雑感六題(2020.12.10~25日作)
1 掻き寄せる水は 手の中から
向こうへ逃げてゆく
押し出す水は 手の中から
こちら側へ向かって 流れて来る
落語にもある言葉
我を張り 自己を押し通すよりも
謙虚に 他者を思い遣る
その時得られる水の量は
我を張り 自己を押し通した時よりも
はるかに多くの量を得られるだろう
2 声の大きい者には注意(用心)しろ
プロパガンダ(宣伝)である事が多い
小さな声の呟きには耳を傾けよう
真実は一人の人間の呟きの中に
隠されている事が多い
3 教養とは何か ?
世の中の諸事全般を理解し
咀嚼する力だ
現代の世の中には 知識ばかりが豊富で
教養のない人間がいかに多い事か
4 対象物が同一である時
受容体が大きければ
対象物は小さくなる
受容体が小さければ
対象物は大きくなる
一年という年は
大人のバケツには少なく感じられるが
子供のバケツには多く感じられる
5 志しのない人間に対しての無規制は
凶器を与えるようなものだ
志しとは良心だ
良心とは
人間を思う心だ
人間あってのこの世界
6 高い徳の人というのは
周囲の人々と同じ条件に居ながら
自分を省みず 周囲の人々を
思い遣る事の出来る人を言うのだろう
自分が裕福な環境に居て
人々の為に尽くす人は 多分
善行の人と言うのだろう
尤も どちらの人にも
それぞれの気質が備わって居なければ
出来るものではない
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雪の降る街を(2)
かつては春に採れたこの地方名産の筍も、秋のナメコも、半分以上も採れなくなった。広く知れ渡ったかつての穴場には、季節の折々に余所者達が殺到するようになった。地元優先も何も観光事業の下では空しいお題目にしか過ぎなかった。
かつてあった季節ごとの喜び、秋のナメコの収穫で得た現金で寒い冬を過ごした人々は、春の木々の芽吹きを待ちわび、その訪れと共に顔を出す筍を求めて競うように竹林へ入って行った。今日は背負いかご一杯、次の日には二杯を目指して、と収穫に励んだ。山は豊かな宝の山だった。それゆえに地元民の誰もが山を、わが家の庭のように慈しみ、大切にした。根こそぎ、収穫物を取り尽してしまうような愚行は誰もが慎んだ。
そんな彼等は懸命に働いた後の、汗に汚れた顔や体を傍を流れる渓流の清らかな水で拭いながら、一日の収穫を自慢し合った。
その夜の夕食は事のほか楽しいものとなった。光男の父なども地酒に顔を赤らめながら、誰がどうした、彼がどうだった、などと機嫌よく話して飽きなかった。母は母で、採れたてのその日の収穫物で自慢の料理を振舞った。そして翌日には、父か母かのどちらかが、昨日の収穫物を携えての行商に向かった。
そんな時、五歳か、六歳にしか過ぎなかった光男もまた、付いて行った。小高い山を越えての一日がかりの行程だったが苦にならなかった。父や母と一緒に居られる事が嬉しかった上に、自分がそうする事で、しっかりとこの地の大地に根を下ろし、生きているような感覚を無意識の裡に感じ取っていた。そして更に、筍や山菜の季節が終わるとヤマメやイワナの解禁だった。
光男は小学生の頃から渓流へ入るようになっていた。その小学校を終わる頃には、いっぱしのイワナやヤマメ捕りだった。彼の稼ぎが家計を潤すようにもなっていた。
山間の小さな村には小学校の分校だけで、中学校はなかった。小学校卒業と共に光男もまた、町にある学校に通わなければならなくなった。そしてこの頃になると、村の中にも不穏な噂話しが聞こえるようになって来た。中学を卒業する頃になってそれは最早、噂話しではなく、現実のものとなっていた。この地を愛し、慈しんで来た父も光男にこの地を出る事を勧めなければならない現実が訪れていた。
無論、光男の心の内に生まれた葛藤は数知れなかった。自分が不幸な時代に生まれた事への嘆きと共に、未知の土地への不安が光男の心を脅かした。自分の家の何代にも渡って受け継がれて来たこの地に生きる血が、素直に外部の環境を受け入れられるだろうか ? この村そのものが光男には光男自身であった。この村の総てが光男の心も体をも形成していた。この村が無くては生きてゆけない。そんな感覚が幼い頃から既にしっかり根付いてしまっていた。この村を出る事は光男自身の崩壊であった。
村では誰もが必死に奔走した。少しでもこの村が今までのままの自然豊かな村として生き残れるように。村人達の誰に取ってもこの村は村人達自身であった。
しかし、現実は容赦なく進んでいた。そして、遂には村人達の誰もが諦めの中に達観しなければならない状況が現実の推移と共に訪れていた。
光男もまた、迫り来る中学卒業の時期と共に、決断をしなければならない状況に追い込まれていた。教師は就職への斡旋のため、光男の気持ちを急かした。自然の中で自然に寄り添い、慎ましく生きて来た一家に光男を高校へ進学させるための余裕もなかった。村の生活は総てが自然と共に、自然に寄り添って生きてゆく、その前提のうちに成り立っていた。
光男が就職した時、工場では新入り工員は光男一人だった。最初光男は工場主の家に住み込みとなった。一年が過ぎてから、その家を出た。不義理をした訳ではなかった。ただ、彼に取っては予想通り、他人の家への住み込み生活は快適なものとは言い難かった。自然の中でのびのび、自由気ままに生きて来た身には人との係わり合いの総てが息苦しく、息が詰まりそうだった。その上、日々の生活の中で心を潤してくれるものは何もなかった。彼に取っては.故郷のあの山や渓流が心を満たしてくれる総てだった。彼は自ずと脱け殻のような自分を意識するのと共に、無口で陰気な少年になっていた。
工場主の家を出る時、光男は、
「池袋に親戚の人が引っ越して来て、一緒に住まないかって言うんで」
と、言い訳がましく言った。
だが、工場主の大学一年と高校二年の娘のいる家庭ではむしろホッとしたように、
「出て行ってくれて良かったわ。人間は悪くはないけど、陰気臭くて、こっちまで気持ちが滅入ってしまうわ」
と、言い合っていた。
光男は住居を変えてからも、工場へは遅刻する事もなく、無断欠勤をする事もなく、きちんと通い続けた。四畳半一間の部屋には家財道具と言えるものもなくて、寝具や食事の道具だけが眼に付く程度だった。話し相手がいる訳でもなかった。只、誰に干渉される事も無い一人だけの生活は、これまでの生活よりも幾分、光男の気持ちを和らげてくれた。
二
更衣室の鍵を掛けて外へ出ると、途端に雪が絡まり付いて来た。光男は慌ててジャンパーの襟を立て、首を埋め、ポケットに手を入れてうつむきながら歩き出した。
朝方は雨の気配も無かった。それだけに傘の用意もしていなかった。
裸電球が照らす工場内の庭を足早に抜け、通りへ出た。薄暮が急速に夕闇に変わり、街の灯が輝いた。
雪は白く辺りを染めて、切れ間もなく降り続いていた。
その雪の乱舞する夕闇の中を明かりを点したバスが行く。タクシーが続く。
勤め帰りの人。買い物帰りの人。商品の数々を照らし出す店店の灯り。街は夕闇の中でも活気に溢れていた。
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桂蓮様
有難う御座います
いろいろブログ 拝見させて戴きました
世の中には 変わった人もいます
でも 他人を中傷して平気でいる人間には
困りものです 結構 そういう人間は
多いものですが
トランプ氏などはその最たるものではないでしょうか
実際のところ トランプ大統領という声を
聞かなくなってホットしています
自分の国の事ではないのですが アメリカと言えば
痩せても枯れても他国に与える影響の
多い国です そこの大統領の非常識には
世界中が振り回されます
でも それが終わり 一安心という思いです
後はバイデン氏がどの程度 頑張ってくれます事やら
期待半分 不安半分で見守ってゆきます
一月十八日のブログ 拝見致しました
いいですね 桂蓮様のお気持ちが
直に分かります
これからのブログ 御期待しております
有難う御座いました
takeziisan様
有難う御座います
「夜霧のしのび逢い」
懐かしいですね 映画 観ました
今 もう一度観てみたいと思っていますが
なかなか映していないようです
何故か 主人公の雨に濡れて男と別れる時の
シーンだけが鮮明に焼き付いてます
曲は「ジャニ ギター」と共に最も好きな曲の
一つです
スイス旅行の思い出 羨ましい限りです
雑木林の公園 いい環境ですね
雑木林の道というと なぜか
深い郷愁に誘われます お写真
堪能しました
中学生時代の日記 貴重ですね
わたくしには有りません
とびとびに付けた記憶はありますが
残ってはいません
「若者よ」 この曲 知りませんでした
歌声喫茶の流行った時代 しきりに
新宿辺りを闊歩していたのですが
歌声喫茶なんて と軽蔑していて
入った事がありませんので知る機会が
無かったのか知れません
それにしてもブログの記事 いろいろ
昔を思い出させてくれます
有難う御座います
これからも楽しみにしております