たままま生活

子育ての間にこっそりおでかけ・手作り・韓国語・・・。
多趣味な毎日を紹介します。

ジョン・ソンテ 『狼』

2011-10-26 21:08:59 | 韓国文学


ここ何年か李箱文学賞の佳作の常連のジョン・ソンテ作家。
ソウル留学中の後輩に送ってもらった短編集を読んでいます。
(BookCafeソウル支部の業務ですから・・)
短編を3つ4つ読んだだけですが、私は大好きで
みんなに「次の李箱はジョン・ソンテですよ!」と言ってます。

この人の小説はなぜかモンゴルを舞台にしたものが多いのです。
もともと共産国家だったモンゴルと韓国の関係はやっぱり日本人が考えるのとは違う感じを受けます。作家とモンゴルと何かご縁があるんでしょうけど、気になります。

短編集はまだ読み始めたばっかりなんですが、印象的な話をひとつご紹介します。
短編集の表題にもなっている『狼』です。

舞台は現代のモンゴル。
主人公の男性はモンゴルの民主化の中で家畜を売り財産を得て、固定のゲルを持ち定住し、キャンプ村を経営しています。
資本主義には懐疑的で、遊牧民の文化を大切に思いつつも遊牧を諦め、いつかは草原に戻りたい、と願いつつ、同時に草原に戻るのは自分が埋葬される日までこないとも覚悟しています。
男性は自由経済の中でタイミングよく財をなしたものの、虚無感から酒浸りの日々を送っています。
虹の国(モンゴル語では韓国のことを虹の国、と呼ぶんですって!ステキ)から来たハンターが狼を狩ろうとするところから物語は不吉に始まります。

モンゴル人は狼を恐れていて、狩の獲物にはしないといいます。
ましてや殺生が禁じられているラマ寺院の領地です。
物語は想像通り悲劇的な終わり方をします。

共産主義から自由経済へ、草原から都市へ。
急激な変化の中でモンゴルの人たちもさまざまな葛藤を抱えていたでしょう。
日本人や韓国人も共感できる部分があるはずです。

物語の中で、主人公の娘の片思いの相手が明らかになるのですが、それがわかってしまう意外な仕掛けと息をつめてじっと読みたくなる描写が印象的。(ネタばれなので書きませんが)

一人称=物語の視点が章ごとに変わるので、私たちにはちょっと厳しいところもありますが、
これが最後の章で効果的に効いてきます。(ネタばれなので・・以下省略)



モンゴルの草原でホコリっぽい風に吹かれてみたい・・・・とは思いませんが、
外語祭の時にはモンゴル科のゲルでボーズを食べたいなぁ、と思いました。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
本当に (ハーちゃん)
2011-10-28 18:41:22
悲劇になる予感がしてきますね。図書館には残念ながらありませんでした。
今「어디선가 나를 찾는 저화벨이 울리고」を読んでいます。この時代のもの、初めて読むのかな? 色々な意味で面白いです。
「ボーズ」って餃子みたいな食べ物だったかしら? 
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ボーズ (たま)
2011-10-28 18:55:48
ボーズは焼きショーロンポーみたいな感じです。
餃子みたいのもあるんですが、名前が思い出せません。

「어디선가~」は重く苦しい話ですが、最後の最後に希望があります。がんばって読んでね。
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Unknown (ゆう)
2011-10-29 14:04:09
外語祭か各国料理の屋台が売りですものね

揚げ餃子みたいなの、もしかしてバンシュかしら?
私はホーショールが好き。モンゴルの方のお手製熱々をいただいたことがあります。15cm位もあってピロシキみたいな感じでとってもおいしかった!

ボーズみたいに小麦粉の皮で主としてお肉を包む料理って、国によって少しずつ違うけれど、ユーラシア大陸に広く分布しているみたいですね。
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そうそう。 (たま)
2011-10-29 20:57:48
ホーショールでした。

ペリメニとかラビオリとか考えてみたら全部そうですね。

今年もちっちゃくBookCafeをしようかと計画中。またお知らせしますね~。
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