2006.7.31.
日帰りで軽井沢行。まず上野から快速アーバンで高崎へ向うが、途中で事故が発生して結局熊谷から代替で新幹線に乗り継いで高崎に着く。これは、ついているのかいないのか…。
高崎から信越線で横川へ。途中カメラを持った鉄道マニアがたくさん乗ってきたので何事かと思ったら、横川に旧式の電気機関車が止まっていた。彼らは一目散に機関車の方へ、こちらは名物の荻野屋の峠の釜飯の方へ。
軽井沢への旧鉄道が廃止されたので横川からはバスで移動。30分ほどで軽井沢に着く。駅前の貸し自転車屋でママチャリを借りてサイクリング。さすがに避暑地だけあって涼しいし、急な上り坂もないので爽快な気分で2~3時間を過ごす。
横川への帰りのバスは渋滞を避けて別ルートだったが、こちらの方が風情があっていい。またまた、ついているのかいないのか。
さて、横川駅で電車を待つ間、霧積温泉の案内が目に留まった。霧積といえば“キスミー”、つまり例の「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」で始まる西条八十の詩「帽子」をモチーフにした、森村誠一原作の『人間の証明』(77)の重要な舞台として記憶に残っていた。
母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?
ええ、夏碓氷から霧積へ行くみちで、
谿谷へ落としたあの麦稈帽子ですよ
母さん、あれは好きな帽子でしたよ。
僕はあのとき、ずいぶんくやしかつた、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
母さん、あのとき、向うから若い薬売りが来ましたつけね。
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとして、ずいぶん骨折つてくれましたつけね。
だけどたうたうだめだつた。
なにしろ深い谿で、それに草が背丈ぐらゐ伸びていたんですもの。
母さん、ほんとにあの帽子どうなつたでせう?
そのとき傍で咲いてゐた車百合の花は、
もうとうに枯れちやつたでせうね、
そして、秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。
母さん、そしてきつと今頃は、
今夜あたりは、あの谿間に、静かに雪がつもつてゐるでせう。
昔、つやつや光つた、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いたY.S という頭文字を埋めるやうに、
静かに、寂しく
で、妻が映画を見直してみたいというので、帰宅後に早速レンタル。公開時(1977.10.12.日比谷映画)同様、今見直してもテーマが絞り切れておらず、散漫な印象を抱かされる映画という印象は変わらなかったが、この後乱発された2時間サスペンスドラマが、良くも悪くもこの映画から大きく影響を受けていると感じた。まあ、この映画自体は『砂の器』(74)の影響大なのだが(この映画は母子もので、『砂の器』は父子ものという違いこそあれ)。
そして、公開当時、メディアミックスの先がけとして盛んに流されたテレビCMによる刷り込みがいかに大きかったかに改めて気付かされた。
ジョー山中が歌うテーマ曲、そして棟居刑事役の松田優作がぶっきらぼうに朗読する「帽子」。映画自体の散漫さを思えば、CMの方が原作のポイントを的確に表現していたと思う。
とりわけ、大野雄二作曲の印象的なメロディーに乗ってジョー山中が歌い上げたテーマ曲は名曲で、その英訳詩はジョー山中とも角川春樹ともいわれているが、詩曲ともに見事な出来だと思う。
Mama,Do you remember the old straw hat you gave to me
I lost the hat long ago,flew to the foggy canyon
Mama,I wonder what happened to that old straw hat
Falling down the mountain side,out of my reach like your heart
Suddenly the wind came up
Stealing my hat from me
Swirling whirling gusts of wind
Blowing it higher away
Mama,that old straw hat was the only one I really loved
But we lost it,no one could bring it back like the life you gave me
https://www.youtube.com/watch?v=iqCJTrGeRpc
「悪魔が来りて笛を吹く」と角川映画
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/fd4ce566775e74e9d01cead0bff8b4d0