すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

足の早いおじさん

2006-08-21 23:25:25 | むかしむかし
 むかしむかし、ある田舎にたいへん足の速い、腕白坊主がおった。村でもかけっこは負けたことが無く、いたずらでも負けたことはなかった。あまりの腕白ぶりに、ようじいさまに説教を食らったが、そのげんこつが振り下ろされる前には、正座したまま後ろに火鉢を飛び越えて逃げるといった有様で、まるで忍者のようじゃった。
 その腕白坊主が、ある日不思議な男と出会った。身なりはどこにでもおるおやじであったが、何しろ足が早いのじゃ。それは風のように早く、もっと驚いたことには、その男は四つん這いで駆け抜けるのじゃった。
 「おっちゃん、ごっついなあ!」
感動した坊主じゃが、足の早いのが自慢だったのだから、悔しゅうて仕方ない。見よう見まねで、両手をついて走ってみたが、どうしても上手く走れないのじゃ。
 そんなことがあってから、どれくらい経ったじゃろう。ある祭りの日、坊主は母親と神社に来ておった。そこで、坊主はあの男に再会したのじゃ。
 「あ、おっちゃんじゃ」
坊主は走り方を教わりたくて、思わず男に駆け寄った。
 「あかん!」
すると、すぐに母親に腕を掴まれたのじゃ。訳の分からぬ坊主に、母親はこう言うた。
 「あの人はな、犬神さんに憑かれとるんじゃ。」
 どうりで足が早い訳よなあ。


以上、所謂キツネ憑きの話である。私はあんまり近くでは見たくないなあ・・・。でも、ほんと、めちゃめちゃ早かったらしい。「この人変だ」と思わずに、「すっげ~」と思ってしまうあたりが、子供よねえ・・・。
コメント (2)
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