遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(341) 小説 蜃気楼(8) 他 人間の幸福 他

2021-04-18 11:52:52 | つぶやき
          人間の幸福(2021.4.14日作)

 人間の幸福は
 地位 名声 金銭の豊富さ 等で 
 得られるものではない
 その奥にもう一つ 必須のものがある
 何か ?
 人と人との繋がり 心の触れ合い
 心の触れ合いのない人間は
 どんなに地位 名声 豊富な金銭を得ていても
 「虚無」の世界 
 核 芯 のない世界を生きているに等しい
 何故なら 人は
 人の存在の中でしか生きられない存在
 だからだ


          本物

 意識して あれをしよう これをしよう
 そういう境地にいる限り それは まだ
 本物とは言えない 知識からの借り物
 その人の本質のもの とは言えない
 作為のないところ 無意識的に出て来る行為
 それこそが その人の本性に基づいた
 本物の行為 行動 その人の真実
 真性を表わすものだ
 頭で考えるな
 身体で覚えろ



         作為



 無作の作
 作為のない
 自身の身の内から出る行為には
 その人の真実 
 本質が含まれる



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          蜃気楼(8)


「何か、お飲みになりますか ?」
「ラムサワーでいいわ」
「いつもの通りに ?」
「ええ、甘口でね」
 なぜか、グラスを口に運ぶピッチが速かった。
 明子自身はその事に気付いていなかった。
 気が付いた時には、カウンターの奥のグラスを並べた棚がゆがんで見えた。
 最後に一本残ったロングサイズのポールモールが、なかなか袋から取り出せなかった。
「ああ、わたし、なんだか酔っちゃったみたい」
 鉛を貼り付けたように重く感じられる舌で、それでも自分をちゃんと見せようとして明子は言った。
「今夜はだいぶ、お飲みになりましたよ」
 たのちゃんも驚いた風で、言った。
「バカねえ。そうと知っていたら、なぜ、止めてくれなかったのよ。あんたが介抱してくれる訳でもないのに」
 明子はそれでも冗談を言う余裕があった。
「すいません。あまり気分が良さそうだったので」
 たのちゃんは笑って言った。
「やけ酒よ、やけ酒」
 そう言うと本当に悲しくなって来て、泣き出しそうになり、懸命に堪えた。
 眼の前にはまだ、三分の一程の量が残っているカクテルグラスがあった。
 これ以上飲むと嘔吐(もど)してしまいそうな気がして、明子は手を出さなかった。
 ようやく煙草に火を付けて、言った。
「氷を入れて冷たくしたお冷をちょうだい」
「はい、分かりました」
 それから後の事は記憶がなかった。多分、カウンターに寄りかかったまま、うつらうつらしていたのに違いなかった。気が付いた時には、透明なグラスの中で氷が溶けて水だけになっていた。
 灰皿の縁に置いた煙草が三分の二程残って消えていた。
 カウンターには、明子のほかに二人連れの男女の客がいるだけだった。
 明子がキョロキョロしてい姿に気付いてたのちゃんが言った。
「どうですか。なんともありませんか ?」
「わたし、眠っちゃったのかしら ?」
「ええ、ちょっとの時間ですけど」
「知らなかったわ。今、なん時 ?」
「十一時二十分になるところです」
 たのちゃんは何処かにある時計を見たのかすぐにそう言った。
「ああ、あ。すっかり氷が溶けちゃって」
 明子は氷の影もない水だけのグラスを手に取った。
「新しいのに取り替えます」
 たのちゃんは慌てて言った。
「いい、いい。これで沢山」
 明子はグラスの水を一気に呑んでから言った。
「煙草をちょうだい」
「セブンスターだけになっちゃったんですけど」
「いいわ。なんでも」
 どれ程の時間、眠っていたのか分からなかった。
 それでも眠ったせいか、気分は幾分、落ち着きを取り戻していて爽快感さえあった。
 たのちゃんが持って来たセブンスターの封を切って一本抜き取ると唇に運んだ。
 たのちゃんがマッチをすって火を付けてくれた。
 先程より、大分良くなった気分と共に明子はゆっくりと煙りを吐き出し、吹かした。もう、呑みたくはなかったが、なんとなく、カウンターを離れる気にはなれなかった。ここからはさほど遠くはない赤坂のマンションの自宅へ帰る気になれなかった。このバーのカウンターに向かって腰を落ち着け、煙草を吹かしている、それだけで気持ちが安らいだ。ーーここには確実に人の息遣いがあって、それが伝わって来る。
 一人だけの部屋へ帰って孤独と顔を付き合わせる事が明子には怖かった。
 自分と係わりのない人間であっても、人の中に居れば気持ちが落ち着いた。
 いつからこうなってしまったのだろう ?
 いつからか明子は、夜が更けてから自分の部屋へ帰るのが怖い人間の一人になっていた。赤坂にあるマンションはいわゆる臆ションと呼ばれる建物で、一人の住まいとしては贅沢過ぎるほど贅沢に、広く、豪華に造られていた。その上、家具は明子が凝りに凝ってどれも、一流と言われるブランド品ばかりが揃えられていた。デザイナーとして認知されてから十年に近い歳月を過ごして来て、友人、知人には、著名人が多かった。俳優、テレビタレント、作家やジャーナリスト、歌手など、数え上げればたちどころに十指に余った。六本木、原宿、新宿、銀座の四ヶ所にブティックを持ち、そこで扱うオリジナル商品は指輪、イヤリングなどの小物にいたるまでも評価は高かった。更に、週二本のレギュラーテレビ番組を持ち、名前も顔も売れていた。スケジュール表は黒や赤の文字で隙間がない程に埋め尽くされていた。不足に思う事は何もなかった。望めば手に出来ないものはない、そういった境遇に近い場所にいた。そしてそれは、明子がかつて、滝川裕子の下で使い走りのような仕事をしながら、デザイナーを目指していた頃から夢に見ていた世界だった。ーー今、明子はその夢を手にしていた。殊にここ二、三年は仕事上では最も充実していて、それなりの成果も手にして来ていたのだ。いったい、それなのに何故 ?
 明子には自分自身の心の裡が分からなかった。暗い夜のつむじ風のように心の中を吹き抜けてゆく、この寒々とした得体の知れないもの・・・・華やかな人々に囲まれたパーティーの席や、バーのカウンターではしゃいでいる瞬間に、ふと、心の隅に顔を覗かせるこのうそ寒さ。ーーそれは日を追い、年を重ねるに従って次第次第に深まりを増して来るようだった。今では明子はそのものが見えると、慌てて顔をそむけて、華やかな現実に身を置いた自分だけを見詰めるようにしていた。いつだったか、その執拗な心を侵食して来る暗いものから逃れるために、変装したスター歌手とラブホテルの門をくぐった事もあった。作家や俳優、テレビタレント、などとも何度かベッドを共にした。近頃ではその節度のなさから、自分が彼等の間でどのように見られているのか、それを恐れるようにさえなっていた。幸いまだ、露骨な悪評はたっていないようだったが。
 だが、近頃の明子は、そんな事に気を使い、恐れる事にも疲れて来ていた。このまま自分が何処へゆくのか ? 先の見えない不安の中で明子は、自分が世間で見られているような成功者ではなくて、惨めな敗北者の一人にしか過ぎない人間のように思え来てならなかった。このささくれ立った心の荒み。いったい、それは何処から来るのか・・・・ ?
  答えが見い出せなかった。ベッドの上で交わす愛だけでは満たされない何か ?
 それはいったい、なんなのか ?
 家庭の温もり ?
 人と人との繋がり合い ?
 現在明子が持つ、数多くの友人、知人との間の繋がりだけでは不足だと言うのだろうか ? 心の繋がりがないとでも言うのだろうか ?
 そんな事はない。仕事の上で行き詰まれば、良い相談相手になってくれる滝川先生もいる。
 辰野重臣にしても、佐野一枝にしても、信頼出来る友人だ。女優のY ・S。男性作家のM ・O。今は結婚しているが、変装してラブホテルの門をくぐった歌手とは今でも友情は続いている。彼等は誰もが親身になって明子の悩みを聞いてくれ、相談にも乗ってくれる。その意味で明子は、友人に恵まれているとも言えるのだ。それでいていったい、何故 ?
 家庭の温もり ?
 確かに明子は家庭の温もりというものを知らない。故郷の福岡を出て以来、ずっと一人の生活を続けて来た。しかし、それは自分から望んでの事ではなかったのか ? 結婚生活は夢見た事さえなかった。柚木正信との関係の中に於いてさえそうであった。



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          桂蓮様

          有難う御座います
          風邪との事 御気をつけ下さいませ
          変な病気が蔓延しています
          くれぐれも御大事に
          それにしても便利な世の中になりました
          こうして遠く離れたアメリカにお住まいの方と
          まるで近所同士のように会話が出来るとは
          その良し悪しは別としましても
          中国嫌い 何処の国に於いてもそこに住む
          人々は悪い人ばかりではないと思いますが
          その国を治める者達が問題ですね
          習近平体制 気を付けなければいけないと思っています
          彼らにしてみれば自分たちが生き残る為の  
          必死な思いの足掻きなのでしょうが
          「常にあるもの無いもの」再読させて戴きました
          面白いです 自分の心は秋なのかも知れない
          秋が終わればまた春も巡って来ます きっとまた
          新たな自分の発見があるのではないでしょうか 
          有難う御座います



          takeziisan様

          有難う御座います
          ブログ 今回も変わらず
          楽しく拝見させて戴きました
          いろいろ懐かしい思い出が甦ります
          わたくし達も窓拭きしました
          田植え休みありました 
          わたくしの方では虫下しではなくて
          検便でした 当時はマッチ箱に入れて
          みんな懐かしくいい思い出です
          キジ 白い花 いいですね
          今 わたくしの庭では羽衣ジャスミンが
          強い香りを放ち 満開です 欄の花々も
          咲いています 確かに最近 花の開花が
          早くなっているようです 温暖化のため
          でしょうか
          それにしても豊かな自然 羨ましいです
          アルバイト プラターズ いい記事でした
          懐かしく 心に沁みました 
          野菜 畑 川柳相変わらず楽しませて
          戴きました
          「グレンミラー物語」当時 見ました
          ジェイムス゛スチューアートだったのですね
          もう一度見てみたいと日頃から思っているのですが
          普段 外出しなくなった現在 テレビ放映を見る
          ぐらいしか方法はありません つい最近
          タイロン パワーとキム ノバックの「愛情物語」を
          懐かしく思いながら見ました
          有難う御座いました