2016/10/30に出版された、川口マーン恵美さんが戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである高山正之と対談した本、『日・米・独10年後に生き残っている国はどこだ』(KKベストセラーズ,1,000円)は日本国民全員と世界中の人が読まなければならない本である。
わけても原発絶対反対を唱える人間を知事にした鹿児島県人と新潟県人は全員が読まなければならない本である。
経済成長を左右する「エネルギー問題」(114頁から)
川口
私は、「エネルギーを問題」をここ数年ずっとフォローしているのですが、日本が原発を停めていることは、本当に絶望的なほど間違っていると思います。
原発をやめろと言っている人たちは、ドイツをお手本にして言っていることが多いのですが、そもそもその認識が間違っている。
「ドイツにできることが、なぜ日本でできないのか」と言うけど、ドイツは「2022年までに原発を全部停める」と言っているだけです。
何の問題もない原発、しかも、電力供給で重要な役割を担っていた原発を、一気に全部停めることなんていう自殺行為は、日本以外はどこもやっていません。
安全対策は動かしながらだってできたはずです。
他の国は、皆、そうしています。
それからもうひとつ大きな間違いは、原発をなくしても、その分を再生エネルギーで補填できるようになると思っていることです。
日経新聞や朝日新聞でさえ、あたかもできるように書きます。
でも、それは“不可能”です。
ドイツでさえ、まったくできていません。
再エネというのは色々ありますが、現在の主力は「太陽光」と「風力」です。
どちらも、いつでもタダで手に入るように思われるかもしれませんが、お天気まかせなので、実はすごく不安定です。
これは致命的な問題で、どんなにたくさんパネルや風車を並べても解決できない。
大容量蓄電池は、現状ではまだまだ実用的にこぎつけられる状態ではありません。
これは、小さな単位に置き換えてみると、もっとよくわかります。
例えば、各家庭が屋根の上にパネルを並べ、自家発電をする。
ただ、どんなに巨大な蓄電池をおいても、I週間も悪天候が続くと電気がなくなるでしょう。でも、そうなったとき自家発電を自慢していた人は、「大丈夫、いざというときは普通の電気を使うから」と安心しています。
つまり、既存の電気系統を、当たり前のようにバックアップとみなしているわけです。
しかも、そのための送電設備の経費も負担していません。
これを電気会社のほうから見てみると“誰かのいざというときのため”に、電線を整備し、常に待機していなければならない。
こちらも貯めておくわけにはいかないので、常にお天気や消費動向を見ながら、いつ“いざというとき”が来るかを予測し、すぐ対応できるようにしている。
それでいて、タダのピンチヒッターで、出番のないときも多いのだから、採算は取れない。結局ドイツでは、電力会社はどこも大赤字の状態です。
高山
そういうことは、日本ではまったく報道されませんからね。
川口
今年の6月7日付で日経新聞が「ドイツでは再生可能エネルギーの比率が30%を越え、石炭火力依存度は少しずつ低下」と書いていました。
これがすごくおかしい。
プロパガンダと言っていいほど、間違った記事です。
30%というのは、たとえて言うなら、「年間の降水量は全部で何ミリもあります」と言っているのと同じです。
でも、その雨が3ヵ月で全部降って洪水が起きて、あとの9ヵ月日照りだったならば、何の役にも立ちませんよね。
ドイツで起きていることはまさにそれで、お天気の良いときに皆が一斉に発電して、それが全量、固定価格で、優先的に買い取られるから、電気が過剰になり、電気の市場値段は暴落する。
そのうえ、余った電気はどこかに流さなければならないので、他国にお金をつけて引き取ってもらうということまでしている。
もちろん、足りないときにはお金を払って隣国から買っています。
1年分の発電量が、全部足して30%といっても、その数字は無意味でしょう!
高山
無駄が多いし、経済的にも無理がある。
これでは、長くは続かないだろうね。
川口
そもそも電気の供給には、「ベースロード電源」というものがあります。
1年間ずっと、季節も天候も昼夜も問わず、ずっとある信頼性の高い電源です。
電力システムの基礎ですね。
これがなければ、産業国は成り立ちません。
これをいままでドイツも日本も原子力でやってきた。
日本はいま、火力でやっている。
再エネではもちろん絶対無理です。
そこで、ドイツもいま、慌てて火力を10基以上も建てています。
もちろん、これでC02の問題も後戻りです。
誰も報道しませんが。
高山
マスコミ特有の「報道しない自由」というやつだよ。
後略。