飛ばずのプロボクサーの4回戦みたいな映画だった。
予定調和の集合体といえるストーリーを持つこの映画は、その後半、様々に展開させたエピソードをまとめあげ、大団円になだれこませようとした結果、終盤は筋を追うだけになっている。
中盤までに配置していたエピソードをお馬さんの復活レースで一つに集約させる、その予備動作としての説明シーンが長くくどい。
感動のラストシーンという大砲を撃つための予備動作が見え見えで、こっちはくるぞくるぞと身構えて、歯食いしばって、ガードかためて、インパクトの瞬間体を流してダメージを低減させようと心の準備を固めてしまう。
「シービスケット」なんかは、くるとわかっちゃいるけど、ガードごとぶっ飛ばされ気が付くとテンカウントとられてる、力押しの一発。ジョルトカウンターかデンプシーロールか
雪に願うことは、まあ凡人の放つただのストレート。くるとわかってりゃどうってことない一発。
それでも、前半から中盤にかけて、根岸吉太郎は的確にジャブやフックをパンパン繰り出し、俺はそれをきれいにもらってしまった。
シナリオ的なジャブは・・・
「急に母さんや兄さんに会いたくなって、気が付いたらここに来てたんだ」でほろり
ぼけた母ちゃん、息子のことがわからないで、涙一滴
その直後の雪玉なげて無邪気な笑顔で元気付ける佐藤浩市で、また泣く。
映像的なジャブは・・・
重量感ある馬の映像
馬のトレーニングシーンの美しさ
真っ白い世界から始まり、雪解けへと進む北国の冬
演出面でのジャブは
小泉今日子の控えめな使い方
小澤征悦が伊勢谷友介を罵倒する際の周囲の人間へのきめ細やかな段取り
話が行き詰まってきたら、まるでコーナーに追い詰められたボクサーがクリンチで仕切りなおししようとするかのように、無難で普通でステロタイプで予定調和なストーリーテリングに逃げて減点されないようにする。
大感動の必殺技炸裂でKO勝ちとはいかないが、前半こまめなジャブでポイント稼ぎ、減点を恐れて冒険しない試合運びで、最後は判定勝ち。
まばらな客席。ちらほら寝てる客。いかにも4回戦くらいの場末の拳闘の試合場みたいな映画であった。
結構感動して、それなりに満足した映画だったのに、批判してるみたいな物言いになってしまった。
ボクシングに例えた話のついでに、バイオレンス描写について少し
素朴なお話、北国と馬と家族と人情の優しさあふれるお話でありながら、佐藤浩市が伊勢谷友介をぶんなぐる描写がやけにバイオレント
・浩市の裏拳喰らった伊勢谷友介が派手に一回転
・浩市のストレートまともにもらった友介がぶっとんで神棚にバッコリ
・夜遊び朝帰りの出口哲也に浩市の執拗な鉄拳制裁
とても面白い。面白いとは笑えるという意味でだ。
演出的に深い意味はないのだろう。
バイオレンス好きなんだよ!!
という監督の魂の叫びが聞こえる
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あの裏拳は本当に当たってしまったんじゃないかと思えるほどリアルでした。
あのシーンの佐藤浩市の表情をスローで見てみたいです。
一番好きなボクシング漫画は「がんばれ元気」です・・・
「9番目の男」というマイナーなコミックも・・・