田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『洲崎パラダイス赤信号』 『不滅の熱球』

2015-01-28 18:25:06 | 映画いろいろ

『洲崎パラダイス赤信号』『不滅の熱球』

 

 ところで、映画で描かれた洲崎といえば、洲崎遊廓の入口の飲み屋を中心に、そこに出入りする男女の姿を描いた芝木好子原作、川島雄三監督の名作『洲崎パラダイス赤信号』(56)がある。

 作られたのは1956年だからなんと60年前、自分が初めてテレビで見たのは高校生の頃だからこれも40年前。けれども今見ても心に響くものがある。それは男と女の腐れ縁や人間の営みの本質は昔も今もあまり大差はないということなのだろう。決して器用でも幸せでもない登場人物たちのどこかあっけらかんとした生き方が強く印象に残る。

 そして、沢村栄治といえば、池部良が沢村を演じた鈴木英夫監督の『不滅の熱球』(55)がある。沢村が英霊となって後楽園球場に戻ってくるラストシーンが切ない映画だ。『不滅の熱球』の脚本は、黒澤明の映画で有名な菊島隆三が書いているのだが、彼はこの映画の他にも、後楽園球場での巨人対南海戦が映る『野良犬』(49)志村喬がプロ野球の監督を演じた『男ありて』(55)の脚本を書き、『鉄腕投手 稲尾物語』(59)の原作、構成も担当している。多分無類の野球好き。日本の野球映画を語る時には欠かせない存在だ。

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『洲崎球場のポール際 プロ野球の「聖地」に輝いた一瞬の光』(森田創)

2015-01-28 17:53:03 | ブックレビュー

『洲崎球場のポール際 プロ野球の「聖地」に輝いた一瞬の光』(森田創)を読了。



 プロ野球草創期、遊郭で賑わう東京の下町、洲崎(すさき)にプロ野球専用の球場があった。大東京の本拠地として1936年に完成した洲崎球場である。ここは、巨人軍のエース沢村栄治が、優勝をかけた大阪タイガース戦で3連投し、自身2度目のノーヒットノーランを達成。ほかにも、タイガースの4番、景浦将の東京湾に打ち込んだホームランなど、数々の伝説が生まれた地。

 ところが、海辺の埋め立て地に造られたため水はけが悪く、満潮時には海水がグラウンドに押し寄せるなどの不備もあり、1年後にできた後楽園球場にプロ野球の聖地の座を奪われた。何しろ戦前、戦中のことなので、いつ解体されたのかも定かではない。本書は、そんな“幻の球場”について丹念に調査、発掘し、見事によみがえらせた。数々の証言や資料を基に、当時の世相や土地の歴史を明らかにし、選手の動静や試合経過を生き生きと伝え、時代の息吹きを感じさせたところが素晴らしい。

 ところで、著者の森田氏には、渋谷ヒカリエの「シアターオーブ」について開場前に取材させていただいた。オープニング公演は、本場ブロードウェーから招聘したオリジナルキャストによる『ウエスト・サイド・ストーリー』。森田氏は、「これは、野球でいえばメジャーリーグのチームがシーズンの真っただ中に日本に来るようなもの」と表現した。それを聞いて、きっとこの人も野球好きなのだろうとは思ったが、まさかこんなにすごい野球の本を書いてしまうとは…。脱帽である。

http://area.enjoytokyo.jp/shibuya/hikarie/vol3.html

続く

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