遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(390) 再び 故郷に帰れず(8) 他 頬の痛みと心の痛み(アカデミー賞とウィル スミス)

2022-04-03 13:02:31 | つぶやき
          頬の痛みと心の痛み(アカデミー賞とウイル スミス) 
                     (2022.4.1日作)

 米国 映画アカデミー賞 その会場 舞台上で 
 前代未聞の事が起こった
 ウイル スミスの暴力行為
 殴られた本人も あまりに突然の出来事に 一瞬
 戸惑ったに違いない 暴力行為 確かに
 許される行為ではない ウクライナへのロシア侵攻
 これも紛れもない暴力行為だ しかし 米アカデミー賞
 その会場に於ける 一人の俳優の行為 これを
 ロシアのウクライナ侵攻行為と同一の暴力行為と見てもよいのか ?
 様々な報道で見る限り 暴力行為に及んだ俳優を非難する声が
 圧倒的に多いようだ その行為に走った本人自身も 深い反省の気持ちを
 表明している だが 待てよ それで良い それで
 暴力行為に走った当人には重い罰を科して一件落着 それで良いのか ?
 事の発端は 司会者 殴られたボードビリアンだかコメディアンだか
 その男が発した言葉にある 病気で苦しむ人への「からかい」
 正常な神経を持つ人間なら 誰でも我慢の出来ない事だろう 
 ウイル スミス 本人に取ってはその「からかい」の対象者が自分の愛する
 妻でもある 怒りの湧き上がるのは当然 正常な神経を持つ人間なら   
 当たり前の事だ しかも年に一度の大舞台 その壇上で 病に苦しむ妻が
 公衆の面前 世界各地に放映されるに違いない大舞台の上で恰好の笑い者に
 される 絶対に許せる事ではないーーウイル スミスに取ってはその行為は
 妻を守る為の正当な行為 正常な人間として批難されるべき行為ではない
 人間としての正しい行動なのだ 本当に批難されなければならないのは
 どちらか ? 批難されるべき人間はどちらなのか ? ウイル スミス 彼の
 立場に立てばそういう事だろう そう思うだろう しかし 世の中 世論は 
 一斉にスミスを批難して 司会者の暴言には頬かむり 無きが如しだ    
 暴力 確かにその行為は 批難されるべき行為 打たれた頬は痛むだろう 
 だが その痛みは眼にする事の出来る痛み 推し量る事の出来る痛み その  
 痛みが頬に傷跡を残す事は今度の場合 多分 ないだろう それに反して
 スミスの妻 笑いものにされた人の痛みは心に突き刺さり 深い傷として 
 病の癒えない限り 続いてゆくだろう 打たれた頬の痛み 病に苦しむ心を
 笑いものにされ 搔き廻された痛み どちらがより大きく深いものか ?
 考えなくても分かる事だ 「ブラック ライブズ マター」黒人の命も大切
 人の「心」もまた 人が生きる上に於いては何よりも大切なものの一つだ 
 その心を蔑(ないがし)ろにする 許される行為ではない
 今度の出来事 その因を作った司会者 その者の罪の方が殴った者の罪より
 はるかに大きなものだ   
 打たれた頬の痛み より 傷付けられた心の痛み より一層 大きなものだ




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          再び 故郷に帰れず(8)




 まるで竹藪の中から生まれ出るかのように白い朝靄が流れ出ていて、辺り一面を覆っていた。
 竹薮の傍にある井戸が朝靄の中で溶けるような輪郭を見せていた。数多くの雀たちがしきりに、その傍で鳴き交わしていた。
 わたしはその井戸の傍へ行くとすぐに上半身裸になり、それから身に着けていた物を総て脱ぎ去り、素裸になると井戸の釣る瓶に手を掛けてそれを下ろしていった。
 重い石を片側に括り付けた釣る瓶は深い底まで押し下げるのには力を要したが、引き上げる時は楽だった。引き上げた釣る瓶をいったん、井戸の縁に降ろして両手で抱え込むと眼をつぶり、息を止めて気合を込めると釣る瓶の中の水を一気に頭から被った。
 五月の朝の事とはいえ、深い底にある井戸の水は冷たかった。思わず体が震えた。
 わたしはハッと大きく息を吐いて再び気合を込めると、また、釣る瓶を下ろす作業に取り掛かった。
 都合、五回、そうして冷たい水を頭から被り、全身を清めた。
 冷たい水を浴びた後の爽快感はなんとも言えない気分の良さだった。乾いたタオルで体を拭きながら、自分が再生したような感覚を覚えていた。鼻歌でも歌いたいような気分だった。朝の心地良い空気と共に、今ならこの世の総てを受け入れられるような気がした。
 そんな心地良い感覚に大きな幸福感を抱きながらわたしは、座敷へ戻ろうとして足を踏み出した時、思わずその足を止めていた。何処からか金槌で釘を打つような音が聞こえて来た。
 なんだろう ? と思った。こんな朝、早くから・・・・。
 不思議な思いを抱きながら裏庭に廻ってみるとそこでは兄貴が、芝生の上に茣蓙を広げてその上で何かを作っていた。傍には何枚もの真新しい大きな板が並べられてあった。
「いったい、こんな朝早くから何を作ってるんだい ?」
 わたしは兄貴の丸めた背中に向かって言った。
「棺桶を作ってんだよ」
 兄貴はわたしの問い掛けを不思議がる事もなく、後ろを向いたままで言った。
「棺桶 ?」
 わたしは訳が分からずに聞き返した。
「うん、棺桶だ」
 兄貴はなんの戸惑いもなく言った。
「そんな物を作ってどうするんだい ?」
 わたしは意味が理解出来ずに聞いた。
「親父とお袋が死んだんだ」
 兄貴はなんの衒(てら)いもなく言った。
「親父とお袋が死んだ ?」
 わたしは思わず、驚いて聞いた。
「ああ」
 兄貴は感情も見せない声で返事を返して来た。
「何時 ?」
 わたしは息を呑んで言った。
「ゆんべだ」
 と、兄貴は言った。
「ゆうべ ?」
 信じ兼ねる思いで問い返した。
「ああ、ゆんべ」
 兄貴は相変わらず、なんの感情もない声で言って、しきりに金槌の音を響かせていた。
 ーーいったい、どういう事なんだ !
 わたしには訳が分からなかった。
「昨日、夕方見た時には、二人ともあんなに元気だったじゃないか。いったい、親父とお袋はなんで死んだんだ ?」
 わたしは思わず兄貴を責めるように言っていた。
「あんにもかんにもねえよ、死んだものは死んだんだ。どうしようもねえべ」
 兄貴は言った。
「どうしょうもねえって、医者には診せなかったのか ?」
「医者に診せるもあにも、死んじまったもんは仕方がねえべよ」
 兄貴は平然とした様子で言った。
「いったい・・・・。親父とお袋は何処に居るんだ ?」
 わたしは思わず兄貴に食ってかかるように言っていた。
「奥の座敷に居る。行ってみろ」
 兄貴は言った。
「行ってみろも何もないだろう。すぐに医者に来て貰って、よく見て貰わなければ駄目だよ」
 わたしは言った。
「死んじまったもんは、死んじまったんだよ」
 兄貴は達観したように言って、わたしの言葉などには取り合わなかった。
「何をバカな事を言ってるんだよう。すぐに医者に来て貰うから電話番号を教えてくれ」
「電話番号 ? わがんねえ」
 兄貴は落ち着き払って言った。
「分からない ? じゃあ、自転車を貸してくれよ。すぐに医者に行って来るら」
「自転車なら、物置にある」
 兄貴は相変わらず動じる様子もなく、棺桶の釘を打ち続けながら言った。
 わたしは駆け足で表へ戻ると庭の隅にある物置に向かった。
 自転車を引っ張り出してそのまま、親父とお袋の容態を確かめもせずに自転車に飛び乗った。

 太陽は既に昇っていた。
 朝の濃い靄はその中で溶けていた。
 わたしは懸命に自転車を漕いだ。 
 朝の清々しい空気の中、草に覆われた土の道を自転車で通るのは何年振りの事なのかは分からなかったが、子供の頃の自分に戻ったようで、心楽しい走行だった。しかし、気分は極度に沈んでいた。わたしの頭の中では常に親父とお袋の死が意識されていた。わたしは、「親父とお袋が死んだんだ。親父とお袋が死んだんだ」と呟きながら、ただ、溢れる悲しみを懸命に堪えながら自転車を漕いでいた。





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          桂蓮様

          有難う御座います
           新作 拝見しました
          冒頭の写真 コメントの中にある植物でしょうか
          それにしても 窓から窺える庭 広々とした感じで
          羨ましいです 気持ちの良い写真です
           ストレス 人間に取っては無くてはならないものの
          一つですね ただ それが過剰になる これは困った事です
          適度なストレスがあってこそ 物みな総ては成長出来るのでしょうね
          面白く拝見致しました
           バレーの評価 そう御自分を卑下なさらないで下さい
          わたくしも悪口を言う必要がある時は はっきり言います
          ですが その欠点が誰かを傷付けるような欠点 どうしても
          見過ごせないような欠点でない以上 あえて取り上げ
          暴く必要はないと思っています
          わたくしがこれまで書いて来た文章の中にも悪口を
          言っている文章はあります
          ですが無駄な悪口を言うより その人の良い面を見て
          評価する その方が相手の方に取っても有意義だろうし       
          自分としても嫌な気分に陥らなくて済みます 
          悪口を言う 批難する 決して気持ちの良いものでは
          ありません 他人を貶めて快感に浸っている そんな
          性格の人間なら別ですが そんな人間にはなりたくない
          と心がけています それでなくても人は知らず知らず
          他人を傷付けている事が多々あるものです 余計な
          他人への批難 なるべく避けるようにしたいと
          思っています
           バレーの先生との遣り取り 微笑ましく読ませて
          貰いました なんのかんのと言いながら 楽しそうな
          御様子が文面から伝わって来ます お幸せそうな
          お姿が想像出来ます 気取りのない自然な姿が浮んで
          来る文章だと思いながら 毎回 楽しく読ませて戴いて
          おります
           故郷は自分の心の中にそっと秘め しまって置いて 
          その思い出だけを育んでゆくのが一番ではないでしょうか
          常に変わらないものは心の中の故郷 現実の故郷は
          良くも悪くも日に日に変わってゆく そんなものではな
          でしょうか
          毎回楽しい御文章とコメント 有難う御座います
                             


          takeziisan様

           有難う御座います
          ノラボウ菜 採れ過ぎ困惑 羨ましい限りです
          自家栽培でこその恵み 贅沢 何よりも新鮮さが魅力 
          NHK BS3チャンネルで毎週火曜日七時半から
          「晴れ ときどきファーム」という番組を放送していて
          ニュース以外は特殊な番組を除いてあまりテレビは
          見ないのですが この番組は数少ない楽しみにしている
          番組です なんのことはない 三人の出演者が古民家を
          借りて野菜を作ったり そこで採れたものを材料に
          いろいろな料理などを作ったりする なんの変哲もない
          単純な番組ですが わたくしに取ってはこれが限りなく
          楽しい番組の一つになっています 多分 農作業をして
          自ら収穫 料理する その面白さに惹かれるのだと思います
          その点で 自家栽培のお写真など 羨ましく拝見しております
          今回も様々な珍しい花 興味を引かれました
          白いスミレ ナツトウダイ カタクリいろいろ特に
          白いカタクリ 眼を引かれました
           自動車運転 わたくしは免許がなくて もっぱら
          人の車に乗せて貰うだけですので この記事 面白く
          読ませて戴きまし
           フランシーヌの場合 当時 流行りましたね
          こんな理由があったとは知りませんでした
           水泳 自己流で覚えたわたくしなどに取っては
          何もこんなにやかましく言わなくても 泳げればそれで
          いいじゃないか という思いの方が強いです でも 教室
          何かと理由付けが欲しいのでしょうね
           今回も様々な記事 楽しく拝見させて戴きました
          何時も楽しみにしております が くれぐれも
          御無理のないように
           何時も有難う御座います