永 :美井さん、コンニチハ!10月に入ると朝晩が冷え込んで、秋を肌で感じますね。
美井:私は10月の暦を見ると「紅葉を見に行こう」と必ず思うのですよ。今年はどこ
へ行こうかとプランを練っているところです。
永 :ところで、昔から疑問に思っている事があるのです。それは、なぜ赤や黄に変化
してから落葉するのかということなんです。冬に向って休眠するだけなら、緑の
葉のままで落葉してもいいと思うのです。わざわざ緑から赤や黄に変色してから
落葉するにはそれなりの意味があるのでしょうね。
もうひとつ、紅葉のメカニズムを以前に習った記憶があるのですが、今では忘れ
てしまいました。ご存知でしたらまとめて教えて頂けませんか?
美井:先日、同じ質問を志位さんから受けまして調べたところなのです。彼にお答えした
内容をお話しますね。
永 :それはタイミングが良かった。よろしくお願いします。
美井:質問がふたつありますが、答えがはっきりしている紅葉のメカニズムから話しま
す。
カエデなどの赤い紅葉は足し算、イチョウなどの黄色い紅葉は引き算だと考える
といいですよ。
永 :足し算と引き算ですか?これまでにない新鮮な切り口ですね。
美井:秋になって日照時間が短くなり、気温が下がってくると、葉の付け根に離層とい
う水分を通しにくい組織ができます。赤く紅葉する樹木の場合はこの離層ができ
ると、光合成で葉の中に作られたブドウ糖、ショ糖などは根まで行かずに葉の中
に留まり、紫外線の作用で赤色の色素である「アントシアン」を作ります。
この色素が葉の中に大量に溜まって赤く見えるのです。新たな色素が加わるのだ
から足し算ですね。
黄色く紅葉する樹木の場合は黄色の色素「カロチノイド」により黄色く見えます。
このカロチノイド色素は実は若葉の頃から葉に含まれているのですが、春から夏
にかけては大量の葉緑素の影響で見えないだけなのです。
秋になって葉緑素が分解されると目につくようになるのです。葉緑素が除かれて
黄色が見えるようになるので、引き算というわけです。
褐色に紅葉する樹木の場合は黄葉と同じ原理で引き算の変色です。葉緑素が分
解されると、若葉のころから含まれていた「フロバフェン」と総称される褐色物質
が目立つようになるためとされています。
この黄葉や褐色葉の色素成分は量の多少はありますが、紅葉する樹木の葉には
すべて含まれており、本来は赤く紅葉するものが、アントシアンの生成が少なかっ
たりすると褐色葉になることがあります。
永 :足し算と引き算については納得しました。ところで、何故変色するのかについては
どうですか?
美井:その件について、実はまだ解明されていないようです。「きれいに紅葉している木
には天敵のアブラムシが少なかった。だから、紅葉することによって、害虫を遠ざ
ける」という説を見つけましたが、まだ、立証とまではいかないようですね。
また、葉緑素が分解される時には有害な活性酸素が発生するのですが、この活性
酸素によって組織が破壊されるのを抑えるために紅葉するという説があります。
葉の中を真っ赤にすると有害な活性酸素の発生を抑えるのではないかという説で
す。
この説もまだ立証されていません。なぜ紅葉するのかという研究は遅れているよう
です。
永 :植物の世界にはまだ判らないことがいっぱいあるのですね。でも今回の知識を
もって紅葉する葉を一枚一枚じっくり眺めると、ただきれいと言うだけではなく
て、樹木の生命をいとおしく感じると思います。
美井:そうだ!いいことを思い付きました。長野県の大峰高原に「七色大カエデ」という
素晴らしい木があるんですよ。数年前に家族で観に行ったんですが、一本の木が
いろんな色に紅葉して、それはそれは見事なものでした。永さんにもぜひ観て欲
しいので、今年は久し振りにそこへ行くことにしましょう。いかがですか?
永 :そんな木があるんですか?是非ご一緒させてください。楽しみだな。何だかワク
ワクしてきましたよ