勇一:健二が結婚を決めたんだってさ。出会って3度目のデートでプロポーズしたらし
いから、まさに運命の出会いとしか言えないよね。
達三:それはめでたい。もしかしたら赤い糸で結ばれていたのかな。
勇一:そういえば、どうして「運命の赤い糸」って言うんだろ?
達三:いくつかの説を聞いたことがあるよ。ひとつは「古事記」に三輪山伝説という
物語があり、それが起源だということらしいな。
昔、美しい姫の元に毎晩通って来る男がいた。その男の素性を知らない姫は両親
の提案で、ある晩のこと、寝床の周りに赤い土を敷きつめたうえで、男の衣服に
糸を通した針を刺しておいた。そして翌朝、赤土が付いたその糸をたどっていく
と、その男が三輪山の神様だということがわかったという話だな。
勇一:ふ~ん、それが定説なのかい?
達三:いや、中国の太平広記の中にある「赤い縄」の話が起源だとする説もあるよ。
韋固(いこ)という青年が縁談相手の娘と会うために出かけていくと、月明かり
の下で一人の老人に出会う。その老人は「この縁談はうまくいかない。
結婚する者同士の足には、人には見えない赤い縄が結ばれている。お前の結婚相手
は貧しい野菜売りの婆さんが連れている3歳の娘だ。」と断言した。
これを聞いて怒った韋固は、ある男にその幼女を殺すよう命じたが、殺害には失
敗し、額に傷をつけさせてしまう。
14年後、韋固がやっと結婚することになった娘の額には傷がついていた。かつて
自分が傷を付けさせた娘だと知った韋固は、全てを正直に打ち明けて、めでたく
二人は結ばれたという話だ。
中国の話では、運命によって決められた男女の足には赤い縄が結ばれているとい
うことだけど、それがいつの間にか「赤い糸」になり、しかも小指同士に結ばれ
ているという形に変化して伝えられてきたんじゃないかな。
勇一:ほんとかな~?もっと違う説があるかもしれないね。でも、今ではたくさんの人が
「運命の赤い糸」っていう言い方をするから、その糸は僕にも結ばれているって思
いたいナ。いったいどんな人と赤い糸が繋がっているのか、早く知りたいものだ。
達三:もしかしたら、すでに君の目の前に現れている人かもしれないぞ。
勇一:ということは、健二の次に結婚するのは僕ってこと?
達三:そんなことは、それこそ「神のみぞ知る」だよ。