すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

父の入浴

2006-08-19 00:52:25 | うちのキヨちゃん
 何年か前、父が手を大けがしたことがあった。普段の生活にさほど支障はないものの、やはり水は使えない。風呂などもってのほかであった。当時はまだ父に介護が必要な状態ではなかったのだが、こうなっては不便きわまりない、キヨちゃんとふたりで介護生活のスタートである。
 都合良いことに、私は介護職に従事していたので、世話することには慣れていた。あれこれ便利グッズも買い、世話を焼いた。今まで自分で洗髪していた父は、多くの親父同様「石鹸で洗髪」派だった。だから、私がシャンプーをしたときは、「さらさらするもんやなあ」と少しカルチャーショックだったようだ。(もっともサラサラ感を味わえるほど、頭髪があるとは思えないのだが・・・)背中も自分で洗うより、人に洗って貰った方が気持ちいいものだと感じたらしい。
 しかし、ふと父の前を洗う段になって、私は躊躇した。介護職に就いているのだから、陰部洗浄などどうということはない。ただ、今まで他人に洗われたことのない父が、娘に洗われるのは「照れくさい」のではないか?と思ったのである。そして当然私自身も照れくさかったのである。
 そのことをキヨちゃんに話すと大爆笑。
 「そうか、恥ずかしいかあ!!よっしゃ母ちゃんに任せとけ。」
力強くそう言ってくれた彼女は、私と交替して浴室に向かった。やはりそこは夫婦よね・・・と私は感心していたのだ。
 しばらくして風呂から上がった父は、ぽつりと言った。
 「今度は自分でする」
やはり夫婦でも恥ずかしかったのだろうか。
 「やっぱり照れくさい?」
尋ねる私に父はこう言った。
 「母ちゃん、10年ぶりに親の敵にあったように洗うてくれた。」
・・・。母よ、あなたはどんな洗い方をしたのだ???
コメント (2)
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