Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

本日はようこそ開いてくださいました!お芝居のことグルメを語ります!


          

しっとりと充実した「引窓」     -上方歌舞伎会ー

2009-08-24 | 演劇
 

      
      今年の上方歌舞伎会は、「修善寺物語」 「引窓」 「京人形」と例年になく充実しているが、
      なんといっても、唯一の義太夫狂言「引窓」が抜群にすぐれている。
      滅多に見られない「引窓」には違いない。

      まず、純弥のお早がいい。
      前々回の「野崎村」のお光もよかったが、この人のニンのせいであり、
      こうした「義太夫狂言」に俄然むいているのかもしれない。

      お早のいいところは、1つに義太夫狂言の肚が十分に抑えられていることである。
      義太夫の味までもいかなくても、丸本では肚が薄いと観客は感動しない。
     
      つぎに、お早には女形の愛嬌を売るための入れ事が多い。
      まず幕開けの月見の飾り物をする動作など上出来。
      上方の場合、裾こそ引かないが、次から次へと仕事を丁寧に演じている。
      しかも、この役には人のセリフを聞くところ、受けの芝居が多い。
      肚で受けて、体を殺すという修行が足りている。
      ただ、夫の与兵衛の出世ぶりを喜ぶところが少々はしゃぎすぎ。
      ここだけが浮いたように見えてしまう。





      とはいっても、見せ場の引窓を引く件りの形がじつによかった。
      それでいて、遊女上がりらしい風情をきっちり見せた。
      たいしたものだ。


      主人公の与兵衛には松次郎
      「人の出世は時知れず」で花道からの出がいい。
      肩を小さく振って歩く。その歩き方がいかにも「八幡の町人」になっている。
      「女房ども、今戻った」も抑えて、リアルである。
      それに松次郎の与兵衛は、二階の濡髪を見つけての二度のきまりが上出来である。

      しかも仕事は、行儀よくキッパリしているので好感がもてる。

      「伊勢音頭」の福岡貢では不安定なところがあったが、ここでは水を得た魚のようにさっぱりと
      爽やか。

      ただ上方型でよくやる、一人うなずいたり、十手をいかにも嬉しそうに持ったりするのが、
      真面目な松次郎の芸風に合わない。
      嫌味になる。やめた方がよい。

      つぎに當吉郎の濡髪は、姿かたちが立派。
      ところが肝心の義太夫の肚が不足。
      「剃りやんす、落ちやんす」など、搾りだすような苦渋がなければいけない。
      それが上っ面だけできこえるのは、肚が薄いからである。

      立派な体格、性根とが渾然一体になっていないのが問題だと思う。
      濡髪のニンだけに惜しい。
      また、この人のセリフに現代語が交じるのも芝居のぶち壊し。

      扇乃丞のお幸は初の老け役。
      大芝居せず、サラサラとして淡彩。
      さすがに濡髪の肩に手拭を掛けてジッとなるところは情が溢れる。
      円熟の味といえる。

      今ひとつ感心したのが、二人侍である。
      上方歌舞伎会初参加の松太朗(←前進座出身)の三原伝造が上出来。
      声ガラがよく、間のとり方、せりふ廻しがしっかりしている。
      芝居を受けるところが多いが、肚で受けているのには感心した。
      「出過ぎず引き過ぎず」で脇の分をわきまえた二人侍であった。

      それと、竹本の愛太夫の熱演も忘れがたい。
   
      「京人形」は、千次郎の吉原の太夫が滅法きれいで、しかもこれが
      男の振りになるので客席は大ウケ。

      長唄と常磐津の掛け合いで一興をそそるが、作品としては大したものではない。

      見どころは、ラストの殺陣。
      大工に、千志郎、松次郎、祐次郎、當吉郎、松四朗、松太朗
      とイケメン揃いだが、肝心のトンボがサッパリ。
      初日夜の部の所見だったが、千志郎丈が2回も失敗する。それだけならまだしも、
      ミスった後に「二ヤッ!!」と笑うのはよくない。

      もう一つ。
      郎党、捕手のリーダー役の千蔵
      それ、行け!!とかいざ!!だけのセリフしかない。
      見ていて気の毒な気もするが、舞台が引き締まるのも、こういう人が
      いるからである。

      上方歌舞伎会19回目にして、新歌舞伎「修善寺物語」が出るのは初めて。
      下田五郎に祐次郎。凛々しい若者を見せていい出来栄え。
      夜叉王に松之助
      抑えに抑えて演じながら、それでいて芝居をしている。さすがベテラン。
      姉桂のりき彌はともかく、妹楓の當史弥がいい歌舞伎味を匂わせた。

            (舞台写真「引窓」は国立文楽劇場のご好意で掲載させていただきました)



   

◆ 幕間のひととき ◆
      

 


      劇場ロビーで見かけたブロンズ像(画像/左)と文楽人形のくいだおれ太郎(画像/右)。

      道頓堀の食堂「くいだおれ」の名物であった「くいだおれ太郎」
      シフト先をめぐって取り沙汰されましたが、元祖・くいだおれ太郎君
      は、その後どうなっているのでしょうか?




      幕間のお食事

      劇場内にある食事処「文楽茶寮」にてリザーブ。

          




     幕間30分(←正味20分)。急げ!急げ
     これだけの品数(←画像)を20分で食べきれると思います?
     食後にはまだ、コーヒーとフルーツが付きます。

     こうなれば、ブログ用の写真撮りなんかどうだっていい!!
     そんな心境になりました(笑)。


 


     お芝居がハネてからは、道頓堀へ出て夜のお散歩。
     といえば聞こえがよろしいが、本当のところは飲み歩き(笑)。


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