あれはいつの頃であったろうか。
たった一度だけお茶会に招かれたことがあります。
そのときのことは殆んど記憶にないけれど、「ふろふき大根」の美味しかったことだけは、今もよく覚えている。
それは志楽の皿に昆布が敷かれ、厚さ2.5㎝ほどの輪切りにされた大根が一切れ、。
大根の上に一条の練みそがかかり、細切りの柚子の皮が散らされていた。
つまりは茶事の後に出された「ふろふき大根」である。
そういえば井伏鱒二の『鞆ノ津茶会記』にも、「ふろふき大根」がしばしば登場する。
「ふろふき大根」の由来を語るつもりはないが、『鞆ノ津茶会記』では、すくなくとも天正15年の茶会の記録にある。
そこで、「ふろふき大根」にトライしたんものの、「練みそ」つくりがいちばん難しい。
市販の田楽味噌でも買えばよかったと後で後悔する始末。
大根の片方の面に十文字の切れめをいれる「隠し包丁」はわすれなかったけれど。
いずれにせよ、たかが「ふろふき大根」といえど、奥の深いものであることを知りました。