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イントゥ・ザ・ワイルド [監督:ショーン・ペン]

2008-09-22 07:36:13 | 映評 2006~2008
個人的評価: ■■□□□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]

かつて監督として「インディアンランナー」や「クロッシングガード」といった傑作を生み出したショーン・ペン。久々の彼の監督作品は・・・独善的でつまらない映画だった。

一応はロードムービーである。大学を卒業し、親(金持ち)の援助を捨て、クレジットカードを捨て(携帯電話はもともと無い時代だったか)、文明を捨て自然とともに生きようとした青年。彼の目的地はアラスカ。
・・・なのだが映画スタート時点で青年はアラスカに着いていて、アラスカでの生活を開始してしまう。
いきなりゴールから始まるロードムービー。変わっているといえば変わっている。

ヒッピーが沢山いた時代を生きた人たちなら、この主人公に共感できる部分はあるのかもしれない。やがて消えゆくヒッピーたちの挽歌の赴きも無いではない。
しかし私には主人公の行動は理解できないし、感情移入もできない。

自然とともに生きようとしていたわりには、アラスカで昔誰かが住処にしていたと思しき廃車バスを見つけると、その中のマットレスや炊事用具を嬉しそうに使う。微妙に文明の産物を享受していてちょっと冷める。
また親や妹を捨て社会の一員にもならずにワイルドに生きる姿勢も、誰に迷惑をかけてるわけでもないから勝手にすればいいのだが、その行動力をすこしは人様のために使ってはどうか・・・と思ってしまう。
しかし、金も親も保証人も資格もなくても結構生きていけるものなんだな・・・とは思った。

アラスカに向かうまでの回想と、アラスカでの生活ぶりとが交互に進んでいくが、回想パートとアラスカパートは特に相関があるでもなく、ただ目標達成済みの物語と無目的の生活とが繰り返されるだけで、次の展開を期待させる吸引力がない。
よって、手つかずの自然を映す際のスローモーションが、興味の持てないストーリーの尺を無駄に長くしているだけのように感じてしまう。

そんなわけで、アラスカパートでの主人公が何を学び、どう成長し、どのようなオチに帰結させるのか・・・ただそれだけが興味の対象となる。
だが主人公はアラスカに憧れていた時と変わらぬ気持ちのまま、反省したり悟ったりするわけでもなく、衰弱してのたれ死んでしまう。
見終わって思うのは、やはり映画が始まった時点で物語は終わっていた・・・ということだ。
この映画、要するに、「イケメンがのたれ死にする話」である。

見所はエミール・ハーシュの体当たり演技か。
カヌーでの激流下りなど吹き替えなしで演じているようだし、衰弱していく姿も実際に肉を削ぎ痩せることで表現している。
アカデミー賞では編集賞と助演男優賞(ハル・ホルブルック)でノミネートされているが、どちらもそれほど魅力的には感じなかった。特に編集などいたずらに冗長にしていただけだったようにしか思えない。

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