おお、市川崑監督、石坂浩二主演の「犬神家の一族」!!なつかしいなあ。こんな古い映画やってくれるなんて憎いねえ・・・うんうんまさしく大好きだったあの映画だ。あのテーマ曲をまた聞けるなんて感激だなあ。あれ、でも石坂浩二ってこんなに老けてたかなあ。ホテルの女中ってあんな不思議キャラだったっけかなあ・・・
そっくりリメイク
そんなこんなで、久しぶりに「犬神家の一族」でも観ようかとレンタルビデオに行き見てみたらやっぱり面白かった・・・ってのと同じ感覚を味わえるくらいの、そのまんまリメイクであった。脚本はもちろん絵コンテまで古いのを使っているのだろうかと疑うくらい。そういう意味では300円くらいでレンタルした方が得なのかもしれない。
目新しさは全くなく、なんだって91才にもなる巨匠が今更このような映画史に100%残らない映画の撮影のために余命を削らねばならないのかと疑問を感じつつ・・・
まるっきり同じなだけに、どうしようもなく面白いんだよ。困った。
リメイク版での女中の変化
しかし主演まで同じにしたために生じた、奇妙な感覚。
金田一とホテルの女中(深田恭子)とのやりとり。
「何が一番おいしかったですか?」「生卵」(むすっとする女中)
「どうしたの?食べないの?」「だって食べてる暇がないんですもの」「そう、すいませーんお勘定」(その後、私が払います、いいや私が・・・なやりとり。)
(台詞はうろ覚え)
オリジナルとほとんど(全く?)変わらないこのやりとり。
ここでは、あの風貌な割に何故だか女にモテてしまう金田一・・・というキャラが前提にある。女中が金田一に魅力(言うまでもなく性的魅力である)を感じているのにその気持ちが伝わらない。そんな気持ちのズレが笑いを生むのであるが、リメイク版の年老いた石坂浩二と深田恭子では年齢差があまりに大きく、女中が金田一に性的魅力を感じるようには思えない。
オリジナルでは金田一は女中の気持ちを知った上でわざとハグラカしているともとることができるし、女中の気持ちを察しない鈍感さに可愛げを感じたりもできる。しかしリメイクの年老いた石坂浩二では、単に「興味がない」としかとることができず、深みにかけるのである。
しかし、巨匠・市川崑にはそんな問題は勿論わかっていたのかもしれない。
深田恭子の芝居が、意図したものかどうかわからないが、不思議ちゃん天然キャラになっている。
オリジナルではそれなりに世の中のことを知っている普通の大人の女だった女中が、台詞はそのままだが萌えキャラっぽい女に置き換えられる。
オリジナルでは女中の気持ちが通じなかった金田一。リメイクでは金田一のはぐらかしが女中に通じない。だからオリジナルと明確に異なる本作のエピローグにおいて女中は新台詞「せっかく生卵もってきたのに」を喋る。オリジナルで女中が侮辱されたと憤る台詞を、リメイク版ではそのまま飲み込んでいる。
同じ台詞なのに、情熱女vs鈍感男のやりとりは、天然女vs鈍感男のWボケコントへと進化したのである。
完全オリジナルのエピローグ
さて、オリジナルと大きく異なるエピローグでは、ラストカットも思わせぶりなものに置き換わっている。
オリジナル版では一目を忍んでこそこそと列車に乗り込んでいた金田一を引きのショットで撮っていた(はずだ)。
ところがオリジナルでは田舎道をてくてく歩いている金田一の後ろ姿になる。しかも金田一にわざわざ振り返らせた上に顔のドアップまで挿入。何やら万感の思いを込めた様な表情でスクリーンから客席を見つめる金田一。老匠・市川崑が映画館の観客に向かって「今までありがとう!!」と言っているような気がした。そしてふたたび引きのショットになりてくてくと我々に背中をみせて去っていく金田一。
何のつもりですか!?最後のお別れのつもりじゃないですよね!?市川監督!!
「昭和20年代の田舎道が舗装されてていいのだろうか」なんて余計な突っ込み入るようなラストカットで終わらないでぇぇぇ!!・・・と思っていたら・・・
エンドクレジットでスケキヨくんマスクのアニメーション。なんちゅう軽さだ・・・・
思わす笑ってしまったが、いたずら好きのおじいさんに「バーカ」と言われたみたいな気がした。きっともう二~三作撮ってまだまだ我らを楽しませてくれるだろうと、そんなことを勝手に予感したのであった。
俳優について
俳優さんたちがみんな上手なので安心して見ることができた。特に富司純子さんなど上手くて上手くて、何度も聞いた台詞だというのに泣かせてくれる。「フラガール」といい本作といいノリに乗ってる感じがする。
石坂浩二は首が転がり落ちて絶叫するシーンにしても、序盤で何度も見せる全力疾走にしても、パワーダウンは否めない。しかし一方で真犯人を追いつめるシーンでの、年相応の落ち着き、穏やかな物腰、礼義正しさ・・・なんだかんだで石坂金田一が一番いいなあと思ってしまうのであった。
俳優といえば・・・市川崑監督久々の金田一シリーズとして90年代に公開された「八墓村」で金田一を演じた豊川悦司。
人気シリーズの主演俳優を世代交代させてみたけどやっぱり初代の方がいいよと二代目は一作で降板・・・007のショーン・コネリーとジョージ・レイゼンビーみたい。
映像的にはオリジナルほどの濃い陰影がないけれども、スピーディな展開、あっという間の二時間で、ああ面白かったとつい満足してしまう映画だった(なんも変わらんのにね)
*******
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
そっくりリメイク
そんなこんなで、久しぶりに「犬神家の一族」でも観ようかとレンタルビデオに行き見てみたらやっぱり面白かった・・・ってのと同じ感覚を味わえるくらいの、そのまんまリメイクであった。脚本はもちろん絵コンテまで古いのを使っているのだろうかと疑うくらい。そういう意味では300円くらいでレンタルした方が得なのかもしれない。
目新しさは全くなく、なんだって91才にもなる巨匠が今更このような映画史に100%残らない映画の撮影のために余命を削らねばならないのかと疑問を感じつつ・・・
まるっきり同じなだけに、どうしようもなく面白いんだよ。困った。
リメイク版での女中の変化
しかし主演まで同じにしたために生じた、奇妙な感覚。
金田一とホテルの女中(深田恭子)とのやりとり。
「何が一番おいしかったですか?」「生卵」(むすっとする女中)
「どうしたの?食べないの?」「だって食べてる暇がないんですもの」「そう、すいませーんお勘定」(その後、私が払います、いいや私が・・・なやりとり。)
(台詞はうろ覚え)
オリジナルとほとんど(全く?)変わらないこのやりとり。
ここでは、あの風貌な割に何故だか女にモテてしまう金田一・・・というキャラが前提にある。女中が金田一に魅力(言うまでもなく性的魅力である)を感じているのにその気持ちが伝わらない。そんな気持ちのズレが笑いを生むのであるが、リメイク版の年老いた石坂浩二と深田恭子では年齢差があまりに大きく、女中が金田一に性的魅力を感じるようには思えない。
オリジナルでは金田一は女中の気持ちを知った上でわざとハグラカしているともとることができるし、女中の気持ちを察しない鈍感さに可愛げを感じたりもできる。しかしリメイクの年老いた石坂浩二では、単に「興味がない」としかとることができず、深みにかけるのである。
しかし、巨匠・市川崑にはそんな問題は勿論わかっていたのかもしれない。
深田恭子の芝居が、意図したものかどうかわからないが、不思議ちゃん天然キャラになっている。
オリジナルではそれなりに世の中のことを知っている普通の大人の女だった女中が、台詞はそのままだが萌えキャラっぽい女に置き換えられる。
オリジナルでは女中の気持ちが通じなかった金田一。リメイクでは金田一のはぐらかしが女中に通じない。だからオリジナルと明確に異なる本作のエピローグにおいて女中は新台詞「せっかく生卵もってきたのに」を喋る。オリジナルで女中が侮辱されたと憤る台詞を、リメイク版ではそのまま飲み込んでいる。
同じ台詞なのに、情熱女vs鈍感男のやりとりは、天然女vs鈍感男のWボケコントへと進化したのである。
完全オリジナルのエピローグ
さて、オリジナルと大きく異なるエピローグでは、ラストカットも思わせぶりなものに置き換わっている。
オリジナル版では一目を忍んでこそこそと列車に乗り込んでいた金田一を引きのショットで撮っていた(はずだ)。
ところがオリジナルでは田舎道をてくてく歩いている金田一の後ろ姿になる。しかも金田一にわざわざ振り返らせた上に顔のドアップまで挿入。何やら万感の思いを込めた様な表情でスクリーンから客席を見つめる金田一。老匠・市川崑が映画館の観客に向かって「今までありがとう!!」と言っているような気がした。そしてふたたび引きのショットになりてくてくと我々に背中をみせて去っていく金田一。
何のつもりですか!?最後のお別れのつもりじゃないですよね!?市川監督!!
「昭和20年代の田舎道が舗装されてていいのだろうか」なんて余計な突っ込み入るようなラストカットで終わらないでぇぇぇ!!・・・と思っていたら・・・
エンドクレジットでスケキヨくんマスクのアニメーション。なんちゅう軽さだ・・・・
思わす笑ってしまったが、いたずら好きのおじいさんに「バーカ」と言われたみたいな気がした。きっともう二~三作撮ってまだまだ我らを楽しませてくれるだろうと、そんなことを勝手に予感したのであった。
俳優について
俳優さんたちがみんな上手なので安心して見ることができた。特に富司純子さんなど上手くて上手くて、何度も聞いた台詞だというのに泣かせてくれる。「フラガール」といい本作といいノリに乗ってる感じがする。
石坂浩二は首が転がり落ちて絶叫するシーンにしても、序盤で何度も見せる全力疾走にしても、パワーダウンは否めない。しかし一方で真犯人を追いつめるシーンでの、年相応の落ち着き、穏やかな物腰、礼義正しさ・・・なんだかんだで石坂金田一が一番いいなあと思ってしまうのであった。
俳優といえば・・・市川崑監督久々の金田一シリーズとして90年代に公開された「八墓村」で金田一を演じた豊川悦司。
人気シリーズの主演俳優を世代交代させてみたけどやっぱり初代の方がいいよと二代目は一作で降板・・・007のショーン・コネリーとジョージ・レイゼンビーみたい。
映像的にはオリジナルほどの濃い陰影がないけれども、スピーディな展開、あっという間の二時間で、ああ面白かったとつい満足してしまう映画だった(なんも変わらんのにね)
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背の高い某女優さんを除いては、みなさん、とても良かったです。松子役の女優さんが、しっかりオーラを放っていれば、それだけでも十分見応えのある作品になると思いました。TBありがとうございました。
みんな間違い探しだよ。君はいくつわかるかな?って感じの市川崑監督でした。
背の高い某女優さんも、その凛とした感じがかえって独自に事件を捜査している女という印象をあたえていいと、映画芸術の掲示板で鳴海昌平さんが書いていました。なるほどね
90歳過ぎているんだから、余計なことに生命力を使わないでください・・・と、見ててハラハラさせられます。
ひょっとして「八つ墓村」を石坂浩二でリメイクするかもしれません。
できればあと10年くらいは生き残って再び「東京オリンピック」を監督してほしいです。