すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

けじめ(バックナンバー)

2007-04-04 22:48:25 | じいとんばあ
    けじめ

 私が 勤め始めた頃
 幼なじみのばあやんがいた
 幼い頃から 孫と同じように世話してくれて
 ご飯もたびたびご馳走になった

 私の入社を 心から喜んでくれたばあやんは
 次の日から 私を名字で呼んだ
 厳しかったばあやんは
 そうすることで けじめをつけたけど
 二人きりの時だけ こっそり名前で呼んだね
 そんなばあやんに
 私も名字で呼んで 応えた
 そんなばあやんを 尊敬してたから

 ばあやんの終末が近づいた頃
 私のことを名前で呼んで
 「帰りたい」ってつぶやいた
 帰ろうね 元気になってもう一回お家に帰ろうね
 精一杯 声をかけた

 優しい優しいばあやんは
 家族を少しうたた寝させて
 そのスキを狙って 旅立った
 「私がうとうとしたから」

 取り乱した家族は そう言って泣いたけど
 ばあやんは きっと見送られるのが辛かったんだ
  
 ばあやん
 もう ばあやんって呼んでもいいよね
 もう 私をちゃんづけで呼んでいいよ

 わがままだって 言って良かったのに
 無理だって 言って良かったのに
 甘えたって 良かったのに・・・
 けじめなんて
 つけなくて よかったんだよ


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コメント (4)
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