竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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冬麗や象の歩みは雲に似る  大橋俊彦

2020-01-26 | 今日の季語


strong>冬麗や象の歩みは雲に似る  大橋俊彦


冬の日溜まりにつつまれて眠気も少々
縁側から見る空には
もう春を告げそうな厚樹大きな雲が浮かんでいる
しばらくしてまた見上げるとその雲はわずかに動いているようだ
像象歩みのようだな
いや象のほうが雲のようなのか
(小林たけし)

雲に象のかたちを見てとることはあっても、地上最重量の象を見て、雲と似ているなど誰が思いつくだろう。とはいえ、言われて動物園などで目の当たりにしても象の歩みは、どしんどしんと地を響かせるようなものではなく、対極のひっそりした趣きさえたたえている。これは側対歩という同じ側の足を踏み出し、前足のあったところにきれいに後ろ足が重なるという歩き方のためと、足底に柔らかいパッド状に脂肪が付いていることによるのだというが、象のもつ穏やかで優しげな雰囲気もひと役買っているように思う。以前、タイで象の背に乗ったという友人が「思いのほか揺れた」と言っていた。もしかしたら、雲もまた乗ってみれば思いのほか揺れるものなのかもしれない、などと冬の青空に浮かぶ雲を眺めている。〈梟の視界の中を出入りせり〉〈冬至湯の主役にゆず子柚太郎〉『深呼吸』(2011)所収。(土肥あき子)

【冬麗】 ふゆうらら
◇「冬麗」(とうれい)
厳しい冬の寒さは、時折、空のよく晴れたあたたかで穏やかな日和を人々にもたらす。日影も美しい。小春は初冬だが、それ以降の日和を指す。

句 作者

冬麗や赤ン坊の舌乳まみれ 大野林火
冬麗の微塵となりて去らんとす 相馬遷子
冬うらゝ雲上雲の仏たち 中川宋淵
冬麗の陽を載せ誰も居ぬベンチ 楠本憲吉
冬うらら空より下りて鴎どり 三好達治
湯の池に鰐のねむりも冬うらら 古賀まり子