すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

タヌキの提灯行列

2006-08-14 11:46:02 | むかしむかし
 むかしむかし、ある山に大変いたずら好きなタヌキがおった。このタヌキ、姿は見せないがあらゆるところでいたずらをしおった。
 ある時、じいさまが向かいの山を何気なく見ると、道があるはずもないところに、提灯行列が行進しておった。それはそれは見事な出来で、向かいの山の木々がくっきりと分かるのじゃ。その木々の間を、見えつ隠れつ提灯の明かりが続いておった。
 じいさまは「ははあ、こりゃタヌキじゃな」と思ったが、床机に腰掛けたまま、
 「おお!見事じゃ見事じゃ!」
と誉めたそうじゃ。
 するとどうじゃろう、突然提灯行列の長さが倍になったのじゃ。おかしくなったじいさまはさらに誉めてやった。すると調子に乗ってどんどん行列は長くなるのじゃった。
 じいさまはその行列を眺めながら、足下にかすかなぬくもりを感じておったが、うっかり顔を見たらだまされるので、知らんぷりをきめこんだのじゃった。

 以上、なんともかわいいタヌキのいたずらの話である。徳島はタヌキの話がいたるところに残っている。田舎でなくとも、それこそ市内では有名なタヌキ合戦の話がある。(宮崎監督のアニメ、ぽんぽこにも登場した金長だぬきと、六右衛門だぬきの悲しいお話)漫画家の水木しげる氏によれば、徳島は妖怪の宝庫らしいが、すべて「タヌキじゃ」で済ませてきたらしい。う、ありえる・・・。
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引き潮の舟

2006-08-14 06:02:00 | むかしむかし
 むかしむかし、あるところに藤吉じいさんというおじいさんがおった。このおじいさん、いたく信心深く兼ねてから「わしは死んでも仏にはならん。」が口癖じゃった。(まあ、早い話が神道やね)
 この藤吉じいさんが、ある日突然、家族を集めてこう言った。
 「わしは明日の朝の引き潮に乗って、あの世に旅立たねばならない。みんなにあいさつせないかんので、集めてくれ」
まあ、こんなにぴんぴんしとるのに、何を言いよるのだ・・・と家族は思うたが、あまりにじいさんが真剣なので、親類を集めて、宴を催した。 夜更けまで、存分に語り合い呑み交わし、じいさんの話はともかく、こうして久しぶりに集まるのもいいもんだと、みんな思いよった。
 ところがじゃ。夜明け前になって、にわかにじいさんが慌て始めた。
 「いかん。夜が明ける。舟が迎えに来る。腹ごしらえをしないと、三途の川を渡れん。片栗を練れ!」
そう言われても、ばあさんはすっかり油断していたものじゃから、湯など間にあわん。
 「ええい、水でええ!急げ!」
言われるままに、水で練った片栗を差し出すと、じいさんはそれをかき込み、
 「ごちそうさん。」
そう、言い残して、ぽっくりとこの世を去ったのじゃった。

 以上、ぎりぎりセーフであの世に行った、うちの曾爺ちゃんの話である。ちなみにこのじいちゃん、困ったことがあったら名前を言えば必ず助けてやると言ったそうで、父は何度も助けてもらったらしい。私はと言えば、不信心が祟るのか、じいちゃんと面識がないからか、試しに爺ちゃんの名前を唱えると必ず失敗する。・・・、自力で頑張るしかないのね・・・。
コメント (2)
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