遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(330) 小説 雪の降る街を(3) 他 過ぎ行く時 他 2篇

2021-01-31 12:02:27 | つぶやき
          過ぎ行く時(2021.1.11日作)

 永遠に過ぎ逝く時間 時ほど 
 残酷で 慈悲深い ものはない
 今現在の 溢れるばかりの幸せ 幸福も
 時の過ぎ逝く中では いつか
 消えてなくなり
 今現在の 耐え難い苦痛 哀しみも
 時は いつか 忘却の
 遠い彼方へと 運び去ってくれる
 時は すべてを奪い去り すべてを
 押し流し・・・・・
 過ぎ逝く時が
 運び去るものたちの 再び
 還り来る事はもう
 無い 


          子供の命

 一人の子供の命は 立派に一つの命
 他の誰のものでもない 子供自身のもの
 どんなに幼い命でも
 他者(親)のものではない


          命

 堅固でもろく 頑強 繊細
 磨けば光る 磨かなければ曇る
 煌めく命 枯れ行く命
 人の手の温もり 人の手の冷たさ が
 映し出す 命の輝き 命の衰え



          -----------------

          雪の降る街を(3)

 光男は駅まで十分の道を商店の軒先伝いに歩いた。たとえ、十円や二十円の小さな金額でも無駄な出費を惜しんだ。金銭的には豊かではなかった生活が身体の中に染み込んでいた。村では現金は宝物のように惜しんで扱った。都会の浪費の生活には馴れていなかった。それに高給取りであるはずもなく、靴の中がびっしょりと濡れて来るのも構わずに歩いた。歩いたお陰で身体の芯は温まった。
 駅に着くとそのまま切符売り場に向かい、改札口を抜け、ホームへ出た。
 ホームでは雪をはらんだ風が屋根の下にまで舞い込んで来て、電車を待つ間のうちにもたちまち身体が冷え込んだ。雪には馴れていたはずの光男だったし、それに村での雪は東京に降る雪の比ではなかったが、それでも光男は故郷での雪を冷たいと思った事は一度もなかった。人気の少ない駅のホームにぽつんと立って、次の電車を待つこの身に沁みるような寒さは故郷の雪の中にはない。故郷での雪には、降る雪の中にも暖かさがあった。人の息吹が感じられた。人の温もりが雪の冷たさを包んでいた。この心の中にじかに吹き付けて来るような寒さ、肌身が削り取られてゆくような寒さ、そこには人の心の温もりの一欠けらもない。
 電車が来た。
 人々が吐き出され、また、人が乗る。
 光男は今の時間にしては空いている車内の一つの座席に腰を降ろした。
 電車はやがてゆっくりと動き出す。
 光男はなんとなく車内に感じられる温もりと共にホッと、安堵の息を吐いた。   
 車内の明かりが冷え切った心も身体も温めてくれるような気がした。
 電車はやがて徐々に勢いを増し、不安定に揺れながら雪の中を走った。
 雪はそんな電車の車窓に一層、激しく降りかかった。既に暗さを増している外の景色と共に光男の顔がその雪の中に映し出される。
 また、電車が止まる。
 人々が乗り降りする。
 幾度か、そんな事の繰り返しの後にやがて、電車は池袋駅に到着した。光男も人々の後に従って電車を降りる。
 駅のホームは思いも掛けない人込みで溢れていた。みんなが雪の中で帰宅を急いでいるようだった。
 地下道を抜けて駅を出ると、タクシー乗り場やバスの乗り場などには乗車を待つ人々の行列が出来ていた。光男はその場に立ち止まったまま、そんな景色を見つめながら自分がどうするのかを少しの間、思い巡らした。普段なら、このまま街の中を歩いて行って、途中で夕食用のパンを買い、アパートへ帰るのだったが、今夜はなぜか、その心に迷いが生じた。なんとなく、暗く憂鬱な四畳半の冷たい部屋へ真っ直ぐ帰る気になれなかった。温もりのある灯りが欲しかった。待つ人もいない部屋の冷たさと孤独が光男の気持ちを萎えさせた。
 光男は気持ちを固めると再び雪に濡れるのも構わずに歩き出した。身体の濡れる寒さより、心の寒さの方に耐えられない気がした。
 街は光男に取っては、決して親しみ易いものではなかった。都内でも有数の繁華街は華やかなネオンサインで街を彩っていたが、普段の光男がそこに足を運ぶ事はなかった。心の中に故郷の素朴な山河を抱きつづけている光男にはその景色は、虚飾以外の何ものでもなく、興味を誘われるものでもなかった。彼の心には今でも、夜になれば漆黒の闇に包まれて、瞬く星の数々が上空を彩る故郷がそのまま至福の世界として生き続けていた。彼の心が還るのは何時もその世界であった。その世界以外に光男の望むものはなかった。
 雪は、光男が歩いて行く華やかなネオンサインの街にも降り続き、白く覆い始めていた。バー、キャバレー、クラブ等が点すネオンサインの明かりが雪の中に溶けていた。
 車が雪をはね除けながら通り過ぎた。
 華やかな女性の一団が一つの傘に身体を寄せ合い、はしゃぎながら往き過ぎる。
 バー、キャバレー、クラブ、喫茶店、等々が軒を並べる通りへ出た。
 その通りの名前を光男は知らなかったが、なんとなく、その華やかさに心魅かれるものを感じる。同時に、勝手知らない不安が心を過ぎる。
 光男は店員達の呼び込みなどが騒々しいその通りを迷いの心を抱いたまま、何時の間にか通り過ぎていた。気が付いた時には、ネオンサインの点滅も少ない一角に出ていて、同時に何故かその通りに出た事にホッとしながら、ここなら、自分でも入れる店がありそうな気がした。
 だが、それでもなお、この東京へ出て来てからの始めての行動に光男はためらいと怯えを覚えながら、何度もあっちの通り、こっちの通りと、迷う心のままにさ迷い歩いた。
 雪はその間にもなお、止み間も無く降り続き、着ているジャンパーや履いている靴を濡らした。
 寒さがいよいよ身体の芯にまで染み込んで来て、同時に馴れない都会の雪の中を歩き続けた疲労感にも囚われてようやく心を固めると、比較的落ち着いた雰囲気を醸し出している様子が外からも伺える一軒の、小奇麗な軽食喫茶の店を選んで足を踏み入れていた。


          三


「いらっしゃいませ」
 人目を避けるようにして店内の片隅の椅子に腰を降ろした光男に、光男と同じ年頃と思えるウエイトレスが声を掛けて来た。
 光男は差し出されたメニューの中から親子丼を注文した。
 歩き続けたせいか、空腹は極度に達していた。
「はい、親子丼ですね。少々、お待ち下さいませ」
 ウエイトレスはてきぱきと好感の持てる態度で言って去って行った。
 光男は煙草を吸うわけでもなく、ウエイトレスが置いていったコップの水に手を延ばす気にもなれずに、大きなガラス窓の向こうに見える街の通りに眼をやった。
 雪はなお、止み間もなく降り続き、積雪が増しているのが眼にも明らかだった。車の通りも、人の通りも少なくなっていた。
 何時まで、この雪は降り続くのだろう ?
 テーブルに片肘を付いて、そんな事を考えながら光男はぼんやりと大きなガラス窓の向こうに降る雪を見つめていた。



          ---------------


          桂蓮様

          ブックマーク 有難う御座います
          嬉しい反面 果たして 御期待通りのものが
          出来るのか心配でもあります
          ギックリ腰との事 無理をなさらず
          お大事にして下さい
          自分の身体の回復は 自分にしか出来ない
          いい言葉ですね ともすればやれ医者だ
          やれ薬だ と外の物に頼り勝ちですが 
          自分の努力なくしては 病気の回復も    
          望めません わたくしも以前 
          花粉症で眼や鼻が目も当てられない程に
          腫れ上がってしまった事がありました
          今はなんともありませんが わたくしの場合  
          指圧で治しました 指圧と言っても
          専門医に行ったわけではありません
          身体のツボの本がありましたので
          それを参考にしました 指圧では治りは
          即座にとはゆきませんが 治ると再発がなく
          今では全く問題ありません 指圧も身体のツボも
          古い治療法とバカにされそうですが
          案外 見下したものではないようです

          英語の勉強法 とても参考になりました
          日本の英語教育は文法ばかりで会話が駄目だ
          と言われているようですが そうですね 言葉なんて
          文法で喋るものではありませんものね
          わたくしは洋画が好きで よくアメリカの映画
          も観ますが 馴れて来ますと自然に言葉が
          耳に入って来て 訳文を見ながら 
          ああ こういう場合は こんな風に言うんだ
          などと 独りで納得しています それにしても  
          なんとなく アメリカの言葉の使い方は
          日本の言葉の使い方に対して
          単純な気がするのですが
          これは英語の出来ない人間の
          認識不足のせいてしょうか
          これからもいろいろ面白い記事 御期待しております
          有難う御座いました