爽やかさと、若々しさと、飾らない生々しさと。
いってみれば、清涼飲料水を一気に飲み干したような気持ちだった。
父の切腹に端を発する牧文四郎の挫折と成長を描いた藤沢周平の『蝉しぐれ』の舞
台化は二度目である。今度は等身大の若手俳優の起用と、ベテラン陣が脇を固めて
一級の娯楽作品に仕上がった。
主人公牧文四郎には福士誠治。誠実に、熱血に,真摯に取り組んだ。文四郎を取り
巻く若者には、崎本大海、内藤謙太。二人はすでに『わかば』で明治座の舞台を経
験している。次世代を担う若手俳優だが、ベテラン勢に混じって、親友との篤い友
情を、臆せず、真剣に演じた。花道での芝居に稚屈さは否めないが、かえって好感
がもてる。七三よろしく決まってほしくない。嫌味になる。
二幕の文四郎と矢田淑江が出くわす熊野神社の境内では、詩情と哀感が伝わる。
矢田淑江を演じた舞川りらは宝塚出身。ふしだらな女でいて、武士の妻である気品
を見せた。
脚本は金子成人。「凛と聳える青竹を連想して、このドラマを書いた」と作者は筋
書で述べているが、それが今回の作品のバックボーンにリンクした。
ひと言でいえば、まだ硬いが、強風にもしなりながら踏ん張る青竹。そんな舞台だった。
苦言を一言。商業演劇の装置は、飾りすぎ。これも観客へのサービスなのか。
それと映像畑の役者さんが多いせいか、「出」と「引っ込み」の芝居がおざなり。
もっとも国太郎の青木孫蔵がうまいのはさすが。
2008,5,28 明治座・昼の部所見
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