遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(535)小説 <青い館>の女(24) 他 トルストイの言葉ほか

2025-02-16 11:25:54 | 小説
             トルストイの言葉ほか(2025.1.18日作)


 
 知識は手段であって目的ではない
 トルストイは言っている
 得た知識を何に使うか
 知識を有効に使う事によって知識が生きる
 実行を伴わない知識は死んだ知識
 物知り顔にペラペラ喋り 知識を誇っても
 その知識を使う事を知らない人間は
 知識のない人間


 人は他者から自分に取って良い事をされた時には
 それが当然の事の様に受け止めるが
 悪い事をされた時には
 大袈裟にその悪事を吹聴 批難する


 文章を書く事は
 それを読む人の心の中に絵を描く事
 文筆家は画家
 文字でそれを読む人の心の中に絵を描いている
 文字を読む
 人の心の中に鮮明に絵が浮かび上がる時
 名文だと言える
 長たらしく 派手に飾り立てた言葉など必要ない
 名文はたった一言 たった一行の中に
 豊かな絵を浮かび上がらせるだけの力を持っている




            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




             <青い館>の女(24) 



 
 
 それにしても、教授がこんな風に妻と親し気にしているのはどういう事だろう ?
 何か魂胆でもあるのだろうか ?
 それとも単なる顔馴染みというだけの事なのか ?
 もし、教授が今でも昔の面影を残していて、とても還暦を過ぎたとは思えない妻の美貌に魅せられているのだとすれば、愚かな事だ。
 妻は単なる人形、気位の高い人形でしかない。
 木偶の感情しか持ち合わせていない石にしか過ぎないのだ。
 それとも教授は牧本家の財力に眼を付けているのだろうか ?
 財力にかけてはこの会場にはもっと大物が一杯居るだろうに。
 あるいは二人は既に深い関係にあるのか ?
 だが、それらの事も今のわたしに取っては、どうでもいい事であった。
 もし、教授が妻との関係を深めたいのなら深めればいい。
 今のわたしに取ってはそれもまた、遠い世界のわたしには関係の無い事の様に思えて来るのだ。
 折よく、エッセイストだか作家だか、これもまたテレビによく顔を出している相川早紀子がのっぺりした顔立ちのテレビタレントらしき男と連れ立って来て、教授とわたしの妻を捕まえた。
 わたしはその隙に彼等の傍を離れた。
 バーティーが終わりに近付く頃、妻とわたしは飯倉夫妻の傍へ行き、挨拶をしてから会場を後にした。
 酒が入る事を考慮して車を置いて来たわたし達はホテルの前でタクシーを拾った。
 妻は座席に身体を埋めると早速、文句を言って来た。
「いったい、何やってるのよ。会場の隅にポッネンとしていて見っともないって言ったら、ありやしないわ。どうしてもっと積極的に自分を売り込まなかったの。飯倉さんのパーティーなんて、財界のお偉方と御近付きになるのにこんないい機会はないじゃないの。それをまるで世をすねたみたいに会場の隅で一人しょんぼりしているんだから、話しにも何もならないわ」
 わたしは疲れていた。
 妻が言う様に誰と話しをしなかった訳ではなかった。わたしはわたしなりに数多くの人達と挨拶を交わし、勧められるままに水割りウイスキーのグラスを空けていたのだ。
 たいして酒に強くはないわたしはそんな事もあって、体調の不良と共にタクシーの座席に身体を埋めると同時に軽い酔いと、何時もより速い心臓の鼓動を意識して不安に捉われた。
 その不安を押し殺してわたしは言った。
「誰とも話しをしなかった訳じゃないさ。それなりに必要と思える人にはちゃんと挨拶して置いたさ」 
 妻はわたしのそんな言い訳めいた言葉にも耳を貸さなかった。
「とにかく、孝臣はまだ若いんだし、幾らマキモトの社長だって言ったって、あなたがちゃんと手を貸して遣らなければ駄目なんですよ」
「奴の事は心配しなくて大丈夫さ。俺より余程、しっかりした仕事をしている」
 普段、彼の仕事ぶりを眼にしているわたしは本音を言った。 
「何時もこうなんだから」
 妻は勿論、そんなわたしの言い訳めいた言葉には耳を貸さなかった。
 如何にも不満気な口調で呟くと座席の後ろに頭を持たせ掛けて眼を瞑った。
 わたしはそんな妻を見て、お前が付いていれば大丈夫さ、と胸の中で呟いたが、無論、言葉には出さなかった。
 タクシーは渋滞に巻き込まれていた。
「何かあったのかしら ?」 
 妻は不安気に外を見て言った。
「この通りは何時も混むんですよ」
 タクシーの運転手もうんざりした口調で言った。
 わたしは気分の優れないままに眼を閉じていた。
 外の渋滞に眼を向ける気にもなれなかった。
 そんなわたしの眼を閉じた世界には改めて、パーティー会場の華やかな雰囲気とその中に居た人々の煌びやかで艶やかな姿が浮んで来た。 
 にこやかな笑顔を振り撒きながら、得意満面でいた誰彼の姿が思い出された。
 わたしはそんな人達の姿を思い浮かべながら、優れない気分と共に思わず心の中で、みんなスノッブだ ! 俗物だ ! と呟いていた。
 その夜、わたしは自宅へ帰ると酔いに焙り出された様に意識を覆って来る倦怠感と疲労感で、風呂に入る事も面倒臭くなってすぐに寝室に向かった。
 妻は機嫌が良かった。
 我が家の家事一切を取り仕切って二十年近くなる、早くに夫を亡くして来年一月三日で六十八歳になるハルさんを捕まえ、パーティーの華やかだった様子を得意気に聞かせていた。
 翌日、わたしはそれでも二日酔いもなく会社へ出る事が出来た。
 何時もの通り、昨夜の内に送られて来た営業報告書の数字を仔細に読み解く作業を続けた。




               ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




                albi-france様

       
                 有難う御座います
                ブログ記事拝見しますと とても日常の生活を楽しんでいる御様子
                羨ましい限りです 西にお住まいなのでしょうか
                関東に住み 西はさっぱり不案内ですので その日常の御様子が
                何か新鮮な気がします
                この狭い日本に居ながら 
                 元々 地方の方々の生活を拝見するのが好きで
                滅多に見ないテレビでもそのような番組にはよく眼を通しています
                また地方の御様子をお伝え下さい
                 小梅ちゃん 何故か 相変わらず笑ってしまいます
                良いですね 純真な眼差しが
                 つまらない文章にお眼をお通し戴き
                有難う御座います







































コメントを投稿