Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

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ジャズ喫茶論

2010-05-15 | ジャズ



『ジャズ喫茶論』ーといっても決して堅苦しい研究書とか学術書ではない。
全国各地のジャズ喫茶を巡る紀行文の体裁をとりつつ、そこには鋭い観察と分析力ゆたかな思考がちりばめられている。

かと思えば、いたるところ「脱線」の連続で、あたかもジャズの即興演奏のように綴られていく。


若者は「ジャズ喫茶」に行かなくなった!
近年、「スターバックス」や「ドトール」、「サンマルク」などの味気ないチェーン店を除けば、若い人たちが喫茶店そのものに入らなくなったのも事実です。

若者のジャズ喫茶離れは、レコード(CDを含めて)とオーデイオ装置の音源が、はるかに購入しやすくなったこともあるでしょう。
それと、ilpodやケータイのような音源も忘れてはならない。
さらにインターネットによって気軽に音楽をダン・ロードもできる。

わざわざ「ジャズ喫茶」に足を運ばなくても幅広いジャンルの音楽を聴くことができるからです。

「ジャズ喫茶」全盛時代のジャズは”行動”だった!
ひところ、ジャズ喫茶像の根底に、ジャズは切実な<同時代の音楽>であり、<安保闘争>にも密着しており、そして何よりもジャズは”行動”だった。

ジャズを聴き、そのエネルギーを吸収して、デモに出かける学生。
文学作品を生み出した若い作家や詩人。

「ジャズ喫茶」が、インスピレーションとエネルギーを与えてくれる”場”であったわけです。

80年代以降の「ジャズ喫茶」は博物館になった!
ネット時代を迎えて、いよいよ衰退しつつあるジャズ喫茶。
今日の「ジャズ喫茶」はもはや、「文化の拠点」でも「フーテン(←死語)の溜まり場」でもない。

かつての常連客にとって、今日のジャズ喫茶」は懐かしい<場所>であり、過去を連想させてくれる「場」になった。
あの隆盛を誇った「ブルーノート」でさえ、若者の姿はなく、中年のサラリーマン客、かつてのジャズ喫茶に入り浸った高齢者が目立つ。
もしジャズ喫茶に行ったことのない若者が、今日初めて訪れたら、どこかの「老人ホーム」という施設にでも迷い込んだと勘違いするだろう。

80年代以降のジャズ喫茶は「博物館」同様になった。
保存されているのは、ジャズ喫茶という消えつつある<空間>。
古いジャズ・レコードという貴重な<物>だけになってしまった。

そして・・・
老いていくジャズ喫茶常連客自身の<過去>でもある。

作者は結んでいる。

ジャズ喫茶を含め青春時代を振りかえるとき
甘美な懐古感に浸かりたくなる
ジャズ喫茶が消滅していくこと自体が
まるで自分の死期を暗示しているかのように・・・



                                 『ジャズ喫茶論  -戦後の日本文化を歩くー 』
                                 マイク・モラスキー 
                                 筑摩書房
                                 本体価格;2600円
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