すずりんの日記

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小説「雪の降る光景」第1章Ⅰ~12

2006年02月25日 | 小説「雪の降る光景」
 「この間はよくも恥をかかせてくれたな!」
私は、彼らが何を言い出しても決して反抗しないように、と、友人たちに目配せをして、こう言った。
「おまえらも運が良かったな。あの時、もしケガをしていたのがおれじゃなく、後ろにいたクラスメートだったら、恥をかいただけじゃあ済まなかったろうな。」
「半殺しの目にでも遭わしてくれたってのか?」
「いいや。完全におまえの息の根を止めてたよ。」
「なっ、なにぃ!」
脇で私の腕を押さえ込んでいた2人の男が一層強く腕を捻り、私の両肩が、ギシッと音を立てた。その音を聞いて、ハーシェルがさらにこう言った。
「おまえが土下座しておれに謝って、この前のことは誰にも口外しないと誓うなら、このまま帰してやる。」
「そのセリフ、そのまま返してやるよ。」
彼は何も言い返せず、歯をギリギリ言わせていた。そして、こう言うしかなかった。
「やってしまえ!」
私は一斉に、数人の男に殴られ、そして蹴られた。
 私の友人たちは、他の誰よりも私の隠れた残忍性を知っていた。今ここにいる者の中で、散々な目に遭わされている方が“ヘビ”で、殴る蹴るの暴行を働いている方が“カエル”であるということを、他の誰よりも正しく認識していたのだ。友人たちは、ハーシェルたちが恐くて手が出せなかったのではなかった。手を出して、ハーシェルの仲間が友人の腕の一本でもつかもうものなら、その男の方が、私に酷い目に遭わされてしまう、ということを知っていたのだ。
 私は、ひたすら暴行を受けた。友人が誰一人として乱暴な扱いをされていないということを確かめた上で、だ。


(つづく)
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