ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
-------
個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
【映評概要】
きれいすぎる起承転結の構成と、複雑な人間関係で血の通ったキャラクターを作り出した見事な脚本。そしてペネロペ・クルス。華やかで激しくて美しい。見応えたっぷりの女優の映画にして緻密なドラマ。やっぱりアルモドバルは外さない。観てよかったぁぁぁ!!!っと心の底から思える、めちゃくちゃ面白い映画だった!!
-----
【映評詳細・・・ネタバレ】
ペネロペ、すげー。マジ惚れ。世界で二番目に好きだ。一番は妻。
女優も凄いのだが、脚本もものすごく面白い。
主人公の元映画監督、今は失明した初老の作家。
監督は本名のマテオとして、作家ではペンネームのハリーとして活動していた彼が、失明により本来の自分を失い、仮の自分が生き残った旨を伝える冒頭のモノローグ。その喪失感が心をつかむ。
にもかかわらず道路を一緒にわたってくれた親切な若くて美人の女を真っ昼間から自宅に連れ込んでセックスを始める、その落差。いったいどんな面白い人生を送ってきたのかと登場から彼の人生への興味をかき立てる、巧すぎる導入。
そうかと思えばその家に次々と我が家のごとく入ってくる初老の女と、イケメン男子。「作家ハリー」とは家族なのか友人なのか仕事仲間なのか判然としない我々観客だが、それとと同様に若い女も事態が飲み込めずにオロオロしている様が面白い。
わけがわからない状況を見てて楽しいものに変えてしまう辺りが巧い。
(初老の女は、「作家ハリー」のマネージャー、ジュディット。イケメン男子はその息子)
そしてドキュメンタリー監督が自分の父に関する物語を作りたいと「作家ハリー」に脚本執筆を依頼。
その父親と過去に何事かあったらしい「作家ハリー」。
物語に関連しそうな人物たちを手際よく盤面に配置するような序盤。
そうして「作家ハリー」はイケメン男子ディエゴに語りだす。
「監督マテオ」の愛と嫉妬と悲しみの物語を・・・
こうして起承転結における起の部は終わり、承の部へ
ここから10数年前の回想シーンを主体に物語は進み、そして、いよっ、待ってましたとばかりに最高にいい女ペネロペ・クルスの登場だ。じらしにじらして遂に登場するいい女。この出方。いいねえ。
いや、その前にも回想でちろっと登場していたかな?何にせよペネロペが輝きだし、物語が大きく動き出すのは監督と女優の恋が始まってからだ。
などと書いていると、この映画きれいに「起承転結」の構成になっていたことに気づいた。
興味をかき立てながら後々重要となる人物配置を済ませていく「起」
いよいよ主演女優登場で物語の根幹となる監督と女優の愛の物語が紡がれていく「承」
やがて起こる悲劇とその裏に隠された事情、さらには裏の裏のまさかまさかの事情が明かされる「転」
そして再び現代において物語の関係者たちが愛の嫉妬と情欲の物語に決着をつけ大団円を迎える「決」
脚本とはかくあるべし、と思わせる。
無駄なく隙なく、深く熱く悲しくそして最後にスッキリ。
この見事なホンを支えているのは、キャラクターたちの魅力である。
監督、女優、女優の夫の老実業家、老実業家の息子、監督のマネージャー、その息子、この6人の10数年の複雑かつ激しい愛と嫉妬。やや定型的な人物設定ではあるが、物語の中でキャラたちを大きく振り回し、いい奴も悪い奴も皆が活き活きとしていている。複雑な人間関係も話を難しくするのでなく、キャラに魂を入れるのに役立っている。
けどもなんといっても、本作を何よりも輝かせているのはペネロペ・クルス演じるレナである。
監督マテオと激しく求め合うときのあの至福そのものといった顔。演技であんな顔ができるなんて信じられない。
監督マテオとゴロゴロしながらテレビを見ている姿にすら満ち足りた思いが顔に出ている。
そして夫とのベッドシーンにおける自己嫌悪のあまり壊れてしまったような姿。
アルモドバルお得意の極彩色な世界を彩るペネロペの衣装。
マリリンに似せたりオードリーに似せたりとした遊びも全然イヤミでない。
苦く悲しい思い出の中でも彼女は様々な姿、色とりどりの衣装、ありとあらゆる感情と表情で、常に一番輝き続ける。
華やかで激しくて美しい。見応えある女優の映画だ。
やっぱりアルモドバルは外さない。観てよかったぁぁぁ!!!っと心の底から思える、めちゃくちゃ面白い映画だった!!
[追記1]
---印象的な場面1---
ペネロペが、隠し撮り映像を見ている夫の映写室に乗り込み、自分で自分の映像にアフレコするように発言を再現する場面。
夫を激しくなじりながら、何気にアフレコ的にも一発OKの巧さを見せる。
---印象的な場面2---
事故の後、ディエゴとともに海岸に立つ監督マテオを見るマネージャー・ジュディット。浜辺には意外と人が多くキャッキャキャッキャと楽しげな声が響いている。失明した彼には思い出の海岸に響く歓声がどう聞こえるのか・・・寂しく悲しい心情と、海岸の楽しげな雰囲気との対比が見事だ。
[追記2]
松本ではまだ未公開のこの映画。東京マラソン出場のため上京した際の、出走前日に鑑賞。あまりの面白さにかなりテンション上がり、そのおかげでマラソンも完走できました。
********
↓面白かったらクリックしてね
にほんブログ村
人気blogランキング
自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
-------
個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
【映評概要】
きれいすぎる起承転結の構成と、複雑な人間関係で血の通ったキャラクターを作り出した見事な脚本。そしてペネロペ・クルス。華やかで激しくて美しい。見応えたっぷりの女優の映画にして緻密なドラマ。やっぱりアルモドバルは外さない。観てよかったぁぁぁ!!!っと心の底から思える、めちゃくちゃ面白い映画だった!!
-----
【映評詳細・・・ネタバレ】
ペネロペ、すげー。マジ惚れ。世界で二番目に好きだ。一番は妻。
女優も凄いのだが、脚本もものすごく面白い。
主人公の元映画監督、今は失明した初老の作家。
監督は本名のマテオとして、作家ではペンネームのハリーとして活動していた彼が、失明により本来の自分を失い、仮の自分が生き残った旨を伝える冒頭のモノローグ。その喪失感が心をつかむ。
にもかかわらず道路を一緒にわたってくれた親切な若くて美人の女を真っ昼間から自宅に連れ込んでセックスを始める、その落差。いったいどんな面白い人生を送ってきたのかと登場から彼の人生への興味をかき立てる、巧すぎる導入。
そうかと思えばその家に次々と我が家のごとく入ってくる初老の女と、イケメン男子。「作家ハリー」とは家族なのか友人なのか仕事仲間なのか判然としない我々観客だが、それとと同様に若い女も事態が飲み込めずにオロオロしている様が面白い。
わけがわからない状況を見てて楽しいものに変えてしまう辺りが巧い。
(初老の女は、「作家ハリー」のマネージャー、ジュディット。イケメン男子はその息子)
そしてドキュメンタリー監督が自分の父に関する物語を作りたいと「作家ハリー」に脚本執筆を依頼。
その父親と過去に何事かあったらしい「作家ハリー」。
物語に関連しそうな人物たちを手際よく盤面に配置するような序盤。
そうして「作家ハリー」はイケメン男子ディエゴに語りだす。
「監督マテオ」の愛と嫉妬と悲しみの物語を・・・
こうして起承転結における起の部は終わり、承の部へ
ここから10数年前の回想シーンを主体に物語は進み、そして、いよっ、待ってましたとばかりに最高にいい女ペネロペ・クルスの登場だ。じらしにじらして遂に登場するいい女。この出方。いいねえ。
いや、その前にも回想でちろっと登場していたかな?何にせよペネロペが輝きだし、物語が大きく動き出すのは監督と女優の恋が始まってからだ。
などと書いていると、この映画きれいに「起承転結」の構成になっていたことに気づいた。
興味をかき立てながら後々重要となる人物配置を済ませていく「起」
いよいよ主演女優登場で物語の根幹となる監督と女優の愛の物語が紡がれていく「承」
やがて起こる悲劇とその裏に隠された事情、さらには裏の裏のまさかまさかの事情が明かされる「転」
そして再び現代において物語の関係者たちが愛の嫉妬と情欲の物語に決着をつけ大団円を迎える「決」
脚本とはかくあるべし、と思わせる。
無駄なく隙なく、深く熱く悲しくそして最後にスッキリ。
この見事なホンを支えているのは、キャラクターたちの魅力である。
監督、女優、女優の夫の老実業家、老実業家の息子、監督のマネージャー、その息子、この6人の10数年の複雑かつ激しい愛と嫉妬。やや定型的な人物設定ではあるが、物語の中でキャラたちを大きく振り回し、いい奴も悪い奴も皆が活き活きとしていている。複雑な人間関係も話を難しくするのでなく、キャラに魂を入れるのに役立っている。
けどもなんといっても、本作を何よりも輝かせているのはペネロペ・クルス演じるレナである。
監督マテオと激しく求め合うときのあの至福そのものといった顔。演技であんな顔ができるなんて信じられない。
監督マテオとゴロゴロしながらテレビを見ている姿にすら満ち足りた思いが顔に出ている。
そして夫とのベッドシーンにおける自己嫌悪のあまり壊れてしまったような姿。
アルモドバルお得意の極彩色な世界を彩るペネロペの衣装。
マリリンに似せたりオードリーに似せたりとした遊びも全然イヤミでない。
苦く悲しい思い出の中でも彼女は様々な姿、色とりどりの衣装、ありとあらゆる感情と表情で、常に一番輝き続ける。
華やかで激しくて美しい。見応えある女優の映画だ。
やっぱりアルモドバルは外さない。観てよかったぁぁぁ!!!っと心の底から思える、めちゃくちゃ面白い映画だった!!
[追記1]
---印象的な場面1---
ペネロペが、隠し撮り映像を見ている夫の映写室に乗り込み、自分で自分の映像にアフレコするように発言を再現する場面。
夫を激しくなじりながら、何気にアフレコ的にも一発OKの巧さを見せる。
---印象的な場面2---
事故の後、ディエゴとともに海岸に立つ監督マテオを見るマネージャー・ジュディット。浜辺には意外と人が多くキャッキャキャッキャと楽しげな声が響いている。失明した彼には思い出の海岸に響く歓声がどう聞こえるのか・・・寂しく悲しい心情と、海岸の楽しげな雰囲気との対比が見事だ。
[追記2]
松本ではまだ未公開のこの映画。東京マラソン出場のため上京した際の、出走前日に鑑賞。あまりの面白さにかなりテンション上がり、そのおかげでマラソンも完走できました。
********
↓面白かったらクリックしてね
にほんブログ村
人気blogランキング
自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP