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「消えた戦法の謎―あの流行形はどこに!?」

2008年07月15日 | 書籍レビュー
 「消えた戦法の謎―あの流行形はどこに!?」(勝又清和著、MYCOM将棋文庫、700円)
 最近指されなくなった将棋の戦法について解説している。
 矢倉(スズメ刺し、2九飛戦法、森下システム、米長流急戦矢倉…)、振り飛車(左美濃、ツノ銀中飛車、風車、玉頭位取り…)、角換わり(早繰り銀、角換わり棒銀、筋違い角戦法)、相掛かり(横歩取り、塚田スペシャル…)など21の戦法について、それらがなぜ指されなくなったか・・・将棋の進化の歴史と言える。

 例えば、対振り飛車戦の場合、棋力が互角であれば、戦いが起こった時、玉は一路でも戦場から遠い方がいい。一路の違い、一手の違いが最後に働く。極めて理論的である。だからと言って居飛車穴熊が最強かというとそうではない。振り飛車側は、居飛車穴熊の攻略法をあみ出すのだ。
 どの戦法も長所短所が必ずあり、有利か不利かというのは現在の相手の陣形に対して自分の陣形がどうあるかで決まる極めて動的なものだ。膨大な手順がツリー状に広がっており、優劣が明らかな枝もあるし、不明な枝もある。プロはそれを知った上で、相手が辿るであろう枝を探り、自分が有利になる道に誘導し、優劣がはっきりしない局面で刺し違えの一手の有利を目指す。

 消えた戦法というのは、当時は必然性があって生まれてきたが、今は辿られない「枝」にある。将棋って何をやっているのかが少し分かるかもしれない一冊だ。ただし、本書は2003年で古いのが難ではある。