竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

父の鉢前に思案の菊根分 たけし

2018-03-13 | 
 父の鉢前に思案の菊根分




秋の菊花展にむけての苗の選別
そして鉢選び
菊づくりは春から気をぬけない
父の菊づくりは趣味の域内で
賞をとることはなかったが
強面の父の一面が綻びていた
菊鉢を引き継いだがさての思案はつきない


原句発表 2017/10/10
菊根分け父丹精の鉢を継ぐ

句意にそっての措辞を選んで改めた

【菊根分】 きくねわけ
◇「菊分つ」 ◇「菊の苗」 ◇「菊植う」
春、菊の株根から萌えだした芽を分植・増殖のため根分けすること。菊を分植するには種子によらず、株分けによる。
例句 作者
日にむいて春昼くらし菊根分 飯田蛇笏
菊根分働くに似て遊ぶなり 石塚友二
裏屋根に夕べの雪や菊根分 古市枯声
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畦青む検地のやうに番鳩  たけし

2018-03-12 | 

畦青む検地のやうに番鳩




めっきると春めいてきた
畦も青めいていて田もゆるんできた
二羽の鳩が胸を反らし羽を後ろ手を組むようにして
ちょこちょこ畦道を歩いている

まるで検地をする見回役のようだ
生きるもの全てが活動を始めている


原句 2017/3/10
畦青む検地のやうに番ひ鳩


【下萌】 したもえ
◇「萌」 ◇「畦青む」 ◇「土手青む」 ◇「草萌」
早春、草の芽が土に萌え出ることを「草萌」という。「下萌」は人目につかず芽が萌え出ることをいう。どちらも季節的に春の到来を表す言葉である。
例句 作者
下萌のいづこともなく水谺 日向野貞子
下萌えに二人の茣蓙をひろく敷く 山口みちこ
不幸が似合ふ女ではなし草萌ゆる 鈴木栄子
草萌やちゝはゝ一つ墓に栖み 安住 敦
下萌えに伏す鹿われを見てをりぬ 江原富美子
草青むうつろひやすき日の温み 廣瀬直人
掃かぬ日々重ねて草の萌ゆるかな 金井苑衣
平穏に四隣住みなし下萌ゆる 大津希水
柔道着二人で絞り草萌ゆる 大串 章
草萌にかがめば何か影よぎる 鷲谷七菜子
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大仏の半目に影花のかさ たけし

2018-03-11 | 
大仏の半目に影花のかさ





長谷の大仏には年に数回訪れる
桜の季節の大仏は
善男善女の賑わいをその半目で
慈愛の眼差しをむけてくれる
桜が満開になると日差しも強くなるが
大仏をすっかりおおうような
桜の傘になるようにも見える


原句発表 2017/3/10
大仏のやさし半目に花のかさ

「やさし」は安直すぎた
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卒業に刻みし我が名肥後守 たけし

2018-03-09 | 
卒業に刻みし我が名肥後守




昭和24年に小学校に入学したが
鉛筆は小さな小刀で削っていた記憶がある
工作などにも使用していた
肥後守という
中学校の卒業式と
木製の机に自分のイニシャルを
悪友としっかり刻んだ



原句 2017/3/4
肥後守卒業記念の一刻み



【卒業】 そつぎょう(・・ゲフ)
◇「卒業生」 ◇「卒業式」 ◇「卒業歌」 ◇「卒業証書」
学校の全課程を履修し終えること。小学校から大学まで、卒業式はいずれも3月末である。
例句 作者
口に出てわれから遠し卒業歌 石川桂郎
巻き込んで卒業証書もう古し 福永耕二
卒業の兄と来てゐる堤かな 芝不器男
山彦を山へかへして卒業す 遠藤若狭男
波ふえて卒業の日の沖見えず 藤田湘子
校塔に鳩多き日や卒業す 中村草田男
君に降り吾に降る雪卒業す 北澤瑞史
鉛筆に残りし歯形卒業す 古屋 元
交換日記少し余して卒業す 黛 まどか
下駄箱の別れそのまま卒業す 田口風子

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啓蟄や腹の虫まで起き上がり  たけし

2018-03-08 | 
啓蟄や腹の虫まで起き上がり





今年の啓蟄はなんとも落ち着かない
木の芽も冬眠の虫たちも戸惑っていることだろう
中秋というのに雪が降る

私の飼っている腹の虫
そろそろ怒鳴り声を吐く頃なのだが


原句 2017/3/
蟄や堪忍袋おさまらず

句意は同意
おさめたはずの堪忍袋が緩みかけるとの措辞
ひとり合点すぎたようだ

【啓蟄】 けいちつ
二十四節気の一つ。陰暦で2月の節。陽暦で3月6日ごろ。蟄虫(冬眠の虫)が戸を啓いて穴から出る意。春めいてくる頃である。
例句 作者
啓蟄や生きとし生けるものに影 斎藤空華
啓蟄の煙が松の幹のぼる 桂 信子
啓蟄や日はふりそゝぐ矢の如く 高浜虚子
啓蟄や水槽の藻が泡を生み 池田啓三
啓蟄の蚯蚓の紅のすきとほる 山口青邨
啓蟄や炎の残りゐる焼却炉 菅原鬨也
啓蟄や豆を煮るとて落し蓋 鈴木真砂女
啓蟄や駄菓子の薄荷口の中 百合山羽公
啓蟄や翅あるものも地を歩き 檜 紀代
啓蟄の日をふり仰ぐ子供かな 大峯あきら



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雛飾り不意と鳴りだすオルゴール  たけし

2018-03-06 | 
雛飾り不意と鳴りだすオルゴール




我家は9人の大家族
そのうち女子は6人である
雛祭に毎年にぎやかに雛飾りをしていたが
娘も孫も忙しく
年老いたワイフだけがいそいそしている
今年は飾っても娘も孫も覗くこともなかったようである
仕舞う時に突然にオルゴールが鳴りだした
雛人形が少し不満げに
話しかけてきたかのように感じた


発表 2017/2/23


【雛祭】 ひなまつり
◇「雛」 ◇「雛遊」 ◇「ひいな」 ◇「初雛」 ◇「内裏雛」(だいりびな) ◇「土雛」 ◇「紙雛」 ◇「雛飾る」 ◇「雛菓子」 ◇「雛の灯」 ◇「雛の客」 ◇「雛の宴」 ◇「雛の宿」
3月3日、桃の節句。女児のある家で幸福・成長を祈って雛壇を設けて雛人形を飾り、調度品を具え、菱餅・白酒・桃の花などを供える祭。雛遊び。雛人形。雛の燈。ひひな。
例句 作者
旅人ののぞきてゆける雛かな 久保田万太郎
嫁せし子の雛が眠れる天袋 小岩井清三
東西に嫁して姉妹や雛飾る 石 昌子
誰をおもひかくもやさしき雛の眉 加藤三七子
いきいきとほそ目かがやく雛かな 飯田蛇笏
裏山の日暮が見えて雛祭 齋藤愼爾
雛の間の更けて淋しき畳かな 高浜年尾
次の間の雛の客となりにけり 角川春樹
かにかくに飲食雛の夜となりぬ 河合未光
箱を出て初雛のまゝ照りたまふ 渡辺水巴
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このまんま金魚でいたい蝌蚪の夢

2018-03-05 | 
このまんま金魚でいたい蝌蚪の夢



おたまじゃくしには幼児期の残像が重なる
喜寿に近い齢となったが
休むことなく動き続けるその姿はなぜか眩しい
手足が出て蛙に変異するようには思えない

人は容かえないが
環境境遇によって幼児期の志は叶わぬことが殆どだ

おたまじゃくしも
可愛い金魚に似たまんまで過ごしたいのが本心かも知れない


原句 2017/2/23
このまんま魚でゐたい蝌蚪の夢

魚」をより具体的な「金魚」にした
「季語の矛盾は句意からいって許されるだろう

【蝌蚪】 かと(クワト)
◇「おたまじゃくし」 ◇「蛙の子」 ◇「蝌蚪の国」 ◇「蝌蚪の紐」
カエルの幼生。お玉杓子。卵から孵化して間のないもので、鰓を持ち、水中で生活する。体は卵形。まだ四肢がなく、尾だけで泳ぐ。蛙の子。
例句 作者
ひろしまや蝌蚪には深き地の窪み 野田 誠
川底に蝌蚪の大国ありにけり 村上鬼城
足が出て手が出て蝌蚪のさびしさは 行方克己
蝌蚪の国ありて牡丹の別の国 森 澄雄
天日のうつりて暗し蝌蚪の水 高浜虚子
蝌蚪の水とろりと月を映しけり 加古宗也
放埒のおたまじやくしでありにけり 増成栗人
蝌蚪ほどの誤植と笑ひとばしけり 能村登四郎
湖国いま水の微熱の蝌蚪曇り 小澤克己
蝌蚪の紐ゆれて日輪水にあり 五十嵐播水
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デイケアの声のそろいて春の風 たけし

2018-03-04 | 
デイケアの声のそろいて春の風




老人のデイケアが盛んで
近所の友人も毎日の党に通っている

立ち寄ってみたがみな元気で顔つきが良い
人はやはり集団にいてこそ活性するのだと思う

春風にのって合唱はみごとな出来栄えだった

原句 2017//2/9
デイケアの声のそろへり春の風
「そろえり」に必然性がなかった

◇「春風」 ◇「春風」
暖かくのどかな春の、東または南から吹く柔らかな風。ときには強風が吹くが、寒くない。とくに春風と言う場合は、駘蕩たるおだやかな風である。
例句 作者
春風にこぼれて赤し歯磨粉 正岡子規
老ミックジャガーまた佳し春の風 永方裕子
退院の一歩春風まとふなり 朝倉和江
膝抱いてゐる手を春の風が解く 粟津松彩子
春風や闘志いだきて丘に立つ 高浜虚子
国曳いて来よ春風の真ん中を 榎本好宏
春風や堤長うして家遠し 蕪村
晩年と思ひ打消し春の風 大井戸 辿
古稀といふ春風にをる齢かな 富安風生
泣いてゆく向ふに母や春の風 中村汀女
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かげろえる黄泉平坂六合目 たけし

2018-03-03 | 
かげろえる黄泉平坂六合目



来し方に超えた山坂はみな黄泉平坂
行方にかげろえるあの坂はなんともゆるやか
超えされば彼岸にも
八合目 いや六合目
おみちびきに委ねて無聊


原句2017/2/3
春帽子よもつひらさか八合目
「春帽子」では句意にそわない



【陽炎】 かげろう(・・ロフ)
◇「陽炎燃ゆる」 ◇「糸遊」(いとゆう) ◇「遊糸」(ゆうし) ◇「野馬」(やば) ◇「陽焔」(ようえん) ◇「かぎろい」 ◇「かげろい」
例句 作者
先頭は陽炎連れてゆくごとし 鈴木とめ子
斑鳩の陽炎よりの出土なる 酒本八重
原爆地子がかげろふに消えゆけり 石原八束
万歩計つけて陽炎濃きところ 中村菊一郎
海女あがり来るかげろふがとびつけり 橋本多佳子
陽炎やふくらみもちて封書来る 村越化石
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春の雪座敷童の笑い声 たけし

2018-03-02 | 
春の雪座敷童の笑い声




雪国にある座敷童の民話
深い雪も春光に風花が舞うころになると
その表情はやわらかく
どこからか座敷童の笑い声が聞こえるようだ
村の子供たちは冬の季節
家に閉じこもる座敷童だったのだから


発表 2017/1/20
ぼたん雪座敷童の声のする

「ぼたん雪」よりも「春の雪」が句意にちかそう


【春の雪】 はるのゆき
◇「春雪」
春になって降る雪。冬の雪と違い、溶けやすく、降るそばから消えて積もることがない。大きな雪片の牡丹雪になることが多い。
例句 作者
春の雪青菜をゆでてゐたる間も 細見綾子
春雪をふふめば五体けぶるかな 加藤耕子
元町に小さな画廊春の雪 野木桃花
琴の糸煮てゐる比良の春の雪 大川真智子
春の雪よき想ひ出と問はるれば 梶山千鶴子
湯屋までは濡れて行きけり春の雪 来山
うつすらと中洲のかたち春の雪 広渡敬雄
春雪に火をこぼしつつはこびくる 橋本鶏二
手鏡の中を妻来る春の雪 野見山朱鳥
春の夜の雪のひそかにしたたかに 清水青風
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植田水縄文人の裔の顔 たけし

2018-03-01 | 入選句
植田水縄文人の裔の顔



もうすぐ田水張る時期となる
田水に映る農夫の顔
縄文時代から田水には
同じように耕作者の姿をとらえていたのだ
今日は連綿とつづく昨日のつながりなのだ


発表 2017/5/29 読売俳壇 矢島渚男選




【植田】 うえた(ウヱタ)
◇「早苗田」
田植を終わって間もない田をいう。苗は1~2日で根付く。田水が張られ、青く細い苗が水面すれすれに葉先を出している。やがて苗が生長し一面青々となると「青田」と呼ばれる。《青田:夏》
例句 作者
ひんがしに白き月あげ植田かな 遠藤まさ喜
水張りし植田淡海と繋がれり 木暮剛平
植ゑし田に夕焼淡くみだれたり 相馬遷子
白鷺の白をあゆませ植田水 木内怜子
植田径馬の匂ひが「お晩です」 佐野鬼人


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